各ジャンルで「学歴」はどんな影響を及ぼしているのか。今回、それぞれのジャンルで強い大学を徹底調査した。第4回は「人気企業就職[女子大]」について――。

※本稿は、「プレジデント」(2018年10月1日号)の特集「高校・大学 実力激変マップ」の掲載記事を再編集したものです。

■就職率の高さは、女子大の生命線

近年、女子大の人気は低下している。しかし、実利を見れば悪い選択とは言えないようだ。大学通信 情報調査部部長の井沢秀氏は語る。

PIXTA=写真

「2018年の大学全体の実就職率【就職者数÷(卒業者数−大学院進学者数)×100】が88.4%なのに対し、女子大は91.0%。有効求人倍率の影響で学生全体の就職率は上下しますが、女子大の就職率が総合大学よりも高い状態は長年続いています」

女子大離れによって、多くの女子大の進学倍率は2倍程度になり、比較的難易度も低い。それなのに、「就職率では高難易度校に引けをとらない」(井沢氏)と言う。なぜ、女子大は就職率が高いのか。

「女子大の学生もその保護者も安定志向で、進学前から就職率に注目しているケースもあります。また、女性は結婚・出産というライフイベントの影響が大きく、キャリア教育も盛ん。個別面談はもちろん、異性の考え方を理解するために他大学の男子学生とグループディスカッション講座をする大学も増えています」と話すのは、就職みらい研究所の主任研究員・杉村希世子氏だ。井沢氏も「就職率の高さは女子大にとって生命線のひとつ」と同意する。

そんな女子大において人気の就職先は銀行、保険、航空だ。職種では一般職、事務職が人気だ。その理由について、井沢氏、杉村氏ともに「親の意向が大きい」と口を揃える。

「これらの業種は、親の時代には安定しているというイメージが強かったのです。そして、著名な女子大には、これらの人気業種の大企業に学生を送り込む実績とノウハウがあります」(井沢氏)

表は、女子学生に人気の企業に、18年入社した新卒学生の出身大学ランキング(女子大学のみ)だ。日本女子大、昭和女子大、同志社女子大などが、複数の企業でランキング上位に名を連ねる。

「1学年1300人と女子大の中では大規模校の昭和女子大は、1000人規模の女子大の中では、8年連続でトップの就職率です。キャリアデザインの授業はどこの大学にもありますが、描いたキャリアに合う履修科目まで指導するのが昭和女子大の強さです。

また、1980年代からボストンに分校をつくり、年間約300名の学生を留学させるグローバル志向も健在で、米テンプル大日本校を敷地内に誘致し、19年には竣工予定です」(井沢氏)

同じく就職率の高い日本女子大も負けてはいない。

「学生が自己実現を果たすことを目的とした『教養特別講義』を、1966年から続けています。女性リーダーたちが登壇し、様々な経験談を聞くことができます。また、大学主催のガイダンスでは、活躍する大学OGと話せる懇談会を設けています。学生にロールモデルを見せ、モチベーションを高めているのです」(井沢氏)

18年はメガバンクが採用数を絞るなどの波乱もあった。

「学生は金融・一般職に固執せず、保護者もそれを押し付けないこと。総合職やBtoB企業も視野に入れれば、活躍の機会が増えますよ」(杉村氏)

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井沢 秀
大学通信 情報調査部部長
1964年生まれ。入試から就職まで、大学全般の情報分析を担当。新聞社系週刊誌や経済誌などの執筆多数。
 

杉村希世子
就職みらい研究所 主任研究員
1994年リクルート入社後、「とらばーゆ」「就職ジャーナル」の編集などに携わる。2015年10月より現職。
 

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■▼【図表】出身大学ランキング(女子大学のみ)

(ライター 大高 志帆 撮影=奥谷 仁 写真=PIXTA)