出井伸之氏

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各界の賢人たちがこっそり教えてくれた、珠玉の言葉。2013年のビジネスのヒントがここに!

●前夜(クオンタムリープ代表 出井伸之)

いまの日本の経営者には、任期を無事に終えることばかり考えてる者が少なくない。変わることを恐れているのだろう。政治の世界も同様だ。いまは中央集権か地方分権かという選択肢しかない。日本には、まだ誰も足を踏み入れていない第3の道を拓くポテンシャルがある。2013年はその前夜といえる年になる。

●公的年金の支給開始年齢(横浜国立大学教授 山口 修)

公的年金の支給開始年齢を引き上げれば、支え手(=保険料負担者)が増えて、貰い手(=年金受給者)が減ることになり、一石二鳥で財政状況が改善されるはずだ。当面3歳程度の引き上げが想定されるが、これは老後の生活設計にかかわる重要な問題。実施する場合は、かなり早めに告知し、準備期間を十分確保する必要があろう。

●格差(日本在外企業協会広報部長 西川裕治)

先進国でも新興国でも格差はますます広がっており、経済の発展や成熟化によってもそのスピードは加速されているように感じます。そもそも人類の歴史は格差拡大の歴史でもあります。よって、格差を単に悪者と決めつけても意味はなく、逆転の発想で、世界に存在する格差をビジネスチャンスに転換する発想が重要です。2013年は本格的な格差ビジネスの元年になるのではないでしょうか。

●リスク判断(評論家 山本一郎)

日米中韓でトップが交代して政治面の混乱が増し、中国を含むアジア経済の不透明感が強まる状況で、どこまでリスクをとりにいくべきか慎重に検討をするべきです。儲けたいと闇雲に進むのか、引き返せるうちに決断するのかが重要なポイントですね。

●年金崩壊第1章(社会保険労務士 北村庄吾)

いよいよ2013年度から男性の老齢厚生年金の支給開始年齢が61歳になり、60歳定年後、何の収入もない空白期間が出てくる時代になる。消費税の増税額分をすべて社会保障にまわすという改正もあったが、今の年金制度が世代間扶養の仕組みを取っている以上、年金制度は確実に崩壊する。年金の抜本的改革が迫られているが、万が一改革が行われない場合には、「年金崩壊第1章」がはじまる。

●長幼の序(同志社女子大学特任教授 山上 徹)

高齢化社会を迎え、年齢差のある相手とつき合うことも増えた。年長者はしばしば若者の振る舞いに対して、「長幼の序を欠いている」などと憤る。しかし、長幼の序とは本来、「年齢差の序列」ではなく、年齢を超えて年長者と若者とが互いに「慈しみ、尊敬し合う秩序」を指す。ゆえに、上から目線を好む人間に対して、若者が真の意味で長幼の序を認めていない場合には、逆に疎まれることになるだろう。

●日常(栄養士、食事カウンセラー 笠井奈津子)

近年は、印象に残りやすくエッジのきいた健康法ばかりが注目を集めがちです。しかし「食」は生活の一部として、無理なく続けられるものでなくては意味がありません。このため2013年は日常的に心身をケアできる手法や商品に注目が集まると思います。コンビニエンスストアなどでは健康とお財布に気遣ったメニューがさらに増えると思います。

●新型セルフネグレクト(生活習慣病総合研究所所長 工藤一彦)

自己を放棄してしまい、ゴミ屋敷や孤立死など社会問題を引き起こしているセルフネグレクト。医者や行政を権威と感じ、素直にアドバイスを聞かない全共闘世代が後期高齢者になるこれから。患者には新たなアプローチの工夫が必要になると思われる。

●もっと、強くなれ!(カルビー会長兼CEO 松本 晃)

僕は社員に「国内では圧倒的に勝て」とけしかけています。海外に出かけたら戦いはもっと厳しくなる。カルビーはスナックの世界市場でシェア10%を目指しています(現在1.7%)。やってできないことはない。でもボサッとしとったらあっという間にダメになります。しっかり競争できるように、強くならなければならないのです。

●家族の時代(相続ジャーナリスト 三星雅人)

