オンキヨーからケーブルが一切ない左右分離型のワイヤレスイヤホン「W800BT」が登場した。すでに完全ワイヤレスイヤホンはいくつか発売されているが、実は国内の大手音響機器メーカーが手がけたモデルはこれが初めて。発売前から注目度の高い製品となっており、発売がスタートして間もなく在庫切れとなるほどの勢いを見せている。価格.comの「ヘッドホン・イヤホン」カテゴリーの売れ筋ランキングでも3位(2016年10月7日)に位置しており、いま注目のアイテムだ。今回はそんな「W800BT」をレビューする。

オンキヨー「W800BT」

待望の大手音響機器メーカー製の完全ワイヤレスイヤホン

さて、製品解説に入る前に日本で販売されている、主な完全ワイヤレスイヤホンについておさらいしておきたい。価格.comマガジンではすでに2製品の完全ワイヤレスイヤホンをレビューしている。ひとつは2015年に登場した完全ワイヤレスイヤホンの先駆け的存在、スウェーデンの「EARIN」で、2つ目が2016年に登場した香港fFLAT5の「Aria One」だ。最近では、9月下旬に米Erato Audioの「Appolo7」が登場しているほか、10月下旬にはアップルがiPhone 7と同時に発表した「AirPods」の発売も予定されているなど、完全ワイヤレスイヤホンは急速に製品数を増やしており、ますます目が離せない存在になっている。

とはいえ、国内の大手音響機器メーカー製の製品はなく、欲しいけれど様子見をしていたというユーザーは少なくないはず。実はオンキヨーも2015年頃に海外の展示会で、完全ワイヤレスイヤホンのサンプル品を参考展示していたのだが、その時に展示されていたものを製品化したのがこの「W800BT」なのだ。

ケーブルが一切ない本体。このコンパクトな筺体の中に、送受信用のBluetoothチップ(バージョンは4.1対応)、音を出すドライバー、バッテリーが内蔵されている

そんなW800BTは、音質を重視して作られた、完全ワイヤレスのカナル型イヤホンだ。イヤホン本体(右ユニット)とプレーヤー間および左右ユニット間は、Bluetoothによるワイヤレス通信でつながれており、左右ユニット間の通信には独自の「TrueWirelessテクノロジー」が採用される。対応する音声コーデックがBluetooth標準の「SBC」のみなのが気になったが、後述するように、良質なサウンドが楽しめるのには驚いた。

本体はやや大柄で、Aria Oneのようなフタ型のデザイン。搭載する8.6mm径のダイナミックドライバーには強磁力希土類マグネットを採用。再生周波数帯域は6Hz〜22kHzと一般的な範囲をカバーしている。また、ボディにはフィット感を高めるイヤーフックが付いており、ちょっとした衝撃で抜け落ちる心配もない。しっかりと固定できるためか、さほど重さが感じられないのも好印象だ。

ボディには人間工学に基づいて設計されたイヤーフックが付いている。着け心地はよく、ちょっとした衝撃では簡単に抜けないようになっている

フル充電時の駆動時間は3時間で、スタンバイは40時間。筆者が確認した限り、2時間半程度は動いており、バッテリーの持ちはほぼ公称値どおりだ。バッテリー切れ間近になると通知音が2回鳴るのもありがたい。1回目の4分後に2回目が鳴り、そこから1分経つとバッテリーが切れる。合わせて5分という長さは、1曲再生できるキリのいい長さだろう。ちなみに、通知音のボリュームもさほどうるさくなかった。

操作も簡単だ。こちらも基本的にはAria Oneと似ており、先に右ユニットとプレーヤーをペアリングしたあと、次に左ユニットの左右ユニットのペアリングボタンを押すだけで使用できる。ちなみに、右ユニットのペアリングボタンは電源ボタンだけでなく、ハンズフリー通話時の通話ボタンも兼ねている。なお、ペアリング状態は本体に搭載されたLEDで確認可能だ。

最大5回分再充電できる収納ケース兼充電器

完全ワイヤレスイヤホンでは付属するケースも重要だ。というのも、このケースが「キャリングケース」「充電機」「予備バッテリー」の3つの役目を担っており、製品の使い勝手を大きく左右するからだ。

オンキヨーのケースを使っていて感じたのは、まずデカいこと。たとえば他社製なら、EARINのケースはスティック型、Aria Oneのケースは卵型と、いずれもポケットにしまえるほど小さい。いっぽう、W800BTは背の低い筒状であり、片手で包むことが難しいほどのボリュームがある。また大きい分、樹脂製のフタは強度的な不安がある。持ち運ぶときはクッション性の高いポーチに入れるなどしたほうがよいかもしれない。

大柄な付属ケース。本体を囲む赤いラインは、充電用のmicroUSBケーブル(直付け)

大柄な付属ケース。本体を囲む赤いラインは、充電用のmicroUSBケーブル(直付け)

上フタを閉じた状態のケース。筒状になっているため、持ち運ぶにはややかさばる。またためカバンの中にいれて持ち運ぶときは、樹脂製の上フタのエッジがほかと接触して破損しないか、心配

また、少し残念に思えたのが、本体に突き刺すピンタイプの充電用接点だ。見た目どおり細く、そして挿し込みづらい。しっかり挿し込む必要があるため、ピンが折れるのではないかとヒヤヒヤした。さらに充電時はボディが埋め込まれるような形になるため、しっかりハマった本体を抜くのは苦労した。取り外しに関しては、正直もうひとつ、工夫がほしかったと思う。

ケースに内蔵されるバッテリーでは、5回分の充電が行える。外出時でも再充電することで、計10時間近く再生できるのは大きなメリットだ。そのほか、バッテリー残量が確認できるLEDも搭載している。ケース本体が大きい分、バッテリー周りは容量、使い勝手ともに十分なものとなっている。

本体に突き刺すピンタイプの充電用接点。ピンが細くかつ挿し込みづらいため、折ってしまうのではないかとヒヤヒヤした

充電時はLEDが点灯し終了すると消灯する

充電時はLEDが点灯し終了すると消灯する

音質インプレッション

続いて音質についてレビューしよう。本機でまず気になるのは、高音質な音声コーデックをサポートしてない点だろう。そのため音質は大丈夫?と疑問に思う方もいるだろうが、意外にも音質は非常に良好だ。

まず印象的なのは低音がよく出ていること。バスドラの質感もズシッと感じられるうえ、ベースもしっかりうなりを上げている。EDMのようなパンチの効いた重低音も楽しめるなど、パワー感はかなりある。注意したいのはイヤーチップのサイズ。これがゆるいと低音がスカスカになりやすいので、ピッタリはまるサイズを選びたい。

また存在感のある高域は楽曲により派手に聞こえるものの、シンバルの響きや余韻はうまく出ており、音の広がりも感じられる。さすがにウェットな雰囲気はさほど強く感じられないが、明るく元気な楽曲はその勢いのまま楽しめた。ボーカルに押し出し感があり、低音から高音までつながりのよい一体感のある音を楽しめるのは、ダイナミック型ドライバーならではだ。なお、動画再生を試してみたが遅延があり、現時点ではほぼ音楽用途専用とわりきったほうがいいだろう。

まとめ

大手音響機器メーカーが開発した完全ワイヤレスイヤホン。その存在を待ち望んでいたユーザーにしてみたら、W800BTは気になる存在と言えるだろう。音質もその期待に応えるレベルに仕上がっており、完全ワイヤレスイヤホンの音としては非常によくできていると感じた。たとえ、対応音声コーデックがSBCのみだからといって嫌わずに、一度聴けば音質のよさを実感できるはずだ。ただ、ケースはサイズや形状など、実際に持ち歩いて使ってみると、惜しい点が目につく。ここはユーザー側での工夫が必要だろう。価格.com最安価格は32,164円(2016年10月7日時点)で、ほかの完全ワイヤレスイヤホンと比べれば高めだが、音に関しては十分満足いくクオリティになっており、その価値は感じられそうだ。


>> 音質重視の完全ワイヤレスイヤホン、オンキヨー「W800BT」レビュー の元記事はこちら