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by DigitalRalph

脳を部位ごとに分けて部位同士のつながりや働きを表した「脳地図」は、100年以上前から作られてきました。セントルイス・ワシントン大学医科大学院の神経科学者が、何百もの人間の脳のデータをもとに、脳を180の部位に分けた新しい脳地図を作り、脳の各部の形や働きをより正確に把握できるようになっています。

A multi-modal parcellation of human cerebral cortex : Nature : Nature Research

http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature18933.html

Human brain mapped in unprecedented detail : Nature News & Comment

http://www.nature.com/news/human-brain-mapped-in-unprecedented-detail-1.20285

新しく作成された脳地図についてよく分かるムービーは、以下から見ることができます。

The ultimate brain map - YouTube

探検家は、新しい世界を見つける度に地図を作って世界の形を明らかにしてきました。



同様に神経科学者も、脳の部位同士のつながりや働きを明らかにして、脳の構造を地図として描こうと取り組んでいます。



しかし「脳地図を作る」と言葉で言うのは簡単ですが、実際に作るのは難しいもの。



脳地図のベースを作るために、脳の一部について特性や形、他の部位とのつながり、各部の細胞の形を記すのは容易です。



1909年にドイツの神経科学者であるコルビニアン・ブロードマンが作成した初期の脳地図は、「ブロードマンの脳地図」として知られていて、現代の神経科学者も使っています。ブロードマンの脳地図では、脳の各部で細胞の形が異なっている様子が描かれています。





しかしながら、脳のどのような特性に着目するのかによって、完成する脳地図はかなり異なります。神経科学者の間では、脳の部位の総数や各部の機能について意見が分かれています。



今回、セントルイス・ワシントン大学医科大学院のDavid Van Essen氏らのチームは、これまでで最も正確な脳地図の作成に成功しました。この脳地図では、脳を180の部位に分けて描いています。



何百もの脳から得たデータが使われていて、これまで明らかになっていなかった脳の新たな部位97個についても描写しています。



そのひとつが「エリア55b」です。研究チームでは、エリア55bは言語をつかさどる部位だと推測しています。



なぜなら脳が言語を処理する際に、エリア55bが活発に動くためです。



エリア55bと他の部位のつながりを表した図が以下のもの。



ただし、エリア55bのニューロンがどのくらい孤立しているのかは、まだあまり明らかになっていません。



そのため、あらゆるデータを統合して研究することが重要となってきます。新しい脳地図の作成によって、神経科学者はついに脳の各部の境界線や領域をはっきりと定めることができるかもしれません。



脳地図の元となったデータは「Human Connectome Project」にまとめられています。

Human Connectome Project

https://www.humanconnectome.org/