図1 結婚相手としてOK?

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女性が結婚相手に望む条件を「三高」と謳ったのは、もう過去のこと。今、求められているのはどんな男なのか。

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調査概要/楽天リサーチの協力を得て、インターネットを通じて従業員数300人以上の企業に勤務する30〜49歳の秘書100人より回答を得た。集計結果を独自の方法でポイント化してランキングし、各項目で「死んでも結婚したくない」の割合が多かったものを「死んでも結婚したくない」に分類(以下、「結婚は躊躇する」「結婚してもいい」も同様)。調査期間は13年8月2日〜5日。

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■出世する男がモテるのか?

ドラマ「半沢直樹」がサラリーマンの心を鷲づかみにした。ドラマで描かれる「社内の権力闘争」のドロドロぶりはリアルで「日曜の夜に仕事での嫌なことを思い出してブルーになる」「パワハラ経験のある人は、机をバンバン叩いて嫌みを言う上司のシーンは見ないほうがいい」という意見がネットに踊った。

ここで疑問に思うのが、なぜ男性はそれほどの思いをしてまで「出世したい」のかということだ。それは「出世すればすべてが手に入る」と思うからではないか。出世すれば地位もお金も手に入り、さらにモテる……。それが本当だった時代は確かにあった。しかし、それは今でも同じなのだろうか。

今回、お金も地位もあるエグゼクティブを間近に見ている一流企業の秘書100人にアンケートを取り、「結婚したくない男」像を明らかにした。結果は意外にも、「すでにお金や地位だけではモテない」というものだった。『部長、その恋愛はセクハラです!』(集英社新書)という本があるが、その中では、本気で恋愛していたはずなのに、相手の女性にとってはセクハラだったというケースが多数報告されている。女性は上司の誘いに逆らえず、イヤイヤ従っていただけなのに、上司は「金も地位もあるオレ」が、よもや女性に嫌がられているとは思いもしなかったということだろう。読者の男性諸氏が、このような不幸な勘違いからセクハラで訴えられることがないよう、「地位やお金があっても、女性たちが嫌がる」男像を徹底的に解明したい。

アンケートでは、「属性」「家庭、お金」「外見」「趣味、嗜好」「女好き度」「話し方」「職場の態度」の各項目について、「死んでも結婚したくない」「結婚は躊躇する」「結婚してもいい」を選んでもらった。

まず図1「結婚相手としてOK?」を見るだけで、すでに三高は神話となったことがわかる。女性たちは「学歴」や「大企業」というブランドよりも、「実」を重視していることがわかった。実とは「安定した収入を稼ぐ正社員」のこと。ボーダーラインは年収300万円以上の正社員で、正社員であれば学歴は問わない。小さな会社でもかまわない。男性が思うほどに高望みではなく、現実に合わせて「結婚相手の条件」もサイズダウンしている。非正規や小規模の自営業、フリーランスは安定性の欠如から敬遠されるようだ。高学歴フリーターなどは最も嫌われる。大学や企業のブランド力はほとんど通用しなくなっているのだ。

月間100万PVを誇る、経済から恋愛まで雑感を綴るブログ「金融日記」の藤沢数希さんは、ウェブサイト「AM(アム)」のインタビューで「僕の周りは、年収1000万円以上の人が多いですが、(中略)女の人にモテている、という感じは全然しませんよ。年収が上がると、女の人と簡単に寝られるようになるかといったら、多分、そんなことは全然ないんですよ」と話している(2013年7月24日)。

年収、学歴に頼れないとなれば、男は何をモテの基準にすればよいのだろうか。

図2の「家庭、お金」で「死んでも結婚したくない」に挙がったのは、「ギャンブル」「浪費癖」「借金」など家庭の運営に支障があるものに加え、「マザコン」「育ちの悪さ」「食べ方が汚い」など。毎日を一緒に過ごす結婚生活という現実を考えると、「生理的にイヤなものは排除したい」という気持ちと、ギャンブルや借金など「生活が立ち行かなくなることは困る」という生存本能が優先されることになる。育ちは今さらどうにもならないが、「お里が知れる」と言われてしまうのは、ちょっとした所作やマナーの悪さから。所作や食べ方は努力次第でいくらでも改善できる。まずは自分の振る舞いを思い返してみよう。

