黒い猫は英語でブラック・キャット。これがフランス語だとシャ・ノワール、スペイン語だとガトー・ネグロと、日本語や英語とは逆に名詞の後が形容詞となります。このことを頭に入れておくと、2つ以上に分解できる言葉が多数存在します。私たちが過ごす何気ない日常には、英語だけでない外来語も溶け込んでいました。

こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。西アフリカなどのフランス語では気にも留めなかったのですが、中南米のスペイン語は意外と話せるようになったので、名詞の後に来る形容詞に夢中になってしまいました。フランス語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語といったラテン系の言葉は、修飾語と被修飾語の関係が英語と逆。それを頭に入れると、今まで使っていた言葉には、しっかりとした意味があったりするので、それらを一同にまとめてみました。

◆国名・地名

「モンテ・ネグロ(Monte Negro)」はヴェネツィア語で「Monte(山)+Negro(黒い)」が由来。バルカン半島にある旧ユーゴスラビアを構成していた国の一つ。



「カサ・ブランカ(Casa Blanca)」はスペイン語の「Casa(家)+Blanca(白い)」が由来。北アフリカはモロッコ最大の都市。



「シエラ・レオネ(Sierra Leone)」はスペイン語の「Sierra(山)+Leon(ライオンの)」が由来。西アフリカの中では珍しい旧英植民地の国で、首都はフリータウン。隣国のギニアやリベリアとともに、エボラ出血熱の流行で、話題となった国の一つです。



「プエルト・リコ(Puerto Rico)」はスペイン語の「Puerto(港)+ Rico(豊かな)」が由来。カリブ海に浮かぶプエルトリコ島を中心としたアメリカの自治領で、住民の大多数が日常的にスペイン語を使用しています。



「ビヤ・エルモサ(Villa hermosa)」はスペイン語の「Villa(村)+hermosa(美しい)」が由来。メキシコ南部のユカタン半島の付け根に位置する都市で、ラ・ベンタ遺跡公園にある巨石人頭像が有名な場所です。



「コスタ・リカ(Cost Rica)」はスペイン語の「Costa(海岸)+Rica(豊かな)」が由来。メキシコ以南の細長い場所にある国の一つで、首都はサンホセ。



「コート・ジ・ボワール(Cote d'Ivoire)」はフランス語の「Cote(海岸)+de(の)+Ivoire(象牙)」が由来。英語だと「アイヴォリー・コースト(Ivory Coast)」と語順が逆。昨年、日本とワールドカップでも対戦した西アフリカの国です。

同じく「コート・ダ・ジュール(Cote d'Azur)」もフランス語の「Cote(海岸)+de(の)+Azur(青)」が由来。夏季にはたくさんの観光客が訪れるフランスの国際的な保養地。映画祭で有名なカンヌや、F1グランプリが行われるモナコも、コート・ダジュールにあります。

ちなみに、フランス語は母音の連続を嫌う傾向から、de Ivoireも de Azurもエリジオンと呼ばれる用法で短縮されます。

◆菓子、飲物

「ガトー・ショコラ(gateau au chocolat)」はフランス語の「gateau(ケーキ)+au(の)+chocolat(チョコレート)」でチョコレート・ケーキの意味。



「シュー・クリーム(chou cream)」はフランス語の「chou(キャベツ)」と英語の「cream(クリーム)」が合わさった和製外来語。フランス語では「chou a la creme(シュー・ア・ラ・クレーム)」、英語では「cream puff(クリーム・パフ)」と呼ばれるので、日本語の語順はフランス語に影響されていますね。



「バトン・ドール(Baton d'or )」はフランス語の「baton(スティック)+de(〜の)+or(黄金)」が由来。グリコが高級版ポッキーとして、大阪の一部の店舗で販売し、希少価値も相まって人気を博しています。



「ボジョレ・ヌーボー(Beaujolais Nouveau)」はフランス語の「(Beaujolais(ボジョレ地方)+Nouveau(新しい)」という意味のワイン。解禁に先駆けて繰り返されるアナウンスのキャッチコピーは、インターネットで注目されています。



「ブラック・モン・ブラン」はフランス語で白い山を意味する「Mont(山)+ Blanc(白)」を、英語のBlackが修飾しています。福岡では有名なアイスクリーム。二つの言語の形容詞の位置が含まれる便利な言葉です。



