五話でだんだん明らかになってきた『キルラキル』ワールド。笑えるシーンすら意味があるんじゃないかと思えてきて落ち着かないよ!

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前回の『キルラキル』四話は、ギャグとして面白かったです。
だが、ぼくはシリアスな5話の方が笑った気がします。
一体スタッフの正気とはなんなのか。

だっておかしいよ、なんだよ組織名ヌーディストビーチって。

あれ……なんかデジャヴ……。はっ、そういえば『トップをねらえ2!』でトップレスという単語がありました。
あれを聞いた時も「なんだそりゃー」と思ったのですが、トップレスとは「超(トップがレスしている)能力」のこと。
……もしかしたら「ヌーディストビーチ」には深い意味があるんじゃないかと、思って仕方ないのが、このアニメの怖いところです。
でもでも、突っ込ませて。「裸のヌーディスト」はちょっとおかしい単語過ぎやしませんか。
いやだがなあ……。

意味があるのか無いのか全くわからない。まずはわかるところからほどいてみます。

●鬼龍院皐月の学園支配は全国に及んでいる
この作品の中の日本がどうなっているのか、というのは今まで全く描かれていません。
今回はじめて、それが明らかになりました。
「鬼龍院皐月の全国学園支配も、残るは関西だけとなった」
鬼龍院家の動向を見張るため、本能字学園に教員として潜入している、美木杉愛九郎が言った言葉です。
このセリフから重要な事が2つわかります。
一つは、鬼龍院の支配はすでに広がっているということ。
二話でテニス部が北海道遠征に行く予定でしたが、あれこそが支配のコマを進める作業だった可能性が高い。ちなみに相撲部が行きました。
もう一つは、鬼龍院家ではなく、皐月様の支配だということ。
以前の純潔(皐月様の神衣)を着たシーンの会話だと、皐月様の母親は純潔の持ち出しを禁止しています。皐月だけが鬼龍院家ではないはず。(ただし禁止されているから母親が生きているという保証もない)
なのに「皐月による支配」というのはどういうことなのか? 父親は? なぜ皐月が支配権を握っているのに、「一族」と呼ばれる人達は出てこないのか。
謎が明かされると同時に、一気に謎が増えました。
セーラー服とツメエリの軍事性を皐月は話していますので、支配は日本国内に現時点では限っていると考えられます。

●浮かび上がる勢力図
「神衣をもって鬼龍院の野望を阻む、それが纏博士の意志であり、我々ヌーディストビーチの選択した道だ」
これも美木杉のセリフです。ここから色々なことがわかります。

まず「ヌーディストビーチ」はこの二人だけではなく、数多くいるということ。
「本部に知れれば、お前の装備はすべて没収されるぞ」という発言もあるので、大きな本部が存在しているのがわかります。
特にヌーディストビーチ全員が神衣の存在について知っているということは大きなポイント。
そもそも纏博士とヌーディストビーチはどのくらい深いつながりなのか、纏博士はヌーディストビーチだったのか、というところはわかりません。
しかしこの発言によって、なぜ美木杉が神衣・鮮血が生命戦維でできていると知って流子に説明できたのかがわかります。

ヌーディストビーチは「神衣が生命戦維で出来た切り札である」ことだけはみんな知っている。
ただし生命戦維の秘密を知っているのは鬼龍院一族と纏博士だけで、だからこそ纏博士が殺されていることは注意したい点。
纏博士ありきで後からはじまったグループなのか、纏博士もグループの一員だったのかによって、ヌーディストビーチと鬼龍院一族の距離は変わります。

次に、ヌーディストビーチの中において黄長瀬紬は異端な存在だ、ということ。
基本的にヌーディストビーチは、鬼龍院一族の横暴に対する手段として、纏博士の作った神衣・鮮血とそれを着る娘の流子に期待をしています。
その中で唯一、神衣が危険だということを主張し、積極的にそれを潰す方向で実力行使しているのが黄長瀬。
本部は彼がそういう活動をしているのは現時点では知りません。
知れたら装備が本部に没収される……つまり黄長瀬の持っていた数多くの武器は、ヌーディストビーチが開発した物だというのもここで明らかに。

