天皇の「代替わり」の儀式の準備は着々と進められている。今回の代替わりの儀式や行事について、その内容や意味を解説します(写真:共同通信社)

平成の終わりまで、まもなく4カ月。

新天皇の即位を祝うため、政府は5月1日を祝日とする。すると祝日法によって、その前後の4月30日と5月2日も休日となるため、ゴールデンウィークは10連休になる。こうしてカウントダウンのムードが高まるなか、皇位継承、つまり天皇の「代替わり」についても準備は進んでいる。

そこで今回は改元前後に予定されている儀式や行事のスケジュールや、その内容、意味について解説したい。

「1989年の改元」との大きなちがい

まず今回の改元と、それに伴う皇位継承は崩御によるものではない。1989年に行われた昭和から平成への改元は崩御を前提にしていたため、儀式や行事のスケジュールにも目安があった。

実際、昭和天皇の崩御から1年間、今上陛下は「諒闇(りょうあん)」として喪に服す期間に入られた 。このため喪の明ける翌年までに行われたのは、葬儀の儀式・行事に限られている。

たとえば1989年2月24日に東京の新宿御苑で行われた「大喪の礼」の当日は、法律によって休日となった 。小学2年生だった筆者は、小雨の降るなかでも参列する当時のジョージ・H・W・ブッシュ米国大統領をテレビで見た覚えがある。

しかし今回は特例法に基づく代替わりであり、葬儀は行われない。このため宮内庁を中心に作業は手探りで続いており、未定の儀式も多い。以下では、現在までにスケジュールの決まっている儀式について確かめておきたい 。

まず代替わりとは直接の関係は薄いものの、2019年2月24日に天皇陛下御在位30年記念式典が行われる。


その後、現行憲法下ではじめてとなる「退位礼正殿の儀」(退位の礼)が2019年4月30日に行われる。この儀式は今上陛下にとって、最後の公式行事になるとみられている。けれども決まっているのは国事行為とする方針などの概要だけで、詳細は明らかにされていない 。

その翌日、2019年5月1日に即位とともに「剣璽(けんじ)等承継の儀」が挙行される。これは皇位継承の証しとして、剣璽をはじめとした皇室に由緒のある品々を引き継ぐ儀式だ 。

剣璽とは歴代天皇に伝わる「三種の神器」のうち、「剣」と「璽(じ)」=勾玉(まがたま)を指している。ちなみに剣璽のほかに三種の神器は「鏡」であり、その本体は伊勢神宮に保存され、皇居・宮中三殿には分身が置かれている。また剣璽は相続税法では非課税の対象となっているが、今回の代替わりは崩御ではなく相続を伴わない。このため昨年6月に成立した特例法において、贈与税の非課税対象と定めている 。

この「剣璽等承継の儀」で「剣璽」のほかに受け継がれるのは、「御璽」(ぎょじ)と「国璽」(こくじ)。前者は天皇の印であり、「御名御璽」(ぎょめいぎょじ)として法律や条約の末尾に陛下直筆のご署名(御名)とともに押されている。後者は国の印であり、「勲記(勲章の証書)」の末尾に押されている 。

報道によれば、 この儀式に参列する皇族は成年男子に限られる方向だと言われている。 その理由は明治期に定められ、戦後に廃止された 「登極令」(とうきょくれい)に基づいており、 皇位継承の可能性のある皇族だけが参列するのは、 この儀式の「慣例」だからだという(読売新聞 2018年11月3日朝刊)。

改元後も多数の行事がある

そして、この承継の儀式と同じ日(2019年5月1日)に国民の代表である三権(行政、立法、司法)の長、つまり内閣総理大臣や衆参両議院議長、最高裁判所長官をはじめとした国民の代表と、ご即位後初めて公式に会う「即位後朝見(ちょうけん)の儀」が行われる 。

現在、日付とともに実施の決まっている儀式はこのほかに、新天皇の即位を国の内外に示す「即位礼正殿(せいでん)の儀」(即位の礼)があり、2019年10月22日に行われる。代替わりに伴う儀式について協議する「大礼委員会」の初会合(2018年10月12日)では、この「即位の礼」に関して参加者の人数を減らすなど、方針が示されている 。

前回の「即位の礼」は「松の間」で行われた。ここは新年祝賀の儀をはじめ、歌会始の儀や勲章親授式などテレビや新聞のニュースで映る機会が多く、皇居・宮殿で最も格式の高い場所とされるものの、前回は参列者約2200人すべてを収容できず中庭に仮設席を設けた。このため宮内庁は今回、秋の台風・長雨シーズンに行われる点を考慮し、屋内だけでの開催を検討している。

「即位の礼」と同日には、「祝賀御列(おんれつ)の儀」、すなわち新天皇をお披露目するパレードの実施も決まっている。前回使用したロールスロイス社製のオープンカーは不具合をきっかけに廃車となり、現在は「参考用」として保存されている。そこで政府はパレード用に国内自動車メーカーに新たに発注する。

さらに「即位の礼」の翌日には外国からの参列者に対して、日本の伝統文化を披露し、謝意を表するために内閣総理大臣夫妻主催の晩餐会が行われる。現在のままであれば、安倍晋三首相と昭恵夫人の2人でホストを務める予定だ。

代替わりまで約4カ月となった現時点で宮内庁が公表しているだけでも40を超える儀式が予定されている。なかでも重要なものとして、「饗宴の儀」と「立皇嗣(りっこうし)の礼」の2つがあるものの、後者のスケジュールは決まっていない。

前者は文字どおり即位を祝う「饗宴」であり、前回は1990年11月12日から4日間に合計7回開かれ、外国の元首など合計約3000人が参加したが、今回は負担軽減のため4回に減らされる。後者は秋篠宮様が皇位継承順位1位の「皇嗣(こうし)」になられたことを広く国民に明らかにする儀式で、2020年4月の実施を見込んでいる 。

異議集まる「大嘗祭」

代替わりに伴う行事・儀式は、これだけではない。宮内庁のウェブサイトによれば前回、今上陛下の即位にあたっては、今回触れたほかにも「主な儀式・行事」だけで20以上が挙げられている 。

なかでも「大嘗祭(だいじょうさい)」は、新しく収穫された米などを天照大神とすべての神々に供えたうえで天皇みずからも食べ、国と国民の安寧や五穀豊穣などを祈る儀式だ。しかし政教分離の観点から、前回は各地で裁判が起こされている 。また、先ごろ、秋篠宮さまからも「宗教色が強いものを国費で賄うことが適当かどうか」と指摘されている。

天皇の代替わりは、さまざまな儀式によって、これまでの日本の歴史に思いをはせるとともに日本国憲法をはじめとした現代の法規範との関係について議論の交わされる大きな機会になる。

平成の終わりへと向かうカウントダウンは、こうしていくつもの論点を浮き彫りにしながら着々と、そして淡々と進んでいく。