お洒落インテリアは不要？様々な男の部屋を見てきた女が語る、“やれる部屋”の条件
「俺の部屋に来ない？」
ラグジュアリーブランドでPRとして働くレイナ、33歳。
「部屋を見れば、その人の全てが分かる」とはよく言ったものだが、レイナはこれまで数多くの男たちの選ぶ街と部屋を見てきた。
これまで行った部屋は、表参道在住のデザイナー達也、目黒でルームシェアをする和樹、神楽坂に住む元商社マン・邦夫など。そんなレイナが、「やれる部屋」の極意を考える。
数々の男の部屋を見てきたレイナの現在とは…？
「レイナさん、俺今気になる彼女がいるんですけど、なかなかうまくいかないんです。」
「何度かデートしていて感触は悪くないんですけど、家に誘って断られたり…。家に来てくれたと思ったらすぐ帰っちゃったり…。何か問題あるんですかね？」
俊介は7期下の26歳。可愛らしい顔立ちだが背は163センチとやや低め。お調子者で憎めないキャラクターだ。
色んな男性とデートをして、彼らの部屋から深層心理を探ってきたレイナも既に33歳。来春結婚する予定だ。
相手は神楽坂在住の元商社マン・邦夫。今は輸入食材を扱うEC会社を経営している。
彼と付き合ったのは、何度目かのデート後に彼の家に行き、「泊まってもいい？」と言ったのがきっかけだった。今でもそのことを思い出すと顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。
しかし、邦夫の部屋はとても居心地が良く、彼の人柄そのまま表れているかのような部屋だった。
学生時代のときから長年付き合っていた彼氏と別れたあと、レイナは数々の男と出会い、食事をし、彼らの部屋を見てきた。
レイナはその経験を活かし、7つ年下の可愛い後輩にアドバイスすることになった。
レイナが思わず部屋に行ってしまった誘い文句とは…？
部屋に誘う際のポイント：女の下心に気付かないふりをする
まず、レイナは俊介に女の子を部屋に誘う方法を聞いてみた。すると、俊介はバツの悪そうな顔でこう言った。
「ちょっと家来ない？とか、DVD見よう、とかですかね。」
「それは直接的過ぎる。」
レイナは顔をしかめてこう続けた。
「ポイントはね、“女の下心に気付かないふりをする”だよ。」
「女の下心に気がつかないフリ？」
俊介は思わず声を上げた。レイナの説明はこうだった。
何度かデートして日付が変わっても盛り上がるのは、女性にもある気がある証拠。
しかし一方で、「軽い女に見られたくない」という強い貞操観念があるため、部屋に行くということに対して、男性が考える以上にマイナスブレーキが強く働く。
「ちょっと家来る？」や、家に誘う定番の「DVDでも見る？」という口説き文句は、直接的過ぎて断られる可能性が高い。そこで「うん」と言ってしまったら、軽い女に見られてしまうかもしれない、という意識が強く働く。
レイナのこれまでの経験上、代々木公園在住・洋介の「プロジェクターで映画を見ない？」や、神楽坂在住・邦夫の「中国茶を飲みに来ない？」という誘い方は、一見ぶっ飛んでいるようだが、「Yes」と言いやすい状況だ。
西麻布在住の健太などは、「明日予定なかったら、家に来ない？」と、翌日の予定まで聞いてきたが、今考えるとあり得ない。
それなりの経験がある女性に対して、「下心に気がつかないフリ」をしてあげるのはある種のマナーだろう。続けてレイナはこう言った。
「次は部屋の雰囲気かな。部屋の写真ある？」
この問いに俊介はドキリとした。特にお洒落でもない、ごくごく普通の男の一人暮らしの部屋だ。水回りを綺麗にしろとか、お洒落な家具を置けとか言われるのだろう。しかしレイナが口にしたのは、王道の“アレ”だった。
王道の“アレ”とは？
やれる部屋の条件� �店のムードを継続させるための間接照明
俊介は仕方なく、この間友だちが来たときに撮った部屋の写真を見せた。するとレイナはこう言った。
「間接照明ってある？」
2、3年前に買った間接照明は、どう使っていいか分からず埃をかぶっていた。今はもっぱら備え付けの蛍光灯に頼っている。
確かに間接照明はお洒落だと思うが、そんなことは気障な野郎がやることだと思っていた。
しかし、レイナ曰くいくらお洒落なレストランに行っても、「その後蛍光灯に晒されると一気に現実に引き戻される」らしい。食事をして2、3時間したあとの疲れた顔を蛍光灯にさらされるのは女性としては非常に勇気のいることだ。
「店のムードをいかに継続できるか」
これが大きなポイントだという。
レイナが思い出した部屋は、代々木公園在住の洋介の部屋だ。彼の部屋の灯りは基本的に全て間接照明。蛍光灯は一応あったが、滅多に使っていないと言う。
やれる部屋の条件�◆�沈黙を回避しリラックスさせるBGM
レイナにとって重要なポイントが、あと一つあった。
「部屋にいるときは、やっぱり音楽があると嬉しい。」
これも間接照明と同じで、お店の雰囲気をどこまで持続できるかが大切だ。店から出て、いきなり密室に閉じ込められての沈黙は辛い。気持ち良くリラックスできるBGMがあると、緊張もほどける。
神楽坂在住の邦夫が流していたのはアコースティック調の曲。彼らしいチョイスで「センスいいな」と思わせるものだった。他に印象的だったのは、代々木公園在住の洋介が流していたボサノバや、中目黒在住の修二が好んで聴いていたジャズ。
会話の妨げにならず、かつ少しセンチメンタルメロディーだと気分も盛り上がる。
「でも間接照明とかジャズとか、ちょっとハードル高いよなぁ…。」
そうつぶやく俊介に対してレイナは諭すように言った。
「そんなマニュアル通りに考えなくてもいいんだよ。まず、俊介君の居心地がいい部屋づくりをすればいいんだと思う。」
「居心地のいい部屋作りか…。」
社会人になって一人暮らしを始めてから、家には寝に帰るようなもので、心地の良い空間作りということはあまり考えたことがなかった。
「女の人は “巣”作りを考えるからね。居心地がいい部屋ってそれだけで気持ちもオープンになると思うよ。」
レイナはそう言ってにっこり微笑んだ。
その幸せそうな笑みを見て、俊介はまず埃をかぶった間接照明のランプを綺麗にしようと心に決めた。
