新型コロナウイルスの感染が中東やヨーロッパで広がり、5月28日にはフランスで初めて感染者の死亡が確認された。日本で流行する可能性はあるのか。
 「コロナウイルスは、'02年中国広東省を中心に流行し死者約800人を出したSARSに類似したウイルス。現段階では有効な医薬品やワクチンはなく、感染拡大の勢いが止まらないことから、日本へ入ってくるのも時間の問題でしょう」
 と世田谷井上病院理事長の井上毅一氏は説明する。

 感染すると、最初は鼻水や咳が出る。さらに重症化となれば肺炎や腎不全を起こしやすくなるという。世界保健機関(WHO)によると、現在8カ国で44人の感染が確認され、24人が死亡(5月29日現在)。死亡率50%のウイルスなのだ。
 「一般的な風邪のウイルスなのですが、遺伝子が変異して病原性が強まる可能性もあります。実際、中国で流行し、高い致死率で恐れられたSARSの原因は、新型のコロナウイルスでした。日本では感染者は出ませんでしたが、今回は渡航者が多い欧州や中東で広がっているため、予断を許しません」(同)

 ウイルスの潜伏期間は約10日間で、感染した直後に帰国した人は検疫を素通りしてしまうため、日本でも厚生労働省がウイルスを『MERS(中東呼吸器症候群)コロナウイルス』と名称を決め発生に警戒。欧州、中東方面などに渡航し、帰国後、高熱が出た患者がいないか医療機関に報告を呼びかけている。
 WHOは「感染者との濃厚な接触がある場合、ヒトからヒトへ感染する可能性がある」とコメントしているが、すでに死亡したフランス人男性が感染者と同じ病室にいたことも判明している。

 日本のパニックは近いのか。