JRが発足して30年。首都圏と比べ、京阪神地区では国鉄時代に製造された車両がまだまだ現役ですが、淘汰は進行中。乗っておくならいまのうちかもしれません。

首都圏で引退していても京阪神では現役

 JRが発足して今年で30年。この間、全国でさまざまな新型車両が登場し、国鉄時代に製造された車両を置き換えてきました。3400両以上が登場し、国鉄通勤型車両の代名詞ともいえる103系電車は、2009(平成21)年にJR東日本から引退。後継車である201系電車も、2011(平成23)年に同社から姿を消しました。

 現在も東京近辺で見ることができる国鉄型電車は、定期列車としては特急「踊り子」などで使われている185系と、中央本線などを走る211系、そして武蔵野線や鶴見線などの205系のみ。また、群馬県の高崎を中心とする地区では115系が見られますが、これは“風前の灯火”です。


大阪環状線の103系。活躍が見られるのもあとわずかだ(伊原 薫撮影)。

 一方、京阪神地区ではまだまだ国鉄型電車が活躍を続けています。とはいえ、こちらも新型車両の投入で数を減らしており、数年後には見られなくなっている可能性も。乗っておくならいまのうちかもしれません。

 そこで今回は、京阪神地区に残る国鉄型電車の現況をおさらいしてみましょう。なお、大部分がJR時代に製造され、JR東日本でも武蔵野線や鶴見線などでまだ活躍している205系は、ここでは除外します。

103系

 1963(昭和38)年に登場して以降、日本の通勤輸送を支えてきた103系。現在も大阪環状線、阪和線、関西本線、奈良線など、大阪近辺で活躍を続けています。このうち、大阪環状線では323系電車の増備にともなって2018年度までに、阪和線では225系電車の増備にともなって2017年度中に引退する予定です。

 一方、関西本線や奈良線、和田岬支線(山陽本線の兵庫〜和田岬間)ではしばらく活躍が見られるほか、加古川線と播但線でも、それぞれ専用に改造された103系が運転されています。塗色も、スカイブルー、オレンジ、ウグイスなど懐かしい色が残っていて、うれしい限りです。


奈良線、関西本線の103系は、ウグイス色に白帯が入る(伊原 薫撮影)。

まもなく引退する阪和線の103系は、首都圏でも京浜東北線などで見られたスカイブルー(伊原 薫撮影)。

前面窓が1枚に、ガラスを窓枠に固定するHゴムも金属になるなど印象が変わった(伊原 薫撮影)。

 なお、JR西日本の103系は戸袋(乗降用扉が開いたとき収納される部分)の窓が埋められており、一部の車両は窓なども大幅にリニューアルされています。そのため国鉄時代のスタイルとは程遠い印象を受けますが、走行音やドアの開閉音は昔のまま。目を閉じてじっと耳をすませば、あのころの思い出がよみがえるかもしれません。

「近郊型の代表選手」はいまなお湖西線や草津線などで活躍

 103系の後継車として導入された201系や、「近郊型の代表選手」113系・115系も、京阪神地区では現役で使用されています。

201系

 201系は103系の後継車として開発され、1979(昭和54)年に先行の試作車が、1981(昭和56)年から量産車が登場。高性能化と省エネ化を図るためサイリスタチョッパ制御や回生ブレーキを国鉄で初めて搭載した車両です。その性能もさることながら、黒く塗られた左右非対称の前面デザインは鉄道ファンに大きな衝撃を与えました。


201系は全車にリニューアル工事が施工され、印象が大きく変わった(伊原 薫撮影)。

 関西では、東海道・山陽本線の普通列車用に導入されましたが、現在は大阪環状線と関西本線、そしておおさか東線を走行。こちらも103系と同様、大阪環状線からは2018年度に引退する予定ですが、ほかの路線ではまだまだ使用される予定です。

