『エイプリルフールズ 』古沢良太 山本幸久/ポプラ文庫
4月1日公開の古沢脚本映画の小説化

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「デート〜恋とはどういうものかしら〜」(月曜夜9時〜 CX)第8話は、依子(杏)と巧(長谷川博己)がいよいよ結納まで進展。心配された視聴率もアップして13.9%(ビデオリサーチ調べ 関東地区)と、第1話に次ぐ高視聴率を記録しました。杏の着物姿が綺麗だったのも功を奏したのではないでしょうか。あと、やっぱり、バレンタインにまつわる話に情緒がありました。

依子と巧の結納が行われたのはバレンタインデー。これまで一度もバレンタインにチョコレートを誰かにあげたことのない依子でしたが、ふと思い立って、チョコレートを買います。でも、それを巧に渡しそびれてしまい・・・。
そしてそこから、こうもぐずぐずと結婚話を引き延ばしていることには、連ドラの宿命として最終回まで引っ張っているだけではなく、物語としてちゃんと理由があるのだと言わんばかりに、依子は結婚ではなく恋をしたかったのだという展開に転がっていきます。
依子がなぜか涙してしまい、その理由を巧が「君が本当にしたいのは、結婚じゃなくて、恋だからです。本当は人一倍恋がしてみたいのに、恋がどんなものか知りたいのに、出来ないから、ずっと心に蓋をしてたんです。僕と結婚するってことは、もう一生、恋をすることはないってことだから、泣いてるんです」と説明する台詞が胸をしめつけます。
恋愛至上主義を揶揄しているように見せて、やっぱり理念や契約による婚姻ではなく、女主人公が恋する気持ちを大事にしたいという話になっていくのが面白い。好きな人がいるにもかかわらず親の決めた許嫁のところに嫁ぐ女の涙みたいな感じがします。
それと、結婚したら一生添い遂げる固い決意をしている巧たちの真面目さも新鮮。「僕と結婚するってことは、もう一生、恋をすることはないってことだから」
とは当たり前ではありますが、このようにあえて言葉にされると、結婚とはそれだけ重いんだと思い知らされました。

巧は、依子が買って来たチョコに薄々気づきつつも、素っ気なくして、彼女が渡すきっかけを与えなかったくせに、いやにわかった口を利きます。
「(依子が子供のとき)……ご両親がチョコを食べさせあってたのは夫婦だからじゃありません……愛し合っているからです……結婚してなお、恋をしているからです」なんてことまで言う。
巧に自分のもやもやの原因を指摘された依子は、8話の最後、思いきって「私に教えてください……恋というものを」「恋が……してみたいです」と言うのですが、その相手はーーーー
鷲尾(中島裕翔)で、次回、急展開! って感じです。

そもそも、依子に「恋をしてみたいはず」としつこく言っていたのは、鷲尾。自分は振られてしまったけど、巧に、依子に恋をさせてやってくれとまで言ういい人っぷりです。傷心を癒すためにカラオケを歌う姿もキュンとしました。
8話で印象的だったのは、鷲尾をはじめとして、佳織(国仲涼子)と宗太郎(松尾論)の3人の負けっぷり。
鷲尾は1話からずっと、明らかな、かませ犬として何度も何度も依子にぶつかっていきました。佳織も同じポジション。5話のコスプレカウントダウンのキスで巧への気持ちはわかってはいたものの、8話では、彼女がなぜ巧を好きになったかその微笑ましいきっかけもわかります。ぶっきらぼうに振る舞いながら、佳織は実のところものすごく健気な女の子なのです。
そして宗太郎は、目下、妻が家を出てしまっていたことを告白。だから、ニートの巧が結婚の道に向かっているのが気に食わず、鷲尾を焚き付けていたのです。まあ、カワイイ妹の恋も応援してあげたいという兄心もあるでしょう。
こんな3人が、愛や恋が思うようにいかずに右往左往しているところが、従来の恋愛ドラマ以上に感情移入しやすいんです、「デート」の場合。なにしろ、主人公のふたりがあまりにも独特なキャラで、遠くから生態観察しているような気分になりがちなので。
8話の最後、鷲尾と佳織は、これまでの負け戦から逆転するか? という状況になります。いろいろ逆転だらけのドラマなので、鷲尾と佳織に幸せになってほしいと願ってしまいますが、これだけは逆転しないんだろうなあ。そこまで逆転させてしまったらひれ伏すのだけれど。
依子は、自分と巧が「等号」って言っちゃっていますからねえ。
ってことは、お似合いってことに決まっているものでしょうが、彼女にとっての「等号」は、理念が同じってことでしかないんですね、今のところ。
鷲尾から恋を教わって、等号の意味がわかるのでしょうか。
9話は、依子と鷲尾のデートの話。杏がついに眼鏡を外し、美しい姿で登場です。

ところで、もうひとつ、8話のみどころは、子供時代の依子と巧と佳織の子供時代の子役が皆、大人俳優にそっくりなところでした(外観だけでなく、喋り方まで)。依子の子役・内田愛は「ATARU」の堀北真希、「すべてがFになる」の武井咲の子供時代ほか、いろいろな女優さんの子供時代を担当しているくらいで杏に格別似てるわけではないのでしょうが、あの父母娘と3人おそろいっぽい眼鏡と喋り方であそこまで近づけちゃうものなのかと思うと恐れ入ります。
少年の巧も、成人の巧と衣裳が似ているから似て見えるのでしょうか。それにしても、子供のときからあんな時代錯誤ないでたちで本当にモテていたのか? という気もしないではありません。(木俣冬)