「ユリ熊嵐」7話「私が忘れたあの娘」。銀子の過去、3人の同居生活の予感。今こそ漫画版を読むタイミングです。

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燃え盛る花壇に捨てられた、泉乃純花から椿輝紅羽に向けて書かれた手紙。身を挺して守ったのは百合城銀子だった。遅れて駆け付けた百合ヶ咲るるは叫ぶ。
「銀子はクレちんが大好きなんだよ。だから銀子の『スキ』を無駄にしないで!」
紅羽の新しい「友だち」は、銀子とるるなのだろうか? 紅羽は2人の同居を正式に認め、3人の共同生活が始まろうとしていた。2月16日、アニメ「ユリ熊嵐」の7話「私が忘れたあの娘」が放送された。

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紅羽は母・澪愛の言葉を思い出す。つらいときに何度も思い返していた言葉だ。
「紅羽はあの娘のことが大好きなのよね」「それなら大丈夫。きっとまたあの娘に会えるわ。紅羽が本当に、強く会いたいと思うなら」
しかし紅羽は大事なことを忘れていたことに気づく。「あの娘」とはいったい誰か。あんなに好きだった「あの娘」を、紅羽は忘れてしまっている……。

傷を負い熱にうなされる銀子は、昔の夢を見る。銀子は雪の日に捨てられた、愛を知らない「ヒトリカブトの銀子」だった(ヒトリ+トリカブト=ヒトリカブト)。断絶の日、クマとヒトとの戦争が始まって、銀子のようなひとりぼっちのクマたちが集められた。
ヒトを排除すれば、クマリア様に必要とされ、承認される── 。銀子は「スキ」を求めてヒトを排除し続けるのだが……。

5話で描かれた銀子の過去が、7話ではさらに詳細に描かれている。過去回でもあるし、これまでの状況の整理回でもある。後半戦は、紅羽の忘れてしまった「スキ」、銀子の「罪」、「約束のキス」にスポットが当てられていくはずだ。

さて、これまでEDでしか見ることができなかった、銀子・るる・紅羽の3人が仲睦まじく生活している光景。「実はEDのイラストは銀子の妄想なのでは?」という不安すら抱いていたが、7話でようやくうっすらと実現した。
ただし、不穏なCパートや、ラストに突き進んでいくであろう展開を考えると、キャッキャウフフな幸せ同棲生活は見られない可能性が高い。
その需要を満たすのが森島明子による漫画版『ユリ熊嵐』だ。

漫画版は、アニメ本編とは大きく展開が違う。
学園は共学(この世界には男がいる!)、紅羽は「透明な存在」だが、意味は「地味で存在感が無く」「存在してもしてなくても同じ」。「排除の儀」はない。
紅羽は、転校生の銀子が「人間ではなくて、クマなのでは?」という疑いを抱く。紅羽は男性が苦手で引っ込み思案なところがあったが、銀子と友だちになったのをきっかけに、眼鏡を外して明るく可愛くなる(百合漫画や少女漫画ではおなじみの展開だ!)。純花らしきキャラクターは登場するが、紅羽の特別な存在ではない。
るるは、銀子を追いかけて転校してきたストーカー。紅羽と寮が同室になった。まっすぐな存在だがトラブルメーカー。両親とはあまりうまくいっていないようだ。

漫画版『ユリ熊嵐』は、銀子とるると紅羽、3人の学園生活と深まっていく絆、そして銀子の心の闇を探っていくような内容になっている。
アニメでは親のいない銀子。漫画版では母がいるが、放任主義でいびつなキャラクターとして描かれている。
「銀子の心は 銀子のママが…女王様が作ったクマの世界に閉じ込められてるの 透明な嵐の中でずっとひとりぼっちなんだよ」
アニメ版でも漫画版でも、銀子は愛を知らない子ども。そして紅羽は愛を知っている子どもだ。

アニメの前半戦、漫画版をいろいろな人に「面白いから読んで!」と勧めていた。が、「ネタバレになるとイヤだから……」という反応を多数もらってしまった。アニメも後半戦に突入した今、自信を持って言える。
漫画版は、根っこの部分は同じだが、けして今後のネタバレにならないもうひとつの『ユリ熊嵐』だ。銀子の母と箱仲ユリーカ(漫画版では銀子の叔母)の大人百合な関係、おまけ4コマなど、漫画版ならではの見どころも多い。

(青柳美帆子)