はじめに

皆さんが愛して止まないペットたち、コンパニオンアニマル。
僕の専門分野でお話させて頂くとすれば、今の日本の現実として『犬が安心して暮らせる社会』とは言い難い現実があります。
これは日本のいにしえよりの文化や民族性に起因するところなのですが、その部分も後程ひも解いてみましょう。

ペット先進国と呼ばれるドイツと、後進国日本の違いをご説明しながら、どうすれば今後、日本が『ペット先進国』の仲間入りができるか、世界の誰もが認める動物に優しい国になれるのかを僕なりに考えてみました。

行政のあり方、遅れている法整備

日本の行政で言えばあなたもご存じの通り、日本には『殺処分』が今なお存在します。
昨今、『殺処分0』を目指す機運が高まっていますし、僕も自分ができることから頑張っています。
しかし、ドイツには殺処分ということ自体存在しません。
厳密に言えばあるのですが、厳重な規則の元でなければ実行できないのです。
知れば知るほどドイツは動物達にやさしい国なんですね。

詳細は割愛させて頂きますが、理解を深めて頂くためにドイツの動物愛護に対する歴史を少し覗いてみましょう。

ドイツの動物愛護に対する歴史

今から200年前、『動物は人間の所有物ではない。人間と同じ痛みを感じる存在である』とアルバート・クナップ牧師が唱え、不幸な動物たちを保護する施設を作ります。
この活動がドイツ各地に広がり『動物は社会に欠かせない一員だ』という考えがドイツ市民に根付いていきました。
1974年に犬の保護に関する規則が条例で細かく定められ、2002年には国家憲法にも動物保護が書き加えられました。

『国は来るべき世代に対する責任を果たすため・・・・自然的生活基盤及び動物を保護する』(ドイツ連邦共和国基本法 第20a条)

ドイツ国では、
「飼い主が手に負えないならば社会が動物たちの命を守る!」
「犬は大切なパートナーだ」
という考え方が一般常識なんですね。

ドイツの犬に関する法律のほんの一例飼育について犬を長時間留守番させてはいけない。犬の大きさや犬種によって、ケージやサークルの大きさも詳細に決められている。1日最低2回、計3時間以上屋外(運動や社会化教育)やドッグラン(主に社交性)へ連れて行かなければならない。外気が21℃を超える場合、社内に犬を放置してはならない。

など、これらの法律に違反すれば、市民から通報があり獣医局やアニマルポリスから指導を受けます。
悪質な場合は罰則があり、飼育が無理と判断されると強制的に犬たちが没収され施設で保護されます。

ブリーダー(繁殖者)について犬の繁殖業者は、繁殖に使う成犬10頭までとその子犬しか所有してはいけない。そして業者はその教育と知識を身につけていることを役所に証明しなければならない。生後12か月までの犬は鎖につないで飼ってはいけない。生後8週間未満の子犬は母犬から離してはいけない。授乳中の母犬、病気の犬は鎖につないではならない。屋外で飼育する場合、雨風がしのげ室温を確保できる保護壁と断熱材を使用し、健康を害することのない素材で作った犬舎であること。鎖の付け根は固定せずに、最低でも6m以上のレールに取り付けて自由に動けるようにしなくてはならない。室内で飼育する場合は、昼夜のリズムが守れるよう採光のための窓の大きさ(室内面積の八分の一)も決められている。

など、これらの法律に違反すれば罰則が科せられます。
最高25,000ユーロ(日本円で約290万円)の反則金も科せられます。

恐るべし先進国!
突然日本の動物愛護法がドイツの様になれば、業界パニックでしょうね。
あなたはどう思います?

飼い主の意識

ここからは日本側の視点でお話ししましょう。
現在日本のペット飼育率は国民全世帯の約3割で、これはペットブームと言われている割には少ないと思いませんか?
飼いたいけど家庭の事情やアレルギーなどがあって飼えない人や、犬嫌い猫嫌い動物嫌いの方もたくさんおられるのも事実なんですが、愛犬家や愛猫家の方は、ご近所さんがみなさん犬や猫が好きだと勘違いされている方も中にはおられます。
そして、マナー違反や迷惑行為など、お行儀が悪い愛犬家には困ったものですね。

世界から見た日本の大きな特徴として、『ペットは仔犬や子猫が欲しい』と思う人が多いことが挙げられます。
なので日本では月齢が若いほど「高値」が付き、それゆえに供給する方は、躍起になって子犬子猫を『製造』するようになるのです。

年間約60万頭あまりの仔犬が流通し、その内約40万頭が各ご家庭に迎え入れられます。
「ん?計算が合わない」と思われたでしょうが、これが今の日本の現状なのです。
「残った子達は?」と素朴な疑問を持たれるでしょうが、ここではあえて説明するのはやめておきますね。

日本では近年、動物愛護法の改正などでやっとペットや犬の地位向上、犬の終生飼育や行政側が犬の持ち込みを拒否できるようになってきました。
これは、これまでの事を考えるとかなりの進歩です。

