日曜日、川崎フロンターレ対鹿島アントラーズの一戦を等々力で観戦。ホームの川崎が首位を行く鹿島を3−1で下した一戦だ。川崎は、後半27分までに3点連取。勝敗への興味は、その時点で終わりを告げたが、試合のレベルはそれなりに高く、見応えのある一戦と言えた。

 鹿島にとっては10試合ぶりの敗戦。大岩剛監督がその座に就任して以来、初の黒星だ。その間、引き分けもわずか1試合。FC東京戦(7月8日)になるが、それとて、アウェー3試合を中2日で行う強行軍の最終戦で、拍手を送りたくなる引き分けだった。
 
 石井前監督の解任を受け、コーチの座から昇格。監督経験のない新人監督に鹿島の監督は務まるのか。疑心暗鬼に曝されていた大岩監督だが、これまでは順風満帆にきていた。
 
 それが一転、前半を0−2で折り返すことになった。内容的にも川崎にボールを支配される有様で、首位を行くチームらしからぬ貧弱な姿を露呈していた。大岩監督が監督として初めて味わう苦しい展開となった。
 
 よくある話と割り切り、泰然自若に構えるか。負けは許されないと、思い切った手段に打って出るか。こうした場合、監督のタイプは大きく2つに分けられる。大岩監督はそのどちらなのか。監督としての色を見る機会が訪れた。
 
 後半戦に臨むに当たり、布陣は従来の4−4−2から3バックへと変更された。3列表記で言うならば3−4−3。3バックと言えば7、8割方、守備的なものになるが、この場合はそうではない。2点を追いかけるのだから当然といえば当然だが、この布陣変更という手術を機に、サッカーがよくなったかと言えばノーだった。攻撃的にはなったが、多くの混乱がそれに伴い付随していた。整然とした効率的サッカーが鹿島の身上だとすれば、その良さは消されていた。
 
 動くことに抵抗がない監督。よく言えばアイディアマンであることを示した格好だ。しかし鹿島は本来、後半型のチーム。時間の経過とともによくなっていく。大抵のチームがその逆の傾向を示すJリーグにあっては、際だった存在。首位を行く一番の理由だと思う。0−2から追い上げる姿が十分、想像できるチームなのだ。

 さらに言えば、いくら強いチームでも、10回戦えば1回ぐらい敗れるのがサッカーというものだ。しかも相手の川崎には地力がある。また鹿島には順位的な余裕もある。この試合に敗れても首位の座を譲ることはない。残り試合は12試合もある。使い慣れていない3−4−3に打って出る必要性はあっただろうか。試す機会として相応しかったかどうか、疑問が残る。

 トーナメントなら話はまったく別になる。アジアチャンピオンズリーグとか、負けたらその瞬間、アウトとなる大会では、変われるかがカギとなる。相手が格上で、番狂わせを狙う場合とか、逆に、力では上回っているのに、スコアで劣っている場合とか、戦術的交代を絡ませた布陣の大幅な変更は、形勢を挽回しようとするとき、重要な武器になる。

 年間を通して戦うJリーグより、日本代表の戦いに不可欠な采配だ。

 勝てば日本のW杯本大会出場は決まる8月31日のオーストラリア戦。だが引き分け、敗戦では9月5日のサウジアラビア戦に勝たなくては、プレイオフへ向かう可能性が高くなる。日本代表のラスト2戦は、トーナメント戦、同然だ。最悪プレイオフに進んだ場合、さらに最大4試合戦うことになるが、これもまたトーナメント戦だ。サッカーを一瞬のうちに豹変させる変わり身の速さが、日本代表には求められている。

 鹿島の大岩監督が川崎戦で披露したような種類の采配は、ハリルホジッチにこそ求められている芸当なのだ。敵のみならず味方さえも欺くような、えっと驚かされるような変化だが、ハリルホジッチにそうした過去は見当たらない。ドラスティックな変化をピッチ上にもたらしたことはない。4−2−3−1を4−3−3に変えるぐらいがせいぜいだ。