サウサンプトンとは3年間の契約延長で合意。吉田の新たな戦いが始まる。 (C) Getty Images

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「日本は常にアジアのチャンピオンでなければいけない。そんなプレッシャーのなかで勝つのは非常に難しい。ただ、自分としては(サウサンプトンを離れる)リスクを冒して行く。アジアカップは勝たないと意味がないんです」
 
 アジアカップ合流直前、1月1日のアーセナル戦に2-0で勝利した後の取材エリアで、吉田麻也は決意をこう口にしていた。
 
 シーズン前半戦は怪我の影響もあってベンチ暮らしが続き、ピッチの外から戦況を見守る日々が続いた。しかし守備陣に負傷者が続出したマンチェスター・シティ戦(11月30日の13節)を境に状況が変わった。
 
 このマンチェスター・C戦を皮切りに、吉田は途中交代を含め8試合中7試合に出場。そのうち3試合は先発フル出場だった。
 
 そんな矢先でのアジアカップ参戦──。「試合に出続けることが一番大事。試合をこなしていけば自信もつくし、もっともっと良くなる」と語っていた吉田は、やっと追い風が吹き始めたタイミングでサウサンプトンを離れることに、もどかしさを感じてもいるようだった。
 
 吉田にとって幸か不幸か、不在中の1月もサウサンプトンは快進撃を続けた。FAカップは4回戦でクリスタル・パレスに不覚をとったものの、3位につけるプレミアリーグではマンチェスター・ユナイテッド(1月11日の21節)とニューカッスル(17日の22節)に連勝。とりわけ、敵地オールド・トラフォードでマンチェスター・Uを撃破した一戦は、攻め込まれながらも忍耐強く守り抜いて1-0の勝利につなげ、好調を維持するチームの強さが本物であることを証明した。
 
「チャンピオンズ・リーグの出場権獲得(4位以内)も夢ではない」というロナルド・クーマン監督の言葉は、十分に現実味を帯びてきている。
 
 ただその一方で、ディフェンス陣には不安が持ち上がっている。
 
 マンチェスター・U戦でレギュラーCBのトビー・アルデルワイレルドが負傷し、2月中旬まで離脱することになったのだ。その代役を務めるフロリン・ガルドスは安定感に欠け、前述のクリスタル・パレス戦は警告を受けたこともあり、前半だけで交代を命じられている。
 
 このタイミングで、吉田はチームに再合流する。
 
 普通に考えれば、2月1日の23節スウォンジー戦で主将ジョゼ・フォンテとCBコンビを組むのは吉田だろう。現状CBの3〜4番手に甘んじる日本代表DFとしては、このチャンスを生かし、レギュラーの座を掴みたいところだ。
 では、そのためのポイントは――。
 
 イングランドでは、他国に比べてCBに堅実で力強いプレーを求める傾向が強い。ロングボールに競り負けない高さ、1対1で当たり負けない強さ。敵に寄せるかステイするか、その判断の正しさも重要だ。要求される動きを簡潔に表現するなら、「来たボールを確実に跳ね返すこと」だろう。
 
 もちろん、ビルドアップやラインコントロール、ボールテクニックも最終ラインを支える上で大事な要素だが、それらは敵をねじ伏せる力強さやミスをしない堅実さという下地があってこそ評価されるプレーだ。とにかく、敵の攻撃を真っ向から押さえつけることが重要視されるのである。
 
 かつてはアーセナルでプレーした元イングランド代表のソル・キャンベル、現在ではウェールズ代表でスウォンジーのアシュリー・ウィリアムズといった、まるでラグビー選手のような屈強な肉体を持つDFが高く評価されることでも、そうした傾向がうかがえるだろう。
 
 実際、吉田が最も評価されたのは、加入1年目の2012-13シーズンだったように思う。ナイジェル・アドキンス監督(当時)率いるサウサンプトンは、開幕直後から最下位に低迷。すると、従来のポゼッションサッカーから離れ、“引いて構える”守備重視のプレースタイルに舵を切った。