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text:Momota Kenji(桃田健史)

JLR 2018年末から20台レベルで開始決定

ランドローバージャガー(以下、JLR)は2017年11月上旬、EVのフォーミュラ世界選手権「フォーミュラE」2018〜2019シーズンから「I-Pace」によるサポートレースを開催すると発表した。

「I-PACE」は、ジャガーブランド初のSUVとして2016年に発売した「F-PACE」のEVバージョン。ボディサイズは、全長×全幅×全高=4680mm×1560mm×1890mm。

パワートレインは、ふたつのモーターで定格出力が400ps、最大トルクが71.4kg-m。リチウムイオン電池二次電池の電気容量は90kwhで、出力50kwの急速充電で満充電の80%まで約90分間かかる。満充電での航続距離は500kmだという。

一方、「フォーミュラE」は2014年9月に北京グランプリを皮切りに始まったFIA(世界自動車連盟)主催の新進シリーズ。一般的に「EVのF1」と称されることが多いが、これまでは参加ドライバーが元F1ドライバー、元インディカードライバー、またはF1への昇格待機組など「二流」のイメージが強く、将来的にF1に代って世界を背負って立つ存在になるとは、メディアは思っていなかった。

だが最近、ジャーマン3(ダイムラー、BMW,VWグループ)が大規模なマーケティング戦略として「EVシフト」を打ち出したことで、自動車業界全体でEVに対する関心が一気に高まり始めている。

国の施策でも、中国でEV、プラグインハイブリッド車、燃料電池車などをNEV(ニュー・エネルギー・ヴィークル)と呼び、NEVの販売台数の義務を自動車メーカー各社に課すNEV法が2019年から実施されるなど、世界各地でEVを含めた規制が本格化する。

そうした中で、ポルシェやアウディも2018年末に始まるフォーミュラEの次期シリーズに参戦することが決定した。すでに参戦しているルノー日産、インドのマヒンドラ・マヒンドラ、ジャガー、さらに中国のEVベンチャーであるネクストEVを含めて、フォーミュラEの世界的な認知度が上がる可能性がある。

そのタイミングで、ジャガーはサポートレースに2018年下期発売予定の「I-PACE」を使ったサポートレースの開催を決めたのだ。

EVシフトで、ブランドイメージもシフトできるか?

JLRとしては、EVシフトの波に乗って、一気にフランドイメージを高めたいところだ。

2008年に、フォードのPAG(プリミアム・オートモーティブ・グループ)からインドのタタグループに売却されたJLR。

オーナーがインド人になったことで、JLRのブランドイメージに大きな変化が起こるのではないか、という心配をよそに、タタ側はあくまでも経営戦略を練る投資家としての立場を守り、車両開発やデザインについてはジャガー及びランドローバーの英国人感覚に一任してきた。

近年では、XE、XF、XJというオーソドックスなセダンを主体に、トップモデルのF-TYPEを筆頭として、SUVのF-PACEとE-PACEへとモデルラインナップを拡充してきた。


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だが、近年の高級車市場は主流であるダイムラー、BMW、アウディ、レクサスに加えて、マセラティやベントレーなど個性的なヨーロピアンブランド、さらにはテスラという異端児など多種多様なブランドが乱立しており、そのなかでジャガーがさらなるオリジナリティを打ち出すことが必要不可欠な情勢だ。

「I-PACE」がジャガーブランドにとってのゲームチェンジャーになるのか?

期待を込めて、その動向をしっかりと見守っていきたい。