パートやアルバイトというような非正規雇用が増え続けている現代。いわゆるフリーターと呼ばれているアルバイトやパート以外に、女性に多いのが派遣社員という働き方。「派遣社員」とは、派遣会社が雇用主となり、派遣先に就業に行く契約となり派遣先となる職種や業種もバラバラです。そのため、思ってもいないトラブルも起きがち。

自ら望んで正社員ではなく、非正規雇用を選んでいる場合もありますが、だいたいは正社員の職に就けなかったため仕方なくというケース。しかし、派遣社員のままずるずると30代、40代を迎えている女性も少なくありません。

出られるようで、出られない派遣スパイラル。派遣から正社員へとステップアップできずに、ずるずると職場を渡り歩いている「Tightrope walking(綱渡り)」ならぬ「Tightrope working」と言える派遣女子たち。「どうして正社員になれないのか」「派遣社員を選んでいるのか」を、彼女たちの証言から検証していこうと思います。

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今回は、都内で派遣社員として働いている片倉千鶴さん(仮名・29歳)にお話を伺いました。千鶴さんは、少しパサついているショートカットの髪型に、普段からほとんどメイクをしていないため、眉毛しか描いていない素顔をマスクで隠していました。モヘア素材のゆったりめのセーターに、ユニクロで買ったと言うチェック柄のパンツを合わせていました。彼女のファッションは、職場帰りというよりは近所のスーパーに行くような印象を受けました。ノーブランドの茶色の合皮バッグには、コンビニのビニール袋の中に食べかけの菓子パンが突っ込まれていました。

「実はバツイチなんですよ」という彼女。埼玉にほど近い東京にある実家で、母親と暮らしています。母との関係が悪化すると”再婚したい”と考えるとか。

派遣会社から、“スキルアップのためのパソコン研修を受けたら”と言われた千鶴さん。 “仕事で新しいことを覚えたくない”という彼女に、どうして派遣で働いているのか聞いてみました。

「うちは母子家庭なのですが、姉と私の2人姉妹で。家に女しかいないような家庭で育ちましたね。姉も結婚が早くて、子供が2人いるのですがどっちも女の子で、女系家族ですね」

部活動もせずに、バイトに明け暮れた学生時代。

「高校は、都立なんですよ。校則も緩かったので、コンビニとかでバイトをしていましたね。勉強はあまりしなかったのですが、短大の推薦なら取れそうと言われて」

母だけではなく、姉からの支援もあり進学を決めます。

「姉と6つ年が離れているので、結構可愛がられて育ったんですよ。姉が美容の専門学校を出た後に美容師として働いていたのもあって、私は短大に進学させてもらいました」

見た目は地味な印象の千鶴さん。学生時代も派手に遊んでいたような雰囲気はありません。しかし、勉強は辛かったとか。

「ビジネス系の学科だったのですが、特に資格も取れなかったんですよ。簿記とか会計士とかも親に取るように勧められたのですが、過去問を見ただけで“あっ、無理だな”って思って。暗記が苦手なんですよ」

短大生活では、高校時代よりも勉強をしなければならなかったと言います。

「実はちゃんと授業に出席していたのに、単位を落としてしまった科目もあって。短大は2年で62単位取得しなければならないので、忙しかったですね」

親の期待がプレッシャーとなった就活…

短大に進学させてもらったので、就活は頑張ったそう。

「就職は母がうるさくて、“投資した分、稼げる仕事にしろ”って言ってきて。サービス業から、金融まで色々受けに行きました。寮があったので、銀行系のカードローンの会社に入社しました」

短大時代は、母親との衝突が絶えなかった。

「とにかく、実家が狭くて嫌だったんですよ。団地住まいで、姉と母もいたので。自分がいない時に、母に勝手にバッグとか化粧品とか使われたり」

周りの反対を押し切って、就職を決めます。

「母には銀行の系列だと言っても“消費者金融だ”って責められたりしたので、就職で実家を出られるのはメリットとして大きかったです」

金融業ならではの、苦労も多かったと言います。

「仕事は、主に内勤でした。自動契約機が普及しているので、若い人とかはあまり店頭窓口には来なかったのですが、高齢の人とかATMが使えずお金を借りに来ることがあって、よくわからずに高額を借りた後に、“ありがとう”って言われたりするのが辛かったですね」

母子家庭で育った千鶴さんに、結婚というチャンスが舞い降ります。

「離職率が高い職場だったのですが、結婚とかのタイミングで辞める人も多くて。自分もそうなればいいなあと思っていたのですが、ちょうど社内恋愛していて相手が40歳だったんですよ」

Excelの計算式が苦手で、電卓で計算した数字を入力したことも。派遣先のスキルチェックでは、“勉強します”で通した。

20歳年上の上司と社内恋愛の末、寿退社した千鶴さん。結婚生活で待っていたのはモラハラ夫から束縛される生活だった! その2に続きます。