雇用や生活面で改善が望みにくくなっている。それだからこそ最少社会である家族の安定、関係強化が求められていく。

●自然回帰(東京女子医科大学准教授 川嶋 朗)

医療費の削減において人間が持つ自己治癒力をもっと見直すことが重要であるし、エネルギー問題でも自然の力を活用する時代になっている。

●脱(家電コーディネーター 戸井田園子)

震災以降、いろいろと我慢したり低迷したりしていたことから脱して、次のステージに移行しようという気持ちが芽生えそう。

●方法の原理(ふんばろう東日本支援プロジェクト代表 西條剛央)

時代の変化が速くなるなかで、状況と目的を見定めて前例にとらわれずに動くことが生き残るカギです。今の日本はそんな至極まっとうなことをまっとうに実行する方法を持ち合わせていない。このままでは永遠に日本は再生できない。

●いつまでも若々しく(順天堂大学大学院医学研究科教授 白澤卓二)

本当の年より若々しく見える人は、体の中の細胞の老化の速度が遅い人です。食事、運動などの生活習慣や生きがいが細胞の老化の速度をコントロールしています。食事では、野菜を中心に適正カロリーを摂取して体重をコントロールすることが大切です。

●ログ(ブロガー コグレマサト)

これまでにソーシャルメディアに蓄積されたつぶやき、写真、位置情報といったログが、何らかの形で活用される年になると思います。あちこちに散らばっていたログが繋がるはず!

●進化(プラクティカル・ビジネス・コーチング・マネージャー 大久保政彦)

様々な局面で「今までと同じ」ではダメだと思います。何か新しいことにたどり着く思考が必要ではないでしょうか。イノベーションだけではなく、リノベーション的発想も駆使して。思考も多様化すると思いますが、常に前へ進もうとする進化が必要だと感じます。

●「すでに起こった未来」を捕まえろ!(アサヒグループHD社長 泉谷直木)

この言葉は、ドラッカーの同名著作(『すでに起こった未来』)から取りました。不透明な時代に将来を見通すには、世の中の「基盤」を分析することが大切です。例えば、2014年4月にアップする消費税。消費税が上がるときに、消費者の意識がどう変わるかは過去から類推して見えてくる部分もあるはずです。そして見える部分に対応することで見えない部分もカバーしていく。「不透明な時代」を理由に何もしなければその企業は必ず沈んでいきます。

●ハイパーインフレ国債償還(高須クリニック院長 高須克弥)

今、日本が抱えている問題(年金問題、円高、製造業流出等)は、ハイパーインフレですべて解決する。

●非正規雇用制度はなくそう!(聖路加国際病院精神科部長 大平 健)

劣悪な雇用条件を放置すると、治安の悪化、消費の低迷が続き結局は高くつきます。iPS虚偽発表事件の森口尚史氏も、不安定な有期雇用の研究者であり、こうした制度の犠牲者という面があると思います。

●右傾化懸念(事業構想大学院大学学長 野田一夫)

政治の「右傾化」が話題になっているが、その論調はまだ甘い。第2次大戦を経験した僕からいわせると、右翼独裁政権ができたら最後、自由な社会へは戻れない。いまの日本だって例外とはいえない。ドイツ・ワイマール共和国の教訓を思い出そう。戦後の日本以上ともいえる民主国家から、あっという間にヒトラーが登場し、国を席巻したのだ。2013年は分水嶺だ。

●これくらい(経済ジャーナリスト・高井尚之)

政治も経済も個人も、「これくらい」を考える1年に。「正解」がないことも多いので、「納得解」で考えるという意味です。オールorナッシングよりも、サジ加減が大事です。

●インディペンデント会社員(「こころの定年」評論家 楠木 新)

会社の先行きが不安で、自分の立場が行き詰まると、会社を「辞めるか、残るか」の二者択一状態になって袋小路に陥ってしまう。起業や脱サラするのもリスクが大きい。こういうときは、会社での人的ネットワークの大切さを見つめ直し、同時に過去の自分、未来の自分に出会うことだ。その作業を通じて新たな自分を発見できれば、会社を辞めずに「独立」することにつながるはずだ。

(宇佐美雅浩、永井浩、的野弘路、門間新弥、Linda A. Cicero/Stanford=撮影)