30日、TBS「プロ野球戦力外通告 クビを宣告された男達」では、「遅咲きの日本一投手 34歳で無職に・・・3人の子どもと献身妻・・・涙の応援」として、今季をもってロッテから戦力外を通告された伊藤義弘(34)を特集。トライアウトに挑戦する様子や、去就を伝えた。

「僕の場合は今年1年間一軍に上がってないんで、(戦力外通告は)多分そうだろうなと思っていた。できることならもう1回投げたいですけど」。

番組のカメラにこう切り出した伊藤は、2007年にJR東海からドラフト4位でプロ入りを果たした選手だ。この時すでに25歳だったが、即戦力として1年目から活躍。プロ3年目の2010年、日本シリーズのロッテ対中日戦では胴上げ投手にもなっている。

だが、翌2011年9月の日本ハム戦では、折れたバットの先端が伊藤の左足を直撃する不運の事故に見舞われた。筋肉を傷つける重症を負った伊藤は、ケガが治った後もこの影響でフォームは崩れ、様々な不調や故障が相次ぐように。以降4年で登板数が激減すると、右肘の手術を受けたことで今季は一軍の登板機会がなく、プロ9年目の10月1日、チームからクビを言い渡された。

3人の幼い子供を持つ伊藤。妻の沙綾さんは「とにかく主人を信じているので、何か答えを見つけてくれるはずだというのもあって。私も全然働きますし、主人がやりたいことをやってくれれば」と語ったが、今年から野球チームに入った6歳の長男は、父の状況をよく理解していないようで「チームはロッテ」などと無邪気に話す。

「もともと社会人からプロに入って戦力外になる前から、入団した当時からずっと考えながらやってきた。悔いが残らないようにしっかりやったので悔しいというのは全くない」という伊藤だったが、トライアウトに向けては「体の状態も昨年に比べて格段にいいし、去年肘を手術して回復の途中で球団から戦力外になったので」と手応えを口にした。

そして、11月12日に行われた合同トライアウトにおいて、伊藤は打者3人と対戦。元DeNAの内村賢介にライト前ヒットを打たれたものの、元楽天・後藤光尊らは抑えてみせた。すると、トライアウトの2日後、伊藤のもとに入った連絡は、巨人から秋季キャンプ参加を求めるものだった。

トライアウトに続き、入団テストを受ける格好となった伊藤は、宮崎キャンプに参加した3日間で135球を投げ込んだ。「首脳陣の方がどういう評価を出すのかはわかりませんけど、やれることはしっかりできたと思います」と語ったが、テストの結果は不合格。契約には至らず現役引退を決めた。

帰宅後、6歳の長男に「もう野球辞めたんだよ、パパ。テストね、落ちたの。だからチームに入れないの。もう野球選手じゃなくなったんだよ」と説明した伊藤は、妻にも「9年間、色々心配をかけてありがとうございました」と感謝の言葉を述べた。

今後は、中高保健体育教員になるため大学に入り直して教員免許の取得を目指すという伊藤。「34歳まで野球やって、もちろん色んな厳しさも僕自身味わったので、そういうのも伝えられたら」と意気込んだ。