ペッパーフードサービスが運営するいきなり!ステーキ。2018年は店舗網が急拡大した(撮影:梅谷秀司)

前菜抜きで、ステーキを立ち食いするスタイルが受けてきた「いきなり!ステーキ」。だが、その成長に“急ブレーキ”がかかっている。

12月中旬、いきなり!ステーキを運営するペッパーフードサービスは11月の月次動向を発表した。いきなり!ステーキの既存店売上高は前年同月比13.1%減と大幅なマイナスに。特に客数の落ち込みが大きく、既存店客数は同12.1%減で着地。2018年の春先までは好調が続いていたいきなり!ステーキだが、4月以降は客離れが顕著になっている。

ロードサイドの店舗が軒並み苦戦

2018年はなぜここまで苦戦が続くのか。最大の要因が郊外のロードサイド店の不振だ。2013年12月の初出店以来、いきなり!ステーキは急速に店舗網を拡大している。2016年末に115店だった店舗数は、2017年末に188店、2018年末には389店へと増加している。

中でも力を入れているのが郊外での展開だ。2017年5月には群馬県高崎市で初のロードサイド店を出店。2018年11月には47都道府県への出店を達成した。郊外は都心に比べ出店余地が多いうえに、家賃も安い。こうしたメリットを求めて郊外への進出を続けてきたが、そこで発生したのが自社競合という問題だ。

通常、いきなり!ステーキがロードサイドに出店した際には開店時に近隣にビラをまくほか、ローカル局でテレビCMを流すこともあり、その地域での認知度を一気に高める。こうした施策で会社側は、開店から3カ月程度は好調な実績を残し、売り上げが落ち着いた後、徐々に回復すると見込んでいた。

だが、2017年以降にロードサイドへの出店を加速したことから、1つの商圏で複数出店となるケースが続出。客を奪い合う事態が発生し、個店ごとの集客力が低下していった。また、都心では受け入れられた2000円という客単価も、所得水準が下回る地方のロードサイドでは、なかなか受け入れられなかった面も大きかったようだ。


客数回復に向けての秘策はあるのか。2018年に入って苦戦が続いているいきなり!ステーキだが、実は8月と10月は一時的に客数が回復した。その理由は割引キャンペーンだ。通常1390円のワイルドステーキ300グラムが1000円になるといった値引きが功を奏した。では今後も、定期的に割引キャンペーンを実施すればいいかというと、そう簡単にはいかない事情がある。

いきなり!ステーキは「高価な料理の代名詞だったステーキをより多くの人に食べてもらう」のがコンセプト。ペッパーフードサービスの一瀬邦夫社長は「原価率が50%以上の飲食店は今までない」と胸を張る。実際、2018年1〜9月の原価率は57.3%だった。

いきなり!ステーキのビジネスモデルは、原価率を高くする反面、立ち食いスタイルで客の回転率を高め、利益を確保する。それゆえに、割引キャンペーンを増やせば原価率が一段と上昇し、利益を圧迫しかねない。

人材の確保・育成が課題

ロードサイドが苦戦している状況を受け、出店スピードを遅くするのも選択肢の1つだが、ペッパーフードサービスは2019年も前年と同規模の210店の出店を目標に掲げる。すでに契約済みの物件もあり、2019年半ばごろまではロードサイドへの出店が続く見通しだ。既存店が苦戦する中、出店が続けば1店当たりの客数がさらに減少するおそれもある。


ペッパーフードサービスの一瀬邦夫社長は、新業態の展開も視野に入れているという(撮影:梅谷秀司)

最大の問題は人材の確保と育成だ。いきなり!ステーキの場合、店長などで1店舗あたり3人の社員を必要とし、15店ごとにスーパーバイザーと呼ばれる社員がQSC(品質・サービス・清潔さ)を管理する。従業員数は急速に増えており、2016年末は351人だったが、2017年には519人へと急増。2018年も増え続けており、毎月50人程度が中途入社している。こうした中で、全店舗でサービスの均質化を保つのは決して容易ではない。

既存店のテコ入れに人材育成と、多くの課題を抱えるいきなり!ステーキ。2019年はまさに正念場となりそうだ。