伊東のアシストから先制点を決めて、笑顔を見せる鈴木。巧みなポジショニングと高いシュート技術が凝縮されたファインゴールだった。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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[ACL・3節]鹿島 3-0 ブリスベン・ロアー/3月14日/カシマ
 
 1-0で勝利した3月10日の横浜戦後、この試合の決勝点を挙げた鈴木優磨について、昌子源は次のように語っていた。
 
「あいつが一番、悔しいはず。だって、点を取ってもサブなんだから。途中から入っても点を決めてくれるから、使われ方もスーパーサブというか、途中からのほうが(いい)っていうのもあるだろうし。
 
 いろんなことが考えられるけど、我慢して、チームのためにやっているあいつの姿を見て、ポジションは違う俺らもそうだし、(金崎)夢生くん、ペドロ(・ジュニオール)が一番、刺激を受けていると思う。そうやってチームのために、みんなが点を取れるようになればいい」
 
 今年のシーズンインから、鈴木は好調をキープしていた。1月のタイ遠征では、スパンブリー戦で2ゴール、2月のニューイヤーカップの長崎戦と福岡戦で1ゴールずつを記録。続く水戸とのプレシーズンマッチ、浦和とのゼロックス・スーパーカップでは、それぞれ途中出場から1ゴールを決めている。
 
 そしてACL初戦の蔚山現代戦でも、勝負を決める貴重な追加点をゲット。しかし、3節を終えたリーグ戦と、ACL2節のムアントン・U戦は、すべてベンチスタートだった。
 
 もっとも、リーグ3節の横浜戦では、71分に投入されると、先述したとおり、83分に今季リーグ初ゴールとなる決勝弾を豪快なヘッドで叩き込む。当時の首位チームから勝点3を奪う貴重な働きで、その存在をアピールした。
 
 その横浜戦から4日後、3月14日のACL3節・ブリスベン・ロアー戦で、鈴木は満を持してスタメンに名を連ねる。そして、背番号9は結果を出した。
 
 優位にゲームを進めながらも、鹿島はなかなかゴールをこじ開けられなかった。膠着状態が続くなか、前半も残り2分となったその時、均衡を破るゴールが生まれる。
 
 右サイドを崩した伊東幸敏がクロスを入れると、「相手のDFが、ニアをゾーンで消してきていたので、ちょっとマイナスに」とポジションを取った鈴木のもとにボールが来る。迷うことなく、コンパクトな振りで鮮やかなボレーを突き刺す。日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督が視察するなか、ファインゴールを決めてみせた。

【ACL鹿島ーブリスベンPHOTO】鈴木が先制ゴール!鹿島が3得点でブリスベンに完勝!
 ここまでのチームとしての戦績を整理すると、タイ遠征で2試合、ニューイヤーカップで3試合、プレシーズンマッチ、ゼロックス、そしてリーグ戦とACLでそれぞれ3試合と、計13試合を戦い、9勝4敗となっている。
 
 そのなかで鈴木は9ゴールを記録。周知のとおり、チームトップの数字である。2位は遠藤の4ゴール、3位は金崎とP・ジュニオールの3ゴールと、ライバルたちに大きく差をつけている。
 
 さらに、鈴木が得点した試合はすべて勝利しており、その“不敗神話”はチームに好影響を与えてもいるはずだ。鈴木が決めれば負けない――20歳のストライカーは、常勝軍団にとってもはや欠かせない存在になりつつある。
 
 それでも、鈴木の地位はまだ絶対的なものではない。2トップの軸は金崎で、もう一枠をP・ジュニオールと鈴木が争う構図だ。
 
 FWにとって最重要のゴールという結果は十分に示している。あとは、本人が課題に挙げる攻守の切り替えやチャンスメイクの部分を高めながら、「複数得点できれば、もっとスタメンに近づけると思う」と鈴木はさらなる成長を誓う。
 
 常に貪欲に上を目指す若武者は今後、どのようにステップアップを遂げるのか楽しみだ。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)