『恋愛3次元デビュー  〜30歳オタク漫画家、結婚への道。〜』(カザマアヤミ/双葉社)
純粋培養のピュア系痴女とか、もう、よくわからない。

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『恋愛3次元デビュー』は、漫画家・カザマアヤミの婚活を描いたエッセイコミックだ。男性経験ゼロのオタク女子の恋愛。道のりの険しさは想像に難くない。

作者と2次元恋愛の出会いは、小学校3年生の時。あっという間に「りぼん」の世界にどっぷりひたる。
目が合えば恋のはじまりを予感。男子が自分をからかうのは好きの裏返し。
ヒロイン気取りの勘違いは、10代前半の女子ならめずらしいことではない。
しかし、思春期になって3次元の恋愛に目覚めるかと思いきや、進学先は女子中、女子高、女子大。10年に及ぶ男のいない生活。2次元からはなれるどころか、漫画家をめざしてズブズブと漫画沼にはまっていく。

大学を卒業し、晴れて漫画家になったカザマ。連載を持って一人暮らしを満喫し、2年ほど過ぎた頃、ある変化がおとずれる。
仕事が立て込み友人との約束はキャンセル続き。夕方起きて朝までファミレスの生活。誰ともしゃべらない日々。
……寂しい。
手のモデル人形で自分の頭をなではじめた頃、思いが爆発する。
「もうやだ! 無理!! 2次元だけじゃ生きていけない!! 3次元でふれあいたい!! 1人はいやだ!! すぐそばにいてくれる人が欲しい!! 親も兄弟も友達もずっといてはくれない! ずっといてくれる人がいい!!」

立ち上がったカザマは、まずモテ本を読んで大事なことをノートに書き取る。次にやったのは「彼氏が欲しい!!」と声に出すこと。
これは、2つの重要な意味を持つ。
まず、オタク女子は女としての自己評価が極端に低い場合が多い。ダサくてムサい自分が彼氏をのぞむなんておこがましい。デートの約束をしても、服を買う店に行く服がない。「私なんか…」というネガティブ思考をひっぺがす必要があるのだ。
もう1つは、羞恥心の壁を突破すること。“えっろいもの=いかがわしい”という家庭環境で育った彼女にとって、彼氏が欲しいなんてビッチの考え。欲望はあらわにしてはいけないし、そもそも表に出すのは恥ずかしい。しかし、それを避けては通れないのが恋愛だ。

初心者のカザマは、何度となく失敗を繰り返すが、その度に「次だ次!!」と立ち上がる。
そして1人の男性と出会う。漫画家の紺野あずれだ。共通の趣味をきっかけに、月1〜2回スカイプで話をする仲になった2人。
次第に紺野を意識しだしたカザマは、ある日のスカイプで紺野にある質問を投げかけた。

カザマ「紺野さん あの… 私 前から聞いてみたかったことがあるんです」
紺野「ほう」
カザマ「ちょ ちょっと言いづらいんですけどっ」───
紺野「大丈夫ですよ 何でもどうぞーー」
カザマ「じゃあお言葉に甘えて…」

男性の皮ってどうなってるんですか?

紺野「え? それってどういう…? 何のこと…?」
カザマ「い いやーだからつまり」

男性器の皮のことです

豪速球というか暴投。しかし、紺野は丁寧に説明する(ほぼフセ字でナニ話してるかわからないけど)。
この時のことを紺野は「面白かった」と振り返り、カザマは「好きになった」と語る。

3次元の恋愛は付き合いはじめてからも大変。
「恋愛って嬉しいことも多いけど不安もすっごい多いから心がジェットコースター状態で落ち着かなくて そのせいで色々やらかしてしまって自分がこんなにアホな面や醜い面を持ってたって知りましたね… 知りたくなかった」
初デート、初体験などではネガティブ思考が再び噴出。悩みすぎて「紺野さん 私で勃ちますか」と本人にきく始末。しかし、カザマの行動は問題解決のために2人でのぞむことにつながっていく。婦人科検診で排卵していないとわかり落ち込むカザマを見て、自らの不妊検査に行った紺野にはちょっとしびれる。
カザマアヤミ
『恋愛3次元デビュー』(紙本)
『恋愛3次元デビュー』(kindle)

(松澤夏織)