高速バスは、ルート上で渋滞が発生していたとしてもそのまま進行し、結果として大きな遅れにつながる場合も。迂回はできないのでしょうか。

基本的には認可されたルートしか走れない

 高速バスは、行く先で渋滞が発生していても迂回(うかい)せず渋滞に進入し、結果として大きく遅れることがあります。


関越道における渋滞のイメージ。高速バスが大きく遅れることもある(画像:写真AC)。

 高速バスが遅れた場合、何か補償はあるのでしょうか。JRグループのバス会社をはじめ多くの事業者では、「道路状況や気象状況などにより目的地への到着が大幅に遅れる場合がある」などとしたうえで、遅延による払い戻しは行わないとしています。では、渋滞の発生がわかっていても、迂回できないのでしょうか。日本バス協会に話を聞きました。

――高速バスは、状況に応じてルートを変えることはできないのでしょうか?

 高速バスをはじめとする乗合バスは基本的に、認可された道路しか走行できません。そのルートが1本しかなければ、渋滞が生じていても進入して行かざるを得ないわけです。ただし、やむを得ない場合はこの限りではありません。

――どのような場合に迂回が可能なのでしょうか?

 たとえば、ルート上で事故が発生して一部区間が不通になるといった緊急的な場合のほか、集中工事で不通になることがあらかじめわかっていたり、警察から事前に迂回指示が出されていたりする場合などです。ただ、程度の問題ではありますが、ルート上で1年間も不通が続くようなケースがあれば、事業者が改めて国に別ルートを申請することもあるでしょう。

――迂回するにしても、事前に認可を受けたルートでないといけないのでしょうか?

 いえ、やむを得ない場合は認可の限りではありません。お話したケースのほか、たとえば花火大会などのイベントで混雑が予想される場合は、事前に警察などの交通管理者や道路管理者、バス事業者などが集まり会議を開きます。そのような場で決められた迂回ルートについては、認可と関係なく通行できます。

渋滞の迂回、可能にしている事業者も!?

――渋滞回避のために迂回することはないのでしょうか?

 基本的に渋滞は「やむを得ない場合」には含まれません。ただし、渋滞を想定して複数の経路を国に申請し、認可を受けている場合は、別ルートをとることもあり得ます。

 このようなルート申請をどこまで行うかは、路線あるいは事業者次第でしょう。たとえば東京を走る空港連絡バスなどは、首都高が経路の中心になりますので、さまざまな迂回ルートが想定できるわけです。ここがふさがっている場合はここを通る、というように事業者があらゆるパターンを想定し、一般道への迂回も含めた複数ルートで認可を受けており、比較的柔軟な運行ができることもあります。

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 近年は、たとえば東名高速に並行する新東名高速や、都心およびその近郊から地方へ放射状に延びる路線どうしをつなぐ圏央道が整備されるなど、ルートの選択肢が広がってきています。国土交通省によると、2015年に常磐道が仙台まで開通して以降、GWなどの多客期に、仙台発着の高速バスが東北道から常磐道へ迂回するケースもあるとのこと。これについて日本バス協会は「常磐道が仙台まで通じたことを受けて、渋滞回避のため東北道のほか常磐道経由ルートの認可を受ける事業者が増えたのでしょう」と推測します。

 このような状況のなかで、「事業者からは、いろいろな経路をより柔軟に選べるようにしたいという要望もあります」(日本バス協会)といいます。しかしながら現状では、バスの運行ルートに対する規制緩和はなされていないそうです。

 ちなみに、東京方面へ向かう一部の高速バスでは、都心部における高速道路の渋滞を想定し、途中で鉄道へ乗り継げるサービスも実施されています。首都高の八潮PA(埼玉県八潮市)、用賀PA(東京都世田谷区)に停車する一部のバスで行われているもので、前者はつくばエクスプレスを八潮駅から秋葉原駅まで、後者は東急田園都市線を用賀駅から渋谷駅まで、それぞれ100円で利用できます。

【図】お盆の仙台〜東京間、東北道から常磐道へ迂回するバスも


東京〜仙台間の高速バスは東北道経由で最大3時間30分の遅れが発生したところ、常磐道経由の便は6時間前後で運行。お盆期間中に東北道から常磐道へ迂回運行した高速バスは、2015年に24便、2016年に47便(画像:国土交通省東北地方整備局)。