中国人ブロガーの維尼小熊さんは3月28日、日本を旅した際に訪れた伊勢神宮での体験記を発表した。多くの写真も掲載し、日本における伝統の保持を称賛し、自然にとけこんだ信仰の場所である伊勢神宮を極めて高く評価。「魂が清められた」との感想を記した。

 維尼小熊さんによると、日本に来たのは2回目だ。街を歩くと「親しい感じがした」という。日本の文化には、唐からもたらされたものが多いが、「生き生きとして残っているのは、むしろ日本」と感じるという。中国の都市の発達を見ると、「あまりにも急ぎすぎ。歴史や伝統を、ないがしろにしている」と感じてしまうそうだ。

 日本人の大切な伝統のひとつが神道で、神社の中でも「最も地位が高いのが伊勢神宮と紹介。維尼小熊さんは「日本の皇室の始祖である天照大神を祀っているから」と解説し、神道と日本人民の生活は密接な関係があり、日本では神社が普及していると説明した。

 さて、伊勢神宮に到着した。まず五十鈴川を「清流」と紹介。維尼小熊さんが訪問したのは早春で、「冬の色彩が薄れる次期で、川の両岸の桜は開花していなかった」、「桜の季節に訪れたら、この場所は仙境のように美しいだろう」と記した。

 維尼小熊さんは、伊勢神宮と周辺が植物が多いことに注目。「天を覆うような大木も珍しくない」などとして、「この土地は、風水の宝の地」と表現した。「仙境」や「風水」など、選んだ言葉は「いかにも中国人」だが、いずれにせよ、自然が豊かな伊勢神宮に感動したことに違いはない。

 鳥居にも注目した。鳥居の構造を説明した上で「結界であり、神界への入り口」、「神界と人が住む世俗世界の境界」、「鳥居の中に入れば、あなたは神の領地に入ったことになる」と、鳥居の重要性を強調した。自分自身が鳥居をくぐった時の緊張感を、再現するような文章だ。さらに「鳥居には、人を感動させる力がある。特に朝やたそがれ時だ」と書き添えた。

 維尼小熊さんは、伊勢神宮を参拝する日本人の写真を多く掲載した。とりわけ、男女のペアの写真が多い。最初は掲載意図を量りかねたが、「若いカップルでも、聖なる服を着ていても、だれもが言葉や行いを慎む。きわめて整然としており、喧騒とは無縁」と評した。

 写真を見るに「聖なる服を着ている」人とは巫女を指すようだ。若いカップルで伊勢参り、つまり恋人同士の“お楽しみ”であるデートや旅行でも、伊勢神宮に入れば「厳粛さ」を保つ。維尼小熊さんにとってはやや意外でもあり、「伊勢神宮という場」を大切にする日本人の気持ちに心を打たれたようだ。

 維尼小熊さんは伊勢神宮の建物を「神道建築物の中でも最も純粋で最も素朴」と説明。2000年前に日本人が米の倉庫とした高床式建物が原型といった建築様式の由来や、20年に1度の遷宮を紹介した。

 維尼小熊さんはあらためて、森に包まれた伊勢神宮の様子を描写。「神殿の段をのぼれば、心の中はさらに安らぎ静かになる」、「四方が安静。まるで夢の世界。そして時おり、小鳥の声が聞こえる」と、描写した。

 最後の部分では「私は神道の信者ではないが、この神道の祖廟を訪れて、心が清められたと感じた」と記した。

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 神社本庁は公式サイトに掲載している「神道への誘い」と題する文章で、「神道には、神々をまつる環境として、清浄を尊ぶという特徴があります。神社は常に清らかさが保たれ、祭りに参加する人たちは必ず心身を清めます。これら神道の理念や特徴は、日本人の生き方に深く影響しているといえるでしょう」と紹介している。

 維尼小熊さんは中国人の旅行者であり、「維尼小熊さんの目」に映った伊勢神宮は、日本人にとっての伊勢神宮と多少違いがあってもおかしくはない。しかし、「清らかさ」や「静けさ」などの伊勢神宮の特長の本質的な部分はしっかりと感じ取ってくれたようだ。さらに参拝する人の様子からは、日本人がいかに伊勢神宮を大切にしているかも、分ってくれたはずだ。

 中国では、「日本の神社」に対してマイナスのイメージを持つ人も多い。。靖国神社にかんするニュースなどに接することが原因と思われる。日本人の古くからの信仰と価値観に対する誤解は、日本人として残念であるだけでなく、日中双方の感情的摩擦を、無益に拡大してしまう恐れもある。

 維尼小熊さんのように、自分自身で日本の神社を「体験」する人が増えれば、日本人の価値観や発想についての理解も、ゆっくりとではあるが深まるのではないだろうか。(編集担当:如月隼人)