2018年導入予定のトヨタJPNタクシーもフェンダーミラー

 かつての日本ではボンネットを持つ車両についてはフェンダーミラーが義務装着となっていた。古い刑事ドラマの再放送などを見ていると、犯人の乗っているアメリカ車(キャデラックなども)までもがフェンダーミラーだったことに驚かされることもある。

 ただ当時の日本国内ではそんな事情であっても、海外ではすでにドアミラーが主流となっており、当然、海外輸出されていた日本車もフェンダーミラーではなく、ドアミラー仕様となっていた。日本車の人気が海外市場で高まってくると、欧米メーカーなどから「不公平だ」との声も高まり、1983年についに日本国内でドアミラーが解禁となったのである。

 しかしその後、21世紀に入った今でもタクシー専用車両といえる、クラウンコンフォートや、ほぼタクシー需要がメインとなるクラウンセダンなどは、ほぼすべての車両がフェンダーミラーとなっている(一部タクシー事業者の車両ではドアミラーがある)。

 ただタクシー車両だからといってフェンダーミラーが「マスト」というわけではない。その一例として2014年に惜しまれつつも販売を終了したセドリック営業車は2009年に衝突時の歩行者被害緩和対応のため、ボンネットの形状変更が行われ、それに伴いフェンダーミラーが全廃され全車ドアミラーに一本化されている。

 その一方で来年から本格導入予定となっている、クラウンコンフォートの後継となる、トヨタのJPNタクシーはフェンダーミラーとなっているので、フェンダーミラーが安全性向上の障害には必ずしもなっていないようでもある(クラウンコンフォートは2018年からの新しい法規対応ができないためJPNへ引き継がれる)。

普通二種免許で重要となるタイヤ位置や車両感覚を掴む点でも有用

 ではなぜタクシー車両ではフェンダーミラーが根強く採用されているかというと、「ドアミラーに比べて視線移動が少なく疲れにくい」や、「死角が少ない」ということがよく言われている。

 ただそれだけが理由でもないようだ。タクシードライバーとして営業運行するためには、「普通二種免許」が必要となる。この免許を取得するためには、自分の運転する車両のタイヤの位置感覚や、車両感覚をしっかりつかんでいるかを試される試験項目がある。 

 実際二種免許を取得しているひとに聞くと、「フェンダーミラーの付け根下が前輪の中心になると教えられた」とのこと。そこでY31型セドリックタクシーでチェックしてみると、実際は前輪より前方付近にフェンダーミラーが装着されているのだが、確かに運転席に座ると、聞いたとおりにフェンダーミラーの付け根の下がタイヤの中心位置のように見えた。また話を聞いたひとは、「狭い道を通れるかどうかも確認しやすい」と語ってくれた。

 コンフォート系では確認していないが、JPNタクシーも含めて両車ともフェンダーミラーの位置を見るかぎりは、やはり前輪の位置関係を確認することはできそうである。

 乗客を安全に輸送する。その最大にて最優先の使命を全うするために、見た目より実用性が最優先されているのが、いまだにタクシー専用車両やそれに準ずるボンネットを持つ車両がフェンダーミラーを採用する理由となっているようである。