by Insomnia Cured Here

オープンアクセスジャーナルのApplied Network Scienceに掲載された最新の研究論文によると、歴史上で最も影響力のある映画は、1939年に公開されたファンタジー・ミュージカル映画「オズの魔法使」だそうです。

Identification of key films and personalities in the history of cinema from a Western perspective | Applied Network Science | Full Text

https://appliednetsci.springeropen.com/articles/10.1007/s41109-018-0105-0

The Wizard of Oz most 'influential' film of all time according to network science

https://phys.org/news/2018-11-wizard-oz-influential-network-science.html

イタリア・トリノ大学でコンピューターサイエンスの博士研究員(ポスドク)として働くリヴィオ・ビオグリオ氏らが、映画やTV番組のオンラインデータベース「IMDb」上に掲載されている4万7000本もの映画を分析し、「歴史上最も影響力のある映画」を導き出しました。ビオグリオ氏は各映画が「のちの映画にどれくらい参照されたか」に基づき、映画の影響度スコアを算出。その結果、影響力のある映画の上位20本はすべて1980年代以前に制作されたものであり、そのほとんどがアメリカで制作された映画であったことが明らかになっています。

研究論文の第一著者であるビオグリオ氏は、「我々は『興行収入』という広告や流通、映画の批評といった『映画そのものの品質を超えた要因』に影響を受ける尺度に代わる、新しい『映画の成功度合いを分析するための方法』を提案しているのです。『成功の尺度として他映画にどれだけ参照されたか』という基準を用いて開発した我々のアルゴリズムを使えば、トップスコアをたたき出した映画に参加した経験などから、映画監督・俳優のキャリアをこれまでよりも正確に評価することができるようになります」と語り、興行収入とは別のアプローチで映画や監督、俳優の評価を行うための方法として「歴史上最も影響力のある映画」を導き出したとしています。



by Erik Witsoe

研究で開発されたアルゴリズムでは、ネットワーク分析で頻繁に用いられる指標のひとつである中心性指数を利用。ビオグリオ氏によると、各映画をネットワークのノードとして扱い、「各映画が他の映画に対して有する接続数(つながり)」と「接続先の映画がどれほど有力か」から影響度スコアを算出。研究では4万7000本分の国際的な映画のスコアから、各映画に関わった2万人の映画監督および、約40万人の俳優のキャリアも評価・順位付けしています。

以下の図は、分析された約4万7000本の映画をジャンル別に分類したグラフ(a)、製作国別に分類したグラフ(b)、年代別に分類したグラフ(c)です。これによると、最も多く作られた映画のジャンルは「ドラマ」、最も多く映画を製作したのは「アメリカ」、最も多く映画が製作されたのは「2000年代」です。



ビオグリオ氏らが開発したアルゴリズムが導き出した「歴史上最も影響力のある映画トップ20」は以下の通り。

◆1位:オズの魔法使(1939年)

◆2位:スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望(1977年)

◆3位:サイコ(1960年)

◆4位:キングコング(1933年)

◆5位:2001年宇宙の旅(1968年)

◆6位:メトロポリス(1927年)

◆7位:市民ケーン(1941年)

◆8位:國民の創生(1915年)

◆9位:フランケンシュタイン(1931年)

◆10位:白雪姫(1937年)

◆11位:カサブランカ(1942年)

◆12位:魔人ドラキュラ(1931年)

◆13位:ゴッドファーザー(1972年)

◆14位:ジョーズ(1975年)

◆15位:吸血鬼ノスフェラトゥ(1922年)

◆16位:捜索者(1956年)

◆17位:カビリア(1914年)

◆18位:博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか(1964年)

◆19位:風と共に去りぬ(1939年)

◆20位:戦艦ポチョムキン(1925年)

各映画の影響度スコアを基に研究論文が作成した、「最も影響力の高い映画監督トップ20」が以下のもの。

◆1位:ジョージ・キューカー

◆2位:ヴィクター・フレミング

◆3位:アルフレッド・ヒッチコック

◆4位:マーヴィン・ルロイ

◆5位:スティーヴン・スピルバーグ

◆6位:スタンリー・キューブリック

◆7位:ノーマン・タウログ

◆8位:キング・ヴィダー

◆9位:ジョージ・ルーカス

◆10位:マイケル・カーティス

◆11位:ジェイムズ・ホエール

◆12位:フランシス・フォード・コッポラ

◆13位:ジェームズ・キャメロン

◆14位:ウィルフレッド・ジャクソン

◆15位:サム・ウッド

◆16位:アーネスト・B・シュードサック

◆17位:メリアン・C・クーパー

◆18位:ビリー・ワイルダー

◆19位:オーソン・ウェルズ

◆20位:ハワード・ホークス

さらに、上位5%の映画を「ゴールド」、5〜10%の映画を「シルバー」、10〜15%の映画を「ブロンズ」としてそれぞれにポイントを割り振り、このポイントを基に「最も影響力の高い映画に出演している俳優トップ20」を割り出しています。

◆1位:サミュエル・L・ジャクソン

◆2位:クリント・イーストウッド

◆3位:トム・クルーズ

◆4位:アーノルド・シュワルツェネッガー

◆5位:ジョン・ウェイン

◆6位:ウィレム・デフォー

◆7位:ブルース・ウィリス

◆8位:ヴィンセント・プライス

◆9位:デスモンド・リュウェリン

◆10位:ワード・ボンド

◆11位:ロバート・デ・ニーロ

◆12位:ジャック・ニコルソン

◆13位:ショーン・コネリー

◆14位:ハリソン・フォード

◆15位:ダニー・トレホ

◆16位:クリストファー・リー

◆17位:ロビー・コルトレーン

◆18位:ジョニー・デップ

◆19位:スティーヴ・ブシェミ

◆20位:ジェームズ・ステュアート

ビオグリオ氏は「映画のランク付けにネットワーク分析を用いるという考えは全く新しいものではありませんが、この技術を用いて映画製作に携わる人々をランク付けするというのは、初めてのことです」と語っています。なお、ビオグリオ氏らが開発したアルゴリズムは芸術研究や映画史家の研究にも利用できるとのこと。ただし、研究で使用したIMDbのデータは西側諸国で制作された映画に偏っている、という点には注意が必要です。