 ちなみに、201系は前面や側面の行先表示がLED化されており、写真撮影の際はシャッタースピードを遅くしないと表示が欠けてしまいます。“撮り鉄”の皆さんはご注意を。

113系・115系

 1963(昭和38)年に登場した113系や115系は近郊型電車の代表選手。かつて首都圏ではグリーン車をつないだ113系15両の長大編成が、東海道線や横須賀線を疾走するなど、103系よりも広範囲でその活躍が見られました。


緑一色となった113系。ここ湖西線や草津線で元気に走っている(伊原 薫撮影)。

京都丹後鉄道の普通列車は、1日2往復が113系で運転される(伊原 薫撮影)。

紀勢本線の113系。中間車を改造した、切妻形の前面が特徴だ(伊原 薫撮影)。

 京阪神地区で手軽に113系が見られるのは、湖西線と草津線です。残念ながら塗色は深緑とオレンジの伝統的な湘南色から明るい緑一色に変えられていますが、103系と同様、走行機器はほとんど変更されていません。あの懐かしいボックスシートも現役です。

 また京阪神地区以外では、山陰本線(福知山地区)や紀勢本線、それに姫路以西の山陽本線などで、まだまだ多くの113系、115系が元気に走っています。223系などと同様の転換クロスシート(背もたれを動かして向きを変えられる座席)に取り換えられたものも多く、乗客から好評です。変わったところでは、京都丹後鉄道の一部列車にも使用されており、同鉄道の宮津駅(京都府宮津市)で「丹後あかまつ号」と並ぶ姿も見られます。

「元祖・新快速」車両も健在

 東海道・山陽本線などで新快速として使用された車両も、現在、別の路線で活躍しています。

117系

「私鉄王国」といわれた関西で、国鉄がシェア拡大の切り札として1979(昭和54)年に導入した117系(営業運転は翌年から)。特別料金不要の新快速用ながら特急型185系並みの座席を備え、独特の前面形状や塗色とともに大きな話題となりました。関東に住んでいて、117系の新快速をうらやましく思った人も多いのではないでしょうか。


独特の前面形状が特徴の117系。紀勢本線用車両はエメラルドグリーン色(伊原 薫撮影)。

オリジナル塗装の117系(伊原 薫撮影)。

京都駅で並ぶ113系と117系。湖西線や草津線ではまだまだ主力だ(伊原 薫撮影)。

 1989(平成元)年に登場した221系電車にバトンを渡して新快速から撤退したのち、福知山線などでの運転を経て、現在は湖西線、草津線などで活躍。ラッシュ時の混雑緩和のため、乗降扉近くの座席がロングシートに改造されたものの、座席の色や木目調になっている車端部の壁など、随所に国鉄時代の雰囲気がそのまま残っています。

 一方で残念ながら、定期運用に使用されている117系はすべて緑一色になってしまい、クリーム色に茶帯のオリジナル塗装が見られるのは、おもに団体用で使われている1編成のみです。

 117系に限らず国鉄型電車は座席下からの暖房が強力なため、冬の寒い日にフカフカの転換クロスシートに座っていると、なにやら懐かしくて幸せな気分になります。筆者だけでしょうか。

105系

 105系は、地方路線用として1981(昭和56)年から製造された、首都圏では見られなかった車両です。ただし、105系のうち一部は常磐線で走っていた103系から改造されており、特に和歌山地区で走る車両には、前面の貫通扉など常磐線用103系の特徴を残しているものもいます。京阪神付近では和歌山線、桜井線、紀勢本線と広範囲で運用されているため、出会えるかどうかは運次第ですが、ぜひ訪れてみてください。


和歌山線で運転されている、元常磐線103系の105系(2014年9月、恵 知仁撮影)。

 京阪神でも着実にその数を減らしている国鉄型電車。まだまだ現役とはいえ、その活躍が見られなくなる日は意外と近いのかもしれません。後悔する前にぜひ乗って、撮って、心に刻んでおきたいものです。