青山裕企の『さよなら、ブルマ。』は、現在絶滅したブルマを、古い学校を舞台に撮影していく写真集。

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ブルマは、変な衣装です。
ほとんど下着みたいで、実際はみ出ることもある。身体のラインぴちぴちで、思春期の女の子が着用するにはあまりにも恥ずかしい。
今は、ブルマは絶滅。20代だと、ブルマ自体現実には見たことない人が多いでしょう

青山裕企の写真集『さよなら、ブルマ。』は、ブルマを着用したモデルが全ページに渡って収められています。
彼の写真は、あまり顔を写しません。いわゆる「モデル写真」になっていない。
代表作『スクールガール・コンプレックス』のように、女子(学校で呼ぶ「女子と男子」の意味ね)の日常を盗み見るような視点が非常に多い。
『さよなら、ブルマ。』はこの路線を踏襲しています。

ぼくの好きな写真の一つに「倒立の練習」があります。
見開き。右ページにある体育館のマットの上で、ブルマを履いた女の子二人が倒立の練習をしています。顔は角度的に写っていません。
左側のページに至っては、跳び箱と空間が写っているだけ。
体育館の扉を横にガラガラと開けた時に、見えちゃったかのようなこの一瞬。
ものすごいドキドキを感じる。好きとか惚れるとは別。
あっという間に、中高生男子の気持ちになります。
学生時代にブルマ見たことない人でも、です。

「仲良し」という写真では、上の階にいるブルマの女の子二人が、話しているのを見上げています。
昼休みなのか、体育の時間の前なのか。
多分この二人の女の子はクラスメイトで、だけどぼくとはほとんど話したことはないんだろう。
ふと見上げる。とても楽しそうにしている二人。
紺のブルマ。白い体操着、ほんのちょっとだけ見える、太ももの肌色。

太ももアップの写真も多く、フェチ写真集なのは間違いありません。
しかしそれ以上に、頭の中で想像がかきたてられます。
ブルマの女の子とおなじくらい、背景になっている学校が写真の主役だからです。

タイトルの「さよなら」。
文字通りです。もうファンタジーでしか会うことがないであろう、珍妙な衣装文化、ブルマ。
ぶっちゃけ仮に自分に娘がいたら、ブルマなんて履かせたくないですよ。わざわざ性的な視線に晒したくない。ハーフパンツでいいじゃんよ。色々ブルマをめぐる事件も多かったし。そりゃ絶滅しますよ。あ、スカートの下に履かせるにはありかな。

けれど、そういう理屈じゃないでしょう?
ただの性欲かもしれないし、ひそかに恋をしたあの子の思い出かもしれない。

ただし、ここに「ぼく」はいない。
ブルマの同級生たちは、「ぼく」には決して微笑みかけない。

青山裕企 『さよなら、ブルマ。』

(たまごまご)