美木杉はというと、纏博士の意志を受けつぎ、流子が服と出会うようにうながし、方向修正をしながら流子が戦って強くなれるよう誘導しているのも見えてきます。
二話でなぜか当たり前のように、神衣に血を流す赤手甲を流子に渡していますが、これは彼女が神衣を使いこなせていないので、その補助にするため作ったか、纏博士から預かったものなのがわかります。
(ちなみに皐月様の純潔は、幼少時の着る前から血を流すシステムが付いています)
また、今美木杉はあえて手出しせず(ヤバくなったのを見て身を乗り出すシーンもあるので戦闘能力は高い可能性大)、拙い流子をあえて流しています。
これらは流子が鮮血とともに強くなってくれることを期待していると見ることができます。
ある意味、悪く言えばうまく利用している。
黄長瀬に「纏君に手を出さないでくれ、大事な時期なんだ」というのも、あえて流子を成長させているから。これはヌーディストビーチの意志のためです。

これで勢力図がはっきりしました。

・鬼龍院一族
 一族と言っているが、現時点では皐月しかいない。日本は関西以外征服済み。生命戦維の秘密を知っているらしいが、皐月様は知らないようなので、他にも一族はいるはず。とにかく現段階では、実態が何もわからない状態。

・ヌーディストビーチ
 鬼龍院一族に対抗するため生まれた組織。流子が神衣と出会う前から美木杉が学校に監視するため入っているので、最低でもその前からある。神衣を着た流子が対鬼龍院一族への切り札になると考えている。いま出ている組織員二人はなぜかやたら脱ぐ。纏博士との関係もまだ不明。

・黄長瀬紬
 ヌーディストビーチの一員だが、神衣を危険だと考え流子を攻撃している。本部にはまだばれていない。以前生命戦維の開発に直接関わっていたことを示唆する描写あり。生徒会からは「反制服ゲリラ」と呼ばれている。髪の毛の一部(モヒカン)がなぜか赤い。

・纏流子
 無所属。ただ皐月様をぶっ飛ばして、父親を殺した犯人を突き止めたいだけ。それ以外の政治的な事柄には一切関心は、今のところない。髪の毛の一部がなぜか赤い。

しばらくはこれ以上増えないと思われますが、うーんどうでしょう。
おそらく鬼龍院一族が見えてきた時に、一気に明らかになりそうです。
ホント困るんだよこのアニメ。全部伏線なんだもん。

●反制服ゲリラ、華麗に舞う
面白いのは反制服ゲリラの黄長瀬の戦闘術。
彼が繰り出すのが、糸巻きの爆弾、チャコペンのミサイル、針を打ち出すミシンの形をしたネイルガン的な銃、あとよくわかんないけどアイロン。
全部裁縫に関係があるものです。
ちなみに美木杉が使うのはまち針。黄長瀬の使う「動く」ものと異なり、とめるためのものです。
あと裁縫に使うのは「裁ちばさみ」……おや?

彼の回想シーンで、白衣を着て生命戦維の実験をしている光景が描かれました。
邪推ですが、以前出てきた裁縫部と随分似ている気もします。
そこでは一人の女性が神衣に飲み込まれ、取り込まれる(?)様子が描写されます。
彼は「服に裏切られた」と言っています。鮮血のことを「生命戦維は寄生虫だ!」とも言っています。

この服に裏切られた女性は、多分「きぬえさん」。美木杉と黄長瀬の発言で出てきただけなので、漢字は不明。
彼女は「服は敵じゃない」と言っていました。なのに服によっておかしなことになってしまった。

まず「寄生虫」という発言。自分に有利か不利かを見定めて生命戦維は勝手に動くと、黄長瀬は主張しています。
生命戦維に彼女が「殺された」のか、エヴァンゲリオンのように「取り込まれた」のか、定かではありません。
少なくとも、生命戦維の服自体が、人間をどうにかしてしまうほど、意識を持った脅威を持った存在なのは間違いない。
ではなぜ、あえて「服は敵じゃない」という人間が服に取り込まれてしまったのか。
黄長瀬視点だと、服に対して味方だという考え方、好意的な人間ほど、服が利用しやすいからだ、と言うことらしい。