「ナタ・デ・ココ(Nata de Coco)」はスペイン語で「Nata(クリーム)+de(の)+Coco(ココナッツ)」という意味。

◆企業、娯楽

「エール・フランス(Air France)」はフランス語で「Air(航空)+France(フランス)」という意味。英語の「アメリカン・エアライン(American Airlines)」や「ブリティッシュ・エアウェイズ(British Airways)」と語順が逆。



「フィアット(FIAT)」はイタリア語で「Fabbrica Italiana Automobili Torino」における4つの頭文字が由来。地名である「Torino」が語尾に来ています。



「ラフォーレ・原宿(La Foret Harajuku)」は、フランス語で「La Foret (森)」と原宿が合わさった言葉。フランス語を意識したのか、原宿という地名は語尾に位置していました。



「ルミネ・エスト(LUMINE EST)」のESTはフランス語で東という意味。ルミネというファッションビルを後ろから修飾しています。



「テルマエ・ロマエ(THERMAE ROMAE)」はラテン語の「THERMAE(浴場)+ROMAE(ローマの)」という意味。古代ローマの浴場と、現代日本の風呂が交差する漫画作品が映画化され、随分と話題となりました。



アメリカの大リーグはテキサス・レンジャーズ、シアトル・マリナーズ、ニューヨーク・ヤンキースと「地名+チーム名」となるのに対し、イタリアのセリエAは、ACミラン、SSCナポリ、ASローマ「チーム名+地名」となるのも英語とイタリア語の文法の違いからでしょう。修飾語と被修飾語の関係が逆です。

◆題名に挙げた3つの言葉

「ダン・デ・ライオン(Dandelion)」は英語でタンポポの意味。ただし、語源はフランス語で「dent(歯)+de(の)+lion(ライオン)」という言葉から来ています。



「パンナ・コッタ(Panna Cotta)」はイタリア語で「Panna(クリーム)+cotta(調理済みの)」という意味。生クリームが使われたイタリアのデザート。「オー・デ・コロン(eau de Cologne)」はフランス語で「eau(水)+de(の)・Cologne(ケルン)」という意味の香水。1709年にドイツのケルンで初めて作られたのが、名前の由来となっていました。

他にも、

・「リオ・デ・ジャネイロ(Rio de Janeiro)」はポルトガル語の「Rio(川)+de(の)+Janeiro(1月)」という意味。

・「カーボ・ベルデ(Cabo Verde)」はポルトガル語の「Cabo(岬)+Verde(緑の)」という意味。

・「クメール・ルージュ(Khmer Rouge)」はフランス語の「Khmer(クメール人)+Rouge(赤色の)」という意味。

だったりします。

◆現地では?

ツーリスト・インフォメーションも、フランス語だと「オフィス・ドゥ・ツーリズム(Office de tourisme)」、フライドポテトもスペイン語では「パパ・フリータ(Papa Frita)」と語順が逆に。こうした修飾語の使い方に注目すると、海外での語学習得が捗ります。

スペイン語の「Carne Higado」は「Carne(肉)+Higado(肝臓)」という意味。注文するとレバーステーキが出てきました。



スペイン語の「Banco de la Nacion」は日本語だと国立銀行、英語だとナショナルバンク。



スペイン語の「Zapato Amarillo」は「Zapato(靴)+Amarillo(黄色)」の意味。



スペイン語の「Pantera Negra」は「Pantera(豹)+Negra(黒)」の意味。



フランス語の「Croix-Rouge」は「Croix(十字)+Rouge(赤)」で赤十字の意味。英語だと「レッド・クロス(Red Cross)」ですから、語順が逆でした。



このような感じで、私たちが使っている言葉には、隠れた意味がありました。

豪華の意味で使う英語の「デラックス(deluxe)」も言葉の由来はde luxeというフランス語。そういう事からマツコ・デラックスさん、「ダウンタウンDX」、「星のカービィ スーパーデラックス」と、何かと名詞の語尾につける私たちの使い方は、フランス語に準じていて間違ってはない気がします。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン

自転車世界一周取材中 http://shuutak.com

Twitter @shuutak)