『かくかくしかじか』東村アキコ/集英社

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2015年3月24日、今年で第8回目となるマンガ大賞2015が決定・発表された。今年の大賞は『かくかくしかじか』』(東村アキコ)。集英社の『Cocohana』に連載されていた作品で、ちょうど明日25日に最終巻となる5巻が発売予定となっている(あまりにタイミングが良すぎるため、同賞実行委員会では授賞式の日時について頭を悩ませたという噂も)。

東村アキコ作品というと、『ママはテンパリスト』、『主に泣いてます』、『ひまわりっ 〜健一レジェンド〜』といったシュールなギャグ・コメディテイストの強い作品が多い。だが今回の受賞作である『かくかくしかじか』は東村アキコ一流の軽妙なテイストは盛り込まれているものの、あくまでシリアスなノンフィクション作品だ。

物語の舞台は作者の出身地である宮崎。高校時代に出会った「絵」の恩師との思い出を中心にストーリーは展開する──。というと、甘酸っぱい物語が想起されるかもしれないが、この作品の根底に流れるものは「甘酸っぱい」などという生やさしいものではない。おそらくは本人にとって酸っぱく、苦い記憶だろう。エンターテインメント作品として巧みな味つけがされているが、随所から感じ取れるのは本人にとっての後悔と懺悔の念。取り返しのつかない、行き場のない想いが凝縮されたこの作品は、読者にとってもほんのり塩辛い涙の味がする。

これから授賞式の壇上に東村アキコが姿を現す。壇上での彼女は何を思い、何を語るのか。その模様は続報を待たれたし。

<マンガ大賞2015最終結果>
大賞
『かくかくしかじか』(東村アキコ)
80ポイント

2位
『子供はわかってあげない』(田島列島)
66ポイント

3位
 『聲の形』(大今良時)
65ポイント

4位
『僕だけがいない街』(三部けい)
57ポイント

5位
『BLUE GIANT』(石塚真一)
49ポイント

6位
『ボールルームへようこそ』(竹内友)
40ポイント

7位
『イノサン』(坂本眞一)
38ポイント

8位
『僕のヒーローアカデミア』(堀越耕平)
36ポイント

9位
 『王様達のヴァイキング』(さだやす、(ストーリー協力)深見真)
35ポイント

10位
『累』(松浦だるま)
30ポイント

11位
『月刊少女野崎くん』(椿いずみ)
28ポイント

12位
『魔法使いの嫁』(ヤマザキコレ)
20ポイント

13位
『宝石の国』(市川春子)
18ポイント

14位
『ドミトリーともきんす』(高野文子)
8ポイント

(松浦達也)