仮にそれで、女性が取り込まれた(?)のなら、なぜ流子はそうならないのか?
これは黄長瀬の疑問がわくのも当然。まして黄長瀬は鮮血の声も聞こえませんし、挙動もちゃんとは見えない。
しかし今回、強力な鮮血の、流子を守りたいという意志が、声にはなりきっていませんが感覚的に黄長瀬に伝わります。
こうなるとさらにおかしい。なぜ黄長瀬に、一部ではあるけど声が伝わったのか。
どんどん生命戦維の謎は深くなります。

考えられるのは、「鮮血は特別だ」と言うこと。
それ以上は全部推測の意気を越えないのですが、少なくともヌーディストビーチのデータにある生命戦維の服の中ではイレギュラーなのは間違いない。
果たして、服は敵なのか、味方なのか?

●マコの立ち位置
今回はアホの子だと思っていたマコの一面が見える回でもありました。
満艦飾家で流子が鮮血と会話しているシーン、確かに声は流子にしか聞こえないけど、そのへん家族気にしないんだと思っていました。よくわからないもの食べるし。
ところが実は、気味悪がっていたのね、満艦飾家。
「ちょっと変でも受け入れようよ、わたしたちだけは」
マコにそのセリフ言わせちゃうんだ?!

視聴者からは「しゃべる服と会話する流子が正常で、めちゃくちゃな生活と理論で暮らす満艦飾が異常」に見えます。
しかしこの世界の視点からだと「服としゃべっている流子は多くの人から見て変で、めちゃくちゃに暮らしている満艦飾家が正しい」という理屈になっている。
服がしゃべるのが見えるか見えないかを利用して、この世界の価値観が相対的にひっくり返っているんです。ひっくり返されている。

「いつもコソコソ話しかけてる、気味が悪いでしょ? うちの家族もみんな気味悪がってる。でもそれが、服を一着しか持ってない人なの」
このセリフは秀逸。いや笑えるんですが、この世界の価値観がわかる。
一話では美木杉に、マコはそういうやつだから扱いされていました。少なくとも、流子と美木杉の視点は視聴者目線寄り。
流子目線で見て呆れるくらい、この世界は根本から視点が狂っています。そこに、別からの視点=マコのスーパーマシンガントークタイムが入るとわけがわからなくなってしまうような、わかってしまうような、変な状況が生まれる。

もちろん、この世界の人間が全員マコ理論ではないです。
「私は今まで頭の中にしか友達がいなかった。でも流子ちゃんに会って、本当の友だちができた!」
マコぼっちだったのか……これも新事実。

となると、視聴者=流子目線と、キルラキル世界意識(満艦飾家含む)、この全然違う価値観を結ぶ糸になっているのが、マコのマシンガン理論かもしれません。
4話でおかしな理屈をこねていたマコを、蟇郡が認めたシーンも関わってくると思います。
ある意味最もアホ(褒め言葉)だと思われていたマコが、意外にもきちんと「これはおかしいでしょう?」と言ってきたこと、自分が友達が頭の中にしかいなかったことを明言した。この子、ちゃんと自分がどういう状態なのかわかっているんです。天ぷらになるのはわかってなかったけど。
まーだわかりませんが、これはマコが、このクレイジーな世界をつなぎとめる、最もクレイジーで最も冷静な、まち針的存在になるかもしれない。

今回はほんとネタ盛りだくさんで、文化部が生物部、落語部、百人一首部、園芸部とあっという間にやられたり(園芸部は悪く無いと思う)、蛇崩と皐月様の信頼関係がただならぬものだったり、前回に続いて今回もJ・シュトラウス二世かよ!(トリッチ・トラッチ・ポルカ)とか、物理法則を超えすぎる片裁ちばさみとか、ツッコミどころ見どころ本当に多すぎる。
もう何もかも全部伏線に見える!怖い。

ぼくがギョッとしたのは、男子トイレで流子の腹に、黄長瀬が蹴りを入れていたシーン。
何も考えずゲラゲラ笑っていたい作品なんですが、真剣なシーンは急にシャレにならないくらい痛々しいこと平気でやるので、油断ならない。

ところで4話で蟇郡が、寝る時は裸って、やっぱり……そういうこと?

(たまごまご)