■チビ・ブサイク・デブでも問題なし

「イケメンじゃないとモテない」と思っている男性は多いだろうが、図3「外見」の結果はまったく違っていた。「小太り」「背が低い(160センチ台)」「安物ばかり着ている」「ファッションセンスがない」は結婚OK。「明るいブサイク」は最も「結婚してもいい」。チビ・デブ・ブサイク・ダサイを、女性たちはまったく問題にしていないのだ。安物ばかり着るダサイ男よりも、嫌われるのは高級ブランドに身を包んだナルシスト。それよりも「不潔っぽい」のはさらにNGで、2位。「ホスト系の髪形」「バーコード頭」も上位に挙がった。男は外見に妙に凝らずに、清潔にこざっぱりしてさえいれば好感をもたれるのだ。

また、明るいブサイクは好まれても、「陰気なブサイク」はNG。顔の造作そのものよりも、印象が大事ということだろう。「態度が粗暴」が1位に挙がったのも同じ理由からと思われる。さらに、小太りはOKでも「かなりのデブ」はNG。これは「口臭や体臭」「不摂生を想像させる顔色」と並んで、健康リスクを感じさせる要素。そろって上位7位までに入っている。この時代、見栄えよりも「健康」であることが重視されているのだ。

■「無口で不器用」は男らしくて素敵?

図4の「趣味、嗜好」部門では、同じく健康リスクを感じさせる酒やタバコの「過度の摂取」が、「死んでも結婚したくない」に挙がっている。結婚相談所では「年収を上げるより、禁煙」するほうが、相手候補が増えるという結果がある。酒に強いことや、タバコをカッコよく吸う姿が「男らしい」と思われたのは昔の話。健康リスクの因子を抱える男性は夫失格ということだろう。何しろこの厳しい時代、「長く壊れないように働いてもらわなくてはならない」のだから。

図5「女好き度」のランキングは、「死んでも結婚したくない」という項目が、全カテゴリーの中で最大の割合を占めた。「出会い系好き」や「ロリコン」は1位、2位にランクイン。図4「趣味、嗜好」で2位だった「アブナイ趣味がある」も、ひょっとしたら、ロリコンなどのように「逮捕されて社会的地位を失う」リスクに直結するからだろうか。

「女を値踏みする」「女にだらしない」のもダメ、しかし「女に尊大な態度や卑屈な態度をとる」のもダメ。女性たちは、男性が女性にどう接するかを厳しく観察している。「PCにエロ画像を大量保存している」ことも「結婚を躊躇する」要因になるので、職場のPCの中身などには気をつけてほしい。同僚と何気なくした会話から、自分の素行は女子社員にかなり知られていると思ったほうがいい。合コン好き、キャバクラ好きも「死んでも結婚したくない」に入っていることをお忘れなく。

しかし「女にモテる」のは「結婚してもいい」に入っているので、「自分からよその女に行くのは困るが、女から来るのはOK」ということなのだろう。ただし、来る者拒まずでいると、4位の「女にだらしない」に入れられてしまう危険があるのでご注意を。

また女性はコミュニケーションに関することには、非常に厳しいジャッジをしているのが特徴的だ。図6の「話し方」では、「キレやすい」「嘘をつく、言うことがコロコロ変わる」「悪口・陰口・愚痴が多い」「下品な笑い方や話し方」「反論が多い」「マイナス思考」が「死んでも結婚したくない」にランクイン。図5「女好き度」の次にNG項目が多い。「話し方」は唯一、「結婚してもいい」に選ばれた項目が一つもなかったカテゴリーだ。「自慢話が多い」「説教好き」などもすべて「結婚を躊躇する」に入っている。「仏頂面で話しかけにくい」のも嫌われる。男は黙って……は、もう通用しないのだ。無口な高倉健さんのような「不器用」タイプが駆逐されていくのも、時代の流れなのかもしれない。

(ジャーナリスト 白河桃子=文)