カンプノウで行なわれたスペインスーパーカップ第2戦バルセロナ対セビージャは、3対0でホームのバルセロナが勝利し、2戦合計5対0となり、バルセロナが12度目の同タイトルを獲得した。ここまで公式戦2試合連続フル出場だった清武弘嗣は、ベンチ入りをしたものの、体調を考慮されてこの試合を欠場した。

 スペインサッカー2016〜17シーズンの最初のタイトルを決する試合の開始時間は、日本では考えられない23時。一番の理由はチャンピオンズリーグ予選と試合時間が重なることが禁止されているからだが、後半が開始する頃には時計の針は24時を指し、バルセロナの地下鉄の最終電車は発車してしまった。

 街の中心まで歩けばゆうに1時間はかかる場所にあるカンプノウ。残された帰宅手段は長い列を作りタクシーに乗るか、息もできないほどぎゅうぎゅう詰めの深夜バスに乗るしかない。それでもカンプノウに集まった7万を超えるファンは、帰宅の時間や方法などを考えることはなくバルセロナが主役のスペクタクルな夜を楽しんでいた。

 バルセロナは放出候補に挙げられていたアルダ・トゥランが2得点と自身の価値をあらためて見せつけただけでなく、リオネル・メッシが格上という言葉がどういうものかを説明する1得点1アシストの活躍でチームを牽引。

 さらにこの試合先発出場を果たしたアンドレ・ゴメスやサミュエル・ウムティティなどの新戦力がチーム戦術にしっかりと適応するパフォーマンスを見せるなど、スペインスーパーカップの優勝という結果だけでなく、多くの収穫を手にした。

 問題はセビージャだ。

 2つのスーパーカップまでのプレシーズンマッチは6戦全てに勝利を重ねており、チームには大きな期待が寄せられていた。だが、レアル・マドリード、バルセロナという世界のトップ5に入るチームとの対戦とはいえ3連敗。ホルヘ・サンパオリ監督は試合後の会見で、「レアル・マドリード戦からの連戦による疲労蓄積が鈍いパフォーマンスの理由のひとつ」と分析したが、それ以上に心配なのは流動的なプレーがまったく見られないチームの完成度にある。

 過密日程による疲労蓄積はもちろん、守備陣に多くの負傷者を抱えベストメンバーをこの2試合は組むことができなかった台所事情など、もちろん考慮すべき点はある。だが、中盤と前線の距離が大きく離れてしまい、連携プレーがまったく見えず、サンパオリのチームの代名詞である高い位置でのプレスからの速攻は、バルセロナの前に形として見せることはできなかった。

 また、選手個々を見てみても、王様としてチームに君臨することでその力を発揮するガンソはこの夜、ピッチ上にいるにはいたが、プレーに参加していたシーンを思い出すことができないほどの出来だった。もう1人の司令塔であるパブロ・サラビアにはボールは回っていた。だがレアル・マドリードの下部組織出身MFは球離れが悪く、味方がフリーでパスを待っていてもエゴの強いプレーを選択し、チャンスを無駄にする場面が目立っていた。

 イェウヘン・コノプリャンカ、マリアーノがサイドからの崩しでチャンスを作り出しても、フィニッシュする選手が見つけられないシーンが何度もあった。また、後半になると前半からのハードワークの影響からガス欠を起こし、パフォーマンスが落ちてしまうという課題も残された。

 タイトルのかかった公式戦で3連敗することは、もちろんチームの雰囲気を考えた上ではネガティブなものでしかない。エスパニョールとの開幕戦までに残された時間も多くはない。

 だからこそ敗戦を引きずることなく気持ちを切り替え、サンチェス・ピスファンで仕切り直しの勝利を手にすること。それがセビージャを今包んでいる重苦しい雰囲気を一蹴するために必要となる。スペインはある意味で単純だ。勝利、結果を残せば、皆がそれまでの悪い結果を忘れて喜んでくれるのだから。

山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi