雪の日には、駐車場に停まっているクルマのワイパーが立てられている光景を目にすることがあります。クルマの取扱説明書でも、寒冷地で屋外に駐車する際にはワイパーを立てるよう推奨されていますが、メリットもデメリットもあるようです。

立てないとワイパーが動かなくなる?

 雪の日などに、駐車場に停まっているクルマのワイパーが立てられている光景を目にすることがあります。


ワイパーが立てられた状態で停められているクルマ(画像:Oleg Chernyavsky/123RF)。

 これは主には、ワイパーが凍り付いてフロントガラスにくっついてしまうのを防止するため。たとえばスバル車の取扱説明書には、「寒冷地で屋外に駐車するときにはワイパーを立てておいてください」(「レガシィ」「レヴォーグ」など)と書かれています。

 カー用品店「オートバックス」を展開するオートバックスセブンによると、フロントガラスに凍り付いた状態で無理にワイパーを作動させると、ワイパーゴムが切れてしまったり、ワイパーを動かすモーターが故障する原因になったりするとのこと。フロントガラスからワイパーにかけて積もった雪の重みで、ワイパーが歪んでしまうこともあるそうです。

 ただ、たとえば新潟県の場合、新潟県ハイヤー・タクシー協会によると雪の多い山間部では、どちらかというとワイパーを立てる“習慣”があるといいますが、平野部においては状況に応じてだろうとのこと。平野部にあたる上越市の市街地に住んでいた30代女性は、前夜に気温が大きく下がりそうなとき、ひと晩で何十センチも降り積もりそうな場合に、ワイパーを立てていたといいます。

 また、フロントガラスの角度によっては、ワイパーを立てていると、屋根などから雪の塊が落ちてきた際に、重みで折れてしまうこともあるといいます。前出の上越市に住んでいた女性も、そのような被害に遭ったクルマを何台も見たことがあるそうです。

そもそもワイパーが立てられないクルマは?

 ドイツに本社を置き、日本でもワイパーを販売するボッシュによると、欧州の北部でもワイパーを立てる・立てないは地域によって異なるほか、そもそも欧州ではワイパーの一部がボンネットの内側に入りこみ、構造的にワイパーが立てられない、という車種も少なくないそうです。

 たとえばルノー「カングー」も、ワイパーが立てられない車種のひとつ。ルノー・ジャポンによると、ほかの現行ルノー車では、ワイパー作動中に自動格納機能(スタート位置まで戻る機能)を解除し、ワイパーを途中で止めた状態にすれば立てることができますが、この機能も最近になって実装されてきたとのこと。

「フランスなどでは、日本人ほどこまめにワイパーを立てないでしょう。雪が積もっているときでも、ワイパーを少し浮かせてスクレイパーで雪を落とすだけ、という人もいます」(ルノー・ジャポン)

 これについてボッシュは、日本と欧州における雪質の違いを指摘します。

「水分が多い日本の雪は重く、凍りやすいのですが、欧州の雪はサラサラしていて凍りにくいのです。ひと晩で何十センチも降り積もるような場合や、気温が下がりワイパーが凍り付く可能性のある場合など、天候や予報に応じて立てるようにするとよいでしょう」(ボッシュ)

 ちなみに、寒冷地では寒冷地用(雪用)ワイパーに交換するケースもあります。夏用よりもワイパーゴムが長く、固くなっていて、雪をかきやすくなっているというもの。アームもゴムカバーで覆われており、関節部分に雪が入りこむことによる凍結が起きにくくなっています。ボッシュも日本の雪質にあわせた寒冷地用ワイパーをラインアップしていますが、欧州では、このようなワイパーを販売していないそうです。

【写真】そのままでは立てられない構造のワイパー


ワイパーの一部がボンネットに隠れる「コンシールドワイパー」の例。車内から操作することでワイパーを立てられるようになる車種も(乗りものニュース編集部撮影)。