口がほとんど開いていないように見えますが、これが“のどうた”の歌い方だそうです。

写真拡大

のどうた、と呼ばれる歌い方をご存じだろうか。

これは伴奏とメロディーを、一人の口で奏でる演奏形態のこと。まるで笛のような、人の声とは思えない不思議な音が特徴だ。
モンゴルの“ホーミー”といえば、ご存じの人も多いだろう。
共鳴音と呼ばれるこの音は楽器に消されることがない。上手な演奏者ともなると、どこから音が出ているのかも分からないそうだ。

演奏者であり、のどうたの会の代表でもある嵯峨治彦さんに伺うと、「これら伝統的な喉歌は主にアルタイ山脈の辺りの遊牧民に伝わっています」という。

日本では珍しいが、世界ではまずモンゴル(ホーミー)、トゥバ共和国(フーメイ)、ハカス共和国(ハイ)、アルタイ共和国(カイ)などで歌い継がれているそう。

そもそも喉から発する声は、様々な周波数の音が重なっている。普通に「あー」と声を出すだけでも、その中には高い音階も混じっているそうだ。

のどうたの歌い方は、口や顎の筋肉を緩め、舌を使って口の中に丸いカプセルを作る。そしてそこに音を響かせて歌う。つまり口を楽器にしてしまうのだ。

難しそうだが嵯峨さんは、「誰でも歌えるようになりますよ。2つの音を出すこと自体は実はそんなに難しくありません」という。
教室や講座などは少ないが、ライブ活動をする歌手によるワークショップ等で教えて貰えることもあるそうだ。
人によっては、意外にあっさり歌えた! なんてことも。

そんな魅力あるのどうたは、連歌・鳥の歌(http://thesongofbirds.com/)でも聞くことができる。
これは、20世紀の名チェリスト、パブロ・カザルス氏が平和をこめて弾き続けた故郷カタルニア民謡“鳥の歌”。この曲を様々な演奏・歌などでコラボしようという企画サイト(プロデュース:井上鑑)。
戦時中に語り継がれたこの曲を音楽だけでなく映像や記述なども加えアレンジとして、またアンサーソングとして語り継ぐ。
一曲を様々な表現者とコラボする取り組みは、大変珍しいという。
この企画、昨年秋にはじまり、今年12月29日までの期間限定。今は月1度のペースでwebにて演奏をアップ。コンサート展覧会形式で発信している。
そのなかに、嵯峨さんののうどうたも披露されている。

世の中にはさまざまな歌がある。
その中でものどうたは、歌詞や言葉を語らない。なのに初めて聞く人を引き込む力がある。ちょっと珍しく面白い存在だ。
なお、2/16〜2/20には、東京でツアーを実施するという嵯峨さん(16日:下里しおん保育園チャペルコンサート、17日:そら庵・嵯峨治彦 ソロライブ、20日:オオフジツボ&RAUMA ジョイントライブ)。
これらのライブでは、のどうたと相性ぴったりな馬頭琴を演奏しながらの歌声を楽しめるそうです。
(のなかなおみ)