フジテレビ系ドラマ「デート〜恋とはどんなものかしら〜」オリジナルサウンドトラック 住友紀人 ポニーキャニオンから2月25日発売

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〈遅くなってすみません、009。調べたところ、どうやら003には加速装置が備わっていないようなので〉

月9「デート〜恋とはどんなものかしら〜」(月曜夜9時〜CX)の第5話(2月16日放送)は、ついに、ふたりはファーストキスをするのか? というドキドキの回。
白眉はこの依子(杏)の台詞、そしてコスプレに尽きるでしょう。
契約結婚に当たって3度目のデートで性交渉まで済ませようと、依子は計画しますが、あまりのムードのなさに巧(長谷川博己)がどん引きして、ふたりは仲違いしてしまいます。
巧は、仲直りしようとカウントダウンのコスプレパーティーに依子を誘いますが、紆余曲折あり、新年が明けるぎりぎりに依子がバイクで駆けつけます。

その時の台詞が上記のもの。依子の律儀さが可愛らしく感じられる台詞で、巧もこれには満足したことでしょう。その台詞が気に入ったのか、衣裳が似合っていたことに満足したのか、怒って来てくれないかと思っていたら来てくれたことへの喜びか定かではありませんが、巧は依子に微笑むのです。
アニメのコスプレで真面目なラブシーンなんて、冷静に考えたら滑稽にも思えるのに、ちゃんといいシーンになっているところに作り手の豪腕さを痛感します。
これは、良いふうにも考えられて、真面目なシーンでアニメキャラとして見つめ合う違和感が、35歳過ぎてDTと29歳でSJという、ある方面において成長が遅い者たちなのだということをわかりやすく見せることにひと役買っているとも言えそうです。

いやいや、そんな理屈づけはどうでもよくて、マフラーをなびかせながらバイクに乗って走ってきて、ヘルメットとコートを脱いで、金髪カツラの003としてすくっと立った依子が問答無用にかっこよかった。あおりのカメラアングルも決まっていました。
彼女を迎える009の巧も相当かっこいい。杏と長谷川博己のスタイルの良さとモデル経験がいかんなく発揮されたと言えましょう。ふたりとも足が細くて長くて、アニメキャラのコスプレはこうでなければ、ですね。

さて、009がお似合いの、巧の台詞にも印象的なものがありました。
〈浅倉南は入ってない。あれは恐ろしい魔性の女だぞ〉
巧の理想の女性陣を浅倉南も入っていると勘違いした佳織(国仲涼子)にこう言いますが、あ
たかも実在するように語るところがオタクぽいです。
昨今の実写は、アニメや漫画のネタを取り入れることもかなり増えていますが、脚本家の古沢
良太は漫画家だったこともあるからか、アニメや漫画に対する描写が常に一歩踏み込んでリア
ルな印象があります。この場合は、登場人物が客観的にアニメや漫画を語るのではなく、本気
過ぎて可笑しいという部分で。
それにしても、浅倉南を魔性の女視してる巧、なかなかの批評眼です。

フツーだったら、これで5話の話は終わりにしたいところなのですが、古沢脚本、エピソードがてんこもりで、これだけでは語り尽くせません。
例えば、依子が巧と最後の一線を越えるためにいろいろ準備するエピソード。かなりベタベタで苦笑したいところですが、あまりにもネタを数打ってくるので、その力技にねじ伏せられて、笑うしかないのです。
すっぽんって・・・。まむしドリンク(第3話とのリンクですね)って・・・。YESと刺繍された枕って・・・。かませ犬の鷲尾(中島裕翔)のとことんピエロな感じも・・・。
依子もある種どん欲ですが、古沢良太もどん欲です。視聴者に引っかかりそうなものはどんどん取り入れていきます。おそらく演出の領域もあると思うのですが(第5話は、武内英樹の演出)。こう見えて依子の性欲が強いというのは、映画「愛の渦」を思い出しました。
長谷川がある場面で「ラブ&ピース〜〜」と言うのも、彼の主演映画のタイトルに掛けているのかなと思います。
ほかには、依子の亡くなったお母さん小夜子(和久井映見)が娘にだけ見える設定は、前クールのTBSの日曜劇場「ごめんね青春!」や映画「悼む人」の応用のように思えますし、契約結婚云々に至っては、NTVで放送中の「◯◯妻」と競い合ってる感じがしなくもないですよね。
5話では、NHKの朝ドラ「あまちゃん」で大人気だった、ミズタク(松田龍平)がアキ(能年玲奈)に留守電をいっぱいかけるエピソードのオマージュかと思う場面もありました。
「あまちゃん」といえば、「リーガルハイ」では朝ドラのヒロインを茶化す台詞を書いていた古沢が、今回は朝ドラのエピにオマージュを捧げたのかしら? と思うと感慨深いものがあります。
杏も国仲涼子も朝ドラのヒロインですし(杏は「ごちそうさん」、国仲は「ちゅらさん」)、和久井と依子の父役・松重豊は朝ドラ「ちりとてちん」のヒロイン(貫地谷しほり)の父母役で、巧の母役・風吹ジュンは「ほんまもん」のヒロイン(池脇千鶴)の母役でした。このドラマ、漫画やアニメファンだけでなく、朝ドラファンのツボも突きまくっていますね。
こうなると朝ドラを茶化すわけにはいかなそうです。
今回はラブストーリーや月9的と言われるようなパターンを茶化すことに全力を注いでいるのでしょう。毎回毎回、いかに、恋愛至上主義がバカバカしいかを暴き、依子と巧をすれ違わせ続ける「デート」。これから後半戦、どうなっていくか、古沢の腕の見せ所です。

ところで、最近妙に悪魔化している巧の幼なじみ・宗太郎(松尾論)の左くすり指に指輪がないのはなぜ? 妻帯者のはずなのに。それが彼の悪魔化と関係しているのか気になります。もしかしてエア奥さん???
お正月エピソードの第6話は、2月23日放送。
(木俣冬)