『ネコでププッ』タカハシ ヒカル(著)/ 宝島社

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自他共に認める親バカである。いや、結婚も出産も離婚も経験をしていないし彼氏もいない、ないない尽くしの私なので、これにおける子供に該当する生き物はそう、ネコである。愛してやまないマイスイートハートを写真に収めては、SNSに共有し、友達からの「いいね!」や「かわいい!」の声に「そうだろう! そうだろう!」と鼻を膨らませる親バカな毎日である。

気がつけば二匹のネコと暮らし始めて早数年、その魔性の魅力にすっかり虜になり、マイスイートハートのみならず、街を歩いていてもネコを見つけるとすぐさま後をついて行ってしまう、どこに出しても恥ずかしくない立派なネコストーカーへと成長した。

そんな私に負けず劣らず、ネコたちを毛玉ちゃんと呼び、やってはいけないネコ男子の行動などを秘かに啓蒙し、最近では家の毛玉ちゃんと会話ができるようになったという非常に同じ匂いのするネコ男子を発見した。その方とは、『ネコでプッ』と『ネコでププッ』(ともに宝島社)の画像集の著者であるタカハシヒカルさんだ。

毛玉ちゃんを愛して止まないタカハシさんが手がけた手のひらサイズのその書籍には、ちょっと間の抜けたネコの挿絵と共に、様々なシュチエーションのネコ画像に一言コメントが添えてある。例えば、夕日が射す川べり、取っ組み合いの喧嘩を始めたばかりの二匹。そこにはこう添えてある。

「マタタビなんかに頼ってんじゃねーよ!」

見える、そのシュチエーションが見える! と、思わずププッと噴出しそうになり、必死に堪えたものの、にやにやと電車の中にも関わらず一人顔を緩める怪しい三十路女と化してしまった。

ネコの画像に一言添える、こんな面白いことを始めるなんて実にけしからん。けしからんので、こんな面白いことを始めた切っ掛けについて、著者のタカハシさんにインタビューをしてみた。

「僕もネコ好きと言うこともあり、暇な時にインターネットでネコ画像を見たり、友達から送られてきたネコ画像を見たりしているうちに『これ、確実に喋ってるでしょ……』と、思って勝手に台詞をつけ始めたのがきっかけです。写真によっては『これ、どんな状況だよ!』と、突っ込みたくなる面白い写真も多く、そのシュチエーションを考えながら台詞を書いたりするうちに、ネコ画像にコメントをつける深みにはまっていきました」

うーん、分かる!
一般的に優雅で媚びることをせず、独自の世界でのんびり素敵なネコライフを送っていそうなネコたちだが、実は結構バカなことをするし意外とその場面を写真に収められているのだ。しかし、こんなにたくさんのネコ画像があったら、ネコ好きとしてはコメントを考える作業が楽しくてしょうがなかったのではないのだろうか。

「これには大変困りました。この状況を僕は『毛玉ちゃんハイ』と呼んでおりまして、丸2日間徹夜したこともあります。この状況が続いているうちはいいのですが『よし、寝よう!』と思って目をつむっても全然寝られないのです。目ん玉の奥がジンジンして寝られないのです。2日徹夜したにも関わらず。目を開ければ天井の木目がネコの模様に見えたり、みかん箱に描かれたみかんの絵が、丸まったネコに見えたりと、何もかもがネコに見えてくるのです。この状況(最終段階)を『毛玉フィルター』発動と呼んでいるのですが、今回の本でも2回ほど毛玉フィルターが発動しました。今回は鏡に映った自分の顔がネコに見えたので担当編集さんに電話をして『とうとうネコになったから1日に休みます。電話掛けてこないでね』と連絡をして床につきました(笑)」

毛玉フィルター発動とは、うらやましい限りだ! ネコ好きとしてはヨダレものの状態だが、そこまでネコを凝縮した画像集、どのような方にオススメなのかタカハシさんに聞いてみた。

「書籍のサイズも小さくして手軽に持ち運んで読んでいただけるように作りました。電車の移動、待ち時間、お風呂、トイレなど、短いけどリラックスしたい個の時間に読んでいただけるとうれしいです。それはネコもフラッと個の時間に現れて短時間でリラックスさせてくれる存在だと感じているからです。ちょっとだけ甘えてさっさと寝たり、トイレに入るときだけ付いてきたり、すっと日常に入りこんできては和ませてくれます。また面白いネコの画像がたくさん掲載してあるので『最近、笑いの量がたりないな〜、ネコの量がたりないな〜』と思っている方に読んでいただければと思います。その際はブルース・リーの『考えずに、感じろ』で読んでもらえればと思います」

完全に手のひらサイズのこの書籍は、あなたの好きな場所にもすっぽりと納まるだろう。ちょっと憂鬱な朝の電車、気分転換をしたいお昼休み、とても疲れてしまった日のお布団の中。そんな少しの時間、見たいページを見るだけでもとても癒されるはずだ。ネコは押しつけることなく、気づけばいつも側にいてあなたを癒す存在だから。

ネコを愛して止まない人には、ネコに会ってモフモフしたくなった時の衝動を抑えるために、ネコは少し苦手だなと思っている人には、ネコってこんなに可愛くて面白い生き物なんだ! と思うきっかけのためにぜひこの本を手にとっていただきたい。表紙を見ただけでも、きっと頬が緩んでしまうことだろう。

一家に一冊、ネコにプッ。ネコにププッ。
お後がよろしいようで。

最後に一つ、ここまで読んでいただいたネコ好きの方々にお願いです。この国の抱えるペット産業の実態はとてもひどいものです。一年間に信じられない数の動物が、人間の勝手な都合で殺処分をされています。

私に何か出来ると大それたことは思っていません。また、一人ひとりの力は微々たるものであると思います。でも、一人ひとりが認識を持ち、考えを持つことで現状は少しずつでも変わると信じています。

この本をきっかけにネコに興味を持ってくれる人が増え、ネコと暮らしてもいいという人が増え、幸せなネコ生を送るネコたちが増えれば、こんなにうれしいことはありません。そのために、この本の情報をあなたのお友達に紹介をしていただければ幸甚です。
(梶原みのり/boox)