ハード、ソフト、名物プログラマーや周辺機器まで特集した『80年代マイコン大百科』佐々木潤/総合科学出版

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僕は1982年生まれの31歳なんだけど、年上の人たちが楽しそうに語るマイコンの思い出話が、いまいちピンとこない。

マイコンブーム中には小学生になっていたけど、僕は「温度を上げると色が変わる気持ち悪い人形」を集めたり、いかにナワトビを蛇のようにしゅるしゅる動かすか、などの研究に多忙だったので、マイコンなんてのがあるなんて知らなかった。

しかし「X68000」、「PC-9800」、「FMタウンズ」など、機種名を何かで見かけるたびに、不思議と胸がときめく。何なんだこの気持ちは。もしや前世がマイコンと…いや違う、もう小学生だったんだってば。あと、マイコン「と」って何だよ。


『80年代マイコン大百科』は、マイコンブーム当時のおよそ10年間、ゲームを中心にマイコンが次々と急速な発展を伴いながら発展していった軌跡を、うまく振り返った本だ。ハード、ソフト、雑誌をメーカーや年代ごとにまとめ、豊富な雑誌広告などの資料とともに解説している。

「マイコン」ってのは要するに、パソコンと同じだと思っていいんだと思う。ただ当時は、機種ごとにOSが違ったり、対応してるゲームが別々で、移植されてても「あの機種ではこのゲーム、ハードの同時発音数の都合で、音楽が貧弱なアレンジになってる」みたいなことがあった。だからどの機種を買うかが重要で、情報誌なんかも盛り上がっていた。

グラフィックももちろん重要な要素で、肌色の表現が苦手なだけで売れない機種なども多かったようだ。ファミコンなどには無いアダルトゲームの役割も、マイコンの世界では重要だったってことかな。


とにかく読み進めるとショックの連続。なんとマイコン界では、マイコンを持っていない人は「ナイコン族」と呼ばれていた。族って。わずかだが地味に話されてたっぽい雰囲気が逆に怖い。

「ゼビウス」や「グラディウス」など、移植困難だったアーケードゲームを見事に再現できた機種は、それだけでとても人気だったらしい。「なんとあのゼビウスがアーケードさながらに動く!たった20万円のマシン!」って、ゲームセンターで2000回ゼビウスできるやん…と思わざるを得ないが、夢やロマン優先なんだろう。

そう、夢やロマンなんだ。マイコンハードをメーカーごとにまとめたコーナーでは、80年代前半で既に「歌う・しゃべるマイコン」「ワイヤレスキーボード」などがウリになっている広告などが続々紹介される。コンピューターに求める未来感って、今も昔も変わらないなあって思う。

日立が4年以上ずっとマイコン広告で工藤由貴の写真を使っていたので、彼女が誌面上でどんどん大人になっていく、その様子をまとめたコーナーなど、当時の雰囲気も伝わってきて笑える。バンダイが「RX-78」という、ガンダムの型式番号と同じ機種名のマイコンを出したり、色んな会社が、がんばっていた。

マイコンといえばゲームなので、ソフトハウスをまとめたページもかなり分量がある。テトリスを売るまで3Dダンジョンで名を馳せたBPS、スーパーマリオの移植で有名だったかつてのハドソンなど、ファミコン世代にはちょっと新鮮な「紀元前」の歴史が感動的だ。時代って、いきなり始まったんじゃなくて、色々やっぱり元があるんだなって感じ。

知ってる人は懐かしい、知らない人は新鮮な本書。コンピューターの進化に興味がある人にもおすすめです。佐々木潤著、『80年代マイコン大百科』(香山哲)