「病気で余命10年のヒロイン」「その事実を隠して交際している恋人」想像力豊かな人であれば、この二つの要素だけで頭にストーリーが浮かぶはずだ。そして、それぞれのストーリーを比べたら、きっと大まかな展開は似通っているのではないか。その意味で、小坂流加さんの小説『余命10年』(文芸社刊)に意外性はないかもしれない。しかし、読み終えた後まちがいなく、はじめに想像していたストーリーは、強烈な読後感の前に霞んでし