首都高速と阪神高速で、本線上に設けられた「本線料金所」の撤去が進められています。本線上で必ず減速あるいは停車しなければならないことから、渋滞の要因にもなっていたものですが、なぜ撤去が可能になったのでしょうか。

役目を終えた? 撤去可能になった背景

 首都高速道路が、1号羽田線(上り)の平和島本線料金所(東京都品川区)と湾岸線(東行き)の大井本線料金所(同・品川区)の運用を2018年5月に停止、これらを撤去する予定です。阪神高速道路も、6か所の本線料金所を撤去する方針で、すでに3号神戸線東行きの尼崎本線料金所(兵庫県尼崎市)と5号湾岸線西行きの南芦屋浜本線料金所(同・芦屋市)については完了しています。


首都高湾岸線の大井本線料金所。2018年5月に運用が停止され、今後撤去される(2017年11月、中島洋平撮影)。

 その名の通り高速道路の本線上に設けられる本線料金所は全国に存在し、たとえば有料区間と無料区間の境目や、NEXCOとそのほかの道路会社との境界付近などにあります。対して首都高速や阪神高速で撤去対象となった本線料金所は、いずれも同じ会社の路線の途中に設けられたものです。なぜ撤去が可能になったのか、首都高速道路に聞きました。

――平和島と大井の本線料金所は、そもそも何のために設けられたのでしょうか?

 料金体系が変化するポイントで、お客様から通行料金をいただく目的がありました。当社の料金体系はもともと「東京線」「神奈川線」「埼玉線」という3つの料金圏で一律に設定されており、平和島と大井の本線料金所は、いずれも神奈川線と東京線のあいだに位置していたものです。神奈川線から東京線へまたがってご利用されるお客様から、東京線の料金をいただく場所でした。

――なぜ撤去が可能になったのでしょうか?

 2012(平成24)年から料金圏を撤廃し、利用距離に応じた対距離制料金へと移行したため、ほぼ不要になりました。その後は、空港西入口や羽田入口など、料金所がない一部の入口から現金でご利用される方に、通行券を発行する機能を持っていました。

本線料金所の撤去で事故や渋滞も減る?

――今後どう変わるのでしょうか?

 お話した1号羽田線上りの空港西入口、湾岸線東行きの湾岸浮島入口、空港中央入口にそれぞれ料金所を新設して代替しました。もう1か所、1号羽田線の羽田入口にも入口料金所を新設するため、この入口は2019年5月まで閉鎖します。


首都高速における料金所の撤去と新設の概要。平和島および大井本線料金所のほか、前後区間の出口料金所も運用を停止した(画像:首都高速道路)。

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 阪神高速でも、かつては「阪神西線」「阪神東線」「阪神南線」という3つの料金圏が設定されており、撤去対象となっている6つの本線料金所が、それぞれの料金圏の境目に位置していました。しかし2012(平成24)年から、首都高速と同様に料金圏のない対距離制へと移行しています。

「6つの本線料金所は、現状の料金体系においては基本的に不要となっています。料金所がない一部の入口を通過されたお客様から料金を頂戴する目的はありますが、それら入口に料金所を新設するなど、何らかの代替方針が立ったところから順次撤去しています」(阪神高速道路)

 阪神高速道路によると、本線料金所ではレーン移行による車両の接触や、前方車両への追突といった事故が発生しているほか、減速あるいは停止しなければならないことから、渋滞発生の原因にもなっているとのこと。これを撤去することが、事故の削減や走行性の改善などにつながるとしています。

「違反車両の確認」という役割も 撤去後はどう変わる?

 一方で本線料金所は、通行車両がゲートで減速あるいは停止することから、過積載車両など不正な通行車両を確認したり、取り締まったりするポイントでもあります。たとえば首都高の大井本線料金所には、各ゲートの入口に車両の重さを測る「軸重計」が設置されているほか、違反車両の大規模取り締まりなども行われます。

 首都高速道路では、「(NEXCOが管轄する高速道路とのあいだにある)ほかの本線料金所や、入口料金所で違反車両の取り締まりを行っていきます」とのこと。阪神高速道路は「本線料金所のほか、従来から入口料金所でも取り締まりを行っています。軸重計も各料金所に備わっており、新設する料金所にも同様に整備しますので、今後は各料金所で現在よりもレベルを上げて取り締まりをしていきます」と話します。

 撤去された本線料金所の跡地はどうなるのでしょうか。首都高速道路は、「平和島、大井とも用地が狭く転用が困難なため、現在のところ跡地利用の計画は特にありません」とのこと。同社ではすでに2012(平成24)年、湾岸線西行きの湾岸浮島本線料金所(川崎市川崎区)を撤去していますが、ここも「跡地はそのままになっています」とのことです。


阪神高速道路における本線料金所の撤去概要。尼崎、南芦屋浜および中島本線料金所の跡地は、「ミニPA」の拡充に利用される予定(画像:阪神高速道路)。

 一方、阪神高速道路は本線料金所の跡地を利用し、通常のPAよりも機能を絞った「ミニPA」を拡充するといいます。尼崎本線料金所に併設されていた尼崎ミニPAは、本線料金所の跡地を一部利用する形で改修工事を進めており、2018年度内に再オープンします。撤去済みの南芦屋浜本線料金所跡には、南芦屋浜ミニPAを2018年度内に、2019年度内に撤去予定の5号湾岸線東行き 中島本線料金所(大阪市西淀川区)には、中島ミニPAを2020年度内に設置する予定だそうです。

【写真】撤去された本線料金所


2012年に撤去された首都高湾岸線の湾岸浮島本線料金所。跡地はそのままとなっている(画像:首都高速道路)。