どちらが自分のペースで戦えるのか。そして相手のペースに順応できるのか。タイトル戦線を左右するユライアとアルカンタラのバンタム級戦だ(C)GONGKAKUTOGI & PVT

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17日(土・現地時間)、マサチューセッツ州ボストンのTDガーデンで開催されるUFN26「Shogun vs Sonnen」ではバンタム級でユライア・フェイバー×ユーリ・アルカンタラ、さらにマイケル・マクドナルド×ブラッド・ピケットという2試合が組まれている。

正規王者ドミニク・クルーズと暫定王者へナン・ベラォン、2人の世界王者が存在するバンタム級。統一王座戦が来年にずれ込みそうな気配のなか、そこに絡んでくるトップコンテンダーたちの試合が同大会で行われるわけだ。最もこの2人と近い位置にいるのがランキング2位のユライアだ。べラォンと暫定王者決定戦に敗れるも、アイヴァン・メンジバーとスコット・ヨルゲンセンに連続一本勝利し、トップクラスの座をキープしている。

対するアルカンタラはジャングルファイトでのキャリアが評価されてUFCに参戦。バンタム級転向後、1勝1無効試合という結果だが、ペドロ・ノブレ戦のノーコンテスト裁定は後頭部を殴ったというレフェリーの誤審で、アルカンタラにとっては気の毒なもの。事実上、ブラジル大会で2連勝というところだ。

2位ユライア×ランク外のアルカンタラという図式だが、両者の相性を考えるとユライアにとって危険なマッチメークという部分が見えてくる。低重心&上下しない構えから繰り出す打撃&テイクダウンのフェイントで試合を組み立てるのがユライアのスタイル。対戦相手はテイクダウン・ディフェンスを頭に入れながら、ユライアの打撃にも対処せざるをえないため、結果的に攻撃への対応がワンテンポ遅れてしまう。

しかし、アルカンタラはガードポジションからの腕十字やアームロックといったサブミッションでのアプローチも得意とし、いい意味でテイクダウンの攻防を捨てられるファイターだ。あえてテイクダウンを無視することで、テイクダウンを織り交ぜて相手をパニックにさせるユライアの持ち味を消すことも出来る。また、アルカンタラのサウスポーから懐が深く、オーソドックスに左の蹴りを思い切って打ち込んでいく打撃は、距離を詰めたいユライアにとっては厄介な類のものだ。

アルカンタラがテイクダウン・ディフェンスを考えない思い切りのいい打撃でユライアの入り際を狙う。そして、テイクダウンされてもガードからのサブミッションで展開を作る。そんな戦い方がハマればユライアを苦しめることになり、明確な差に通じるとアルカンタラが金星を挙げる…そんな可能性がありうるマッチメークだ。

もう一つのバンタム級戦=マクドナルド×ピケットはどちらもランキング上位、過去にべラォンに敗れている2人による一戦だ。基本的には打撃をメインにしつつも、テイクダウンの攻防になれば、そこでも強さを発揮するという共通項を持つ両者。ユライア×アルカンタラとは違い、お互いに得意な分野が同じという構図だ。一方でマクドナルドがキックボクシングベースで蹴りの技術で勝り、ボクシング主体のピケットがワンパンチの異名通りにパンチ力に優れるという見方は出来る。

ピケットはべラォンとの試合では蹴りをブロックしてカウンターを狙ったもの、クラウチングスタイルの隙をつかれ、右テンカオから左右のフックを効かされて一本負けを喫した。べラォンと同じ蹴りを使えるマクドナルドが相手だけに、ここはパンチ一辺倒ではなく蹴りを誘っておいてテイクダウンを合わせる、もしくは打ち合いではなく距離を潰すパンチからクリンチにつなげていきたいはずだ。

同様にマクドナルドも前回のべラォン戦では打撃でペースを掴みつつも、べラォンのテイクダウンを織り交ぜた試合運びに消耗し、柔術を知る分、先を読んだ動きのその先を行かれ、肩固めを極められている。ピケットがテイクダウンを考慮した戦い方をするならば、より距離を意識して、打撃だけではなく、もともと得意にしているダブルレッグ系のテイクダウンから寝技でフィニッシュを狙うのがマクドナルトとすれば、効果的な作戦といえる。

お互いのストロングポイント=打撃の強さが目立つ両者だけに、そこにテイクダウンという要素をどう活かせるかで差がつく展開になるだろう。