僕は今まで、数多くの愛犬家と接してきました。
そして今もヒヤリングやカウンセリングを通じて『日本の犬の飼い主の意識』に触れ、意見交換しています。
優秀な愛犬家が多いのですが、中には犬を軽んじる愛犬家も少なからずおられます。
つまり犬を家族の一員と認め、パートナーとして尊重し、深い愛情を注がれておられる方とは逆に、犬をバカにしておられる方がおられるのです。
バカにすると言うと誤解を招く言い方かも知れませんが、犬の気持ちを無視し、さも犬が満足してくれていると勘違いし、自己満足の『愛情』を押し付けているという意味で、これらの行為は僕から見ていると「犬をバカにしている」と感じます。

これも僕は「その飼い主が悪い!」という訳ではなく、『犬に対して無知』なだけだと思うんです。
これは日本の「間違いだらけの犬の常識」が浸透しているからに他ならないからです。
この部分が先進国と後進国の国民認識の差であり、重要なポイントだと言えるでしょう。

ドイツでは「犬と暮らしたい!」と思ったら先ず里親になるという発想で、ティアハイムなど保護施設に出向きます。
日本のように「ペットショップに行こうか!」とはならないんです。
まぁ、欧米諸国のペットショップでは生体販売はしてないんですけどね。
でも一昔前に比べれば、今は日本の愛犬家もドイツに負けず劣らずの方が増えてきているのは、僕にとっても心の救いだと思えるようになりました。

社会認識

先ほどお読みいただいたドイツの憲法や行政の取り組み方は、みなさんどう思われたでしょう?
ドイツでは200年前から動物愛護の精神を育み、国民全体に『常識』として根付いています。
僕の夢でもある動物保護施設「ティアハイム」が各地に点在し、犬、猫、猛禽類、爬虫類に至るまで行政とボランティアがしっかりと資金面も協力し合い運営されているのです。
ドイツをはじめ、欧米諸国の常識として『犬はしつけができている』のが当たり前で、犬の学校もたくさんあります。

社会認識の観点でお話しすると、やはり文化の違い、民族性の違いが浮き彫りになってきます。
狩猟民族と農耕民族。大陸文化と島国文化。
それぞれの歴史の違いも大きく影響しています。

犬に対する認識としては、当初人間の生活や仕事を補佐する「道具」として飼育され、犬種改良を重ねてきました。
日本は、犬を狩猟や番犬として進化した経緯があります。
この番犬文化が今も社会に受継がれているところが色濃くあり、僕が子供の頃は玄関先に犬小屋を置き、鎖で繋ぐ外飼いが主流で、壊れた鍋に人間の食べ残した餌を入れて与えていました。
犬を飼いたい時に、ペットショップなんて洒落た店に買いに行くよりも、『近所で子犬が生まれた』からと、仔犬を貰うというのが当たり前でしたね。
野良犬も町内を闊歩していたものです。
ちょっと話が逸れますが言葉の中にも「幕府の犬が!」とか「犬侍」とか犬が悪口に使われるのも、昔は犬の地位が低かったことを表していますよね。
あっ、すみません。

僕の記憶が正しければ、日本が動物愛護に取り組み出したのは戦後しばらく経ってからではないでしょうか。
欧米では盲導犬以外でも犬が電車に同乗できたり、スーパーマーケットやレストランに一緒に入れたりと、立派に社会の一員として暮らしています。
片や日本では未だ犬の生活範囲は限られ社会の一員としては認識されていませんよね。
日本の法律では未だペットは『家畜』と表記されています。

日本は「ペット産業」として確立されていて、生体をまるで家電の様に量産していることはあなたもご存知だと思いますが、欧米諸国でも利益優先のパピーミル(仔犬工場)が存在し、深刻な問題として取り上げられていますよね。

今や日本のペット産業は、市場規模1兆4000億円を超えるまでに成長してしまいました。
しかし利益より『動物の尊い生命を扱う』ことに重きを置く社会通念という点では、日本はまだまだドイツに敵わないのが実情でしょうか。
頑張れ日本!

さいごに

僕は犬の専門家として、日本がペット先進国になるためには大きく三つの柱が必要ではないかないかと考えます。

先ず、『飼う側の意識改革』。
そして『ペット業界側の意識改革』。
最後に『仔犬の義務教育化』です。

つまり飼う側はもっと動物の本質や生態を理解し、業界側はオーダー制にし必要以外の生体販売はしないようにする。
ここで需要と供給のバランスを計り、そして仔犬時の社会化期に社会に順応する教育を施す事。
国家行政が業界に目を光らせ取り締まりを強化し、犬や猫と暮らしたいならば飼育資格審査を導入するとか、官民で協力しアニマルポリスを各地に設置するとか、細かな活動も必要になってきます。

さて、上記のような僕の意見の他にも、様々な優秀な意見をお持ちの愛犬家の方もおられるでしょう。
最終的にはそういうアイデアや考えを集約し、俗に言う「民意」という力で皆で力を合わせ、社会にどんどん警鐘を鳴らし『ペットの常識』を変えていく努力こそが、数年後、数十年後必ず実を結び、日本がペット先進国に仲間入りできると信じて、僕は今後もこの問題に取組んでいきます。

あなたはどうお考えですか?