紙面での取り上げ方の大きさはル・モンド紙を筆頭にフィガロ紙、リベラシオン紙の順。

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自民党が294議席を確保して大勝した第46回衆院選を翌日のフランス各紙はどのように伝えたのだろうか。

今回の選挙を取り上げたル・モンド、フィガロ、リベラシオン各主要日刊紙のうち、もっとも大きく扱ったのはル・モンド紙だ。二面の大部分を今回の衆院選結果に割いた。同紙は同選挙における日本の政治状況を一通り説明しつつ、安倍自民党の勝利は今後、尖閣諸島をきっかけとした日本と中国の対立をさらに高めると伝えた。東シナ海およびアジア太平洋における日中間の軍事バランスも図入りで解説した。

安倍氏については、「真珠湾攻撃をおこなった東条英機内閣で商工大臣を務め、A級戦犯容疑者として逮捕された岸信介の孫」と紹介し、「プリンス」「タカ派」という単語とともにその経歴を紹介した。原発問題に関しては、「福島は忘れられた」として「土曜の夜(衆院選前夜)まで日本は脱原発の準備があった。日曜からは停止中48機の原発が再稼働へ進む」と伝えた。

フィガロ紙はル・モンド紙に比べれば扱いは大きくないものの、安倍氏の「強い日本を作る、豊かな日本を作る、そして日本人が日本に生まれたことに幸せを感じる」という発言を引き合いに、「強さ」ということをキーワードに今回の経緯を伝えた。ナショナリストであり尖閣問題に影響するだろうということに加えて、2006年の安倍内閣では最初の訪問先に中国を選び、小泉内閣で冷えきった日中関係を改善したことにも言及した。

また政治家一族である安倍氏のことを「日本の貴族階級に属する」と形容しており、「祖父は総理大臣、父は“ただの”外務大臣だった」とその特異性を挙げている。

リベラシオン紙は「かなり右寄りである安倍氏は2006年から2007年に輝くことなく首相を務めた」と紹介し、「地震、津波、原発のトリプル災害」を中心とした東日本大震災後の日本の政治状況と関連させつつ「反原発支持者は少数の議員を衆議院へ送るという深刻な失敗をした。福島はすでに過去の出来事だ」と結んでいる。
(加藤亨延)