植木さんが描いた「似美男子」の一例。およそ15分で描き上げる

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女性の顔をたったの15分で、少女漫画に出てくるような美男子風に描いてしまう人がいる。名前は植木葉月さんと太田麻衣子さん。共に、多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科の3年生だ。学園祭で、女性の顔を美男子風に描くという早描きの企画を開催したところ、ツイッターで話題に。噂を聞いて駆けつけた人もいて、最終日には行列ができていた。一体なぜ、美男子の早描きをすることにしたのか、植木さんにお話を伺った。

――そもそも、女性の顔を美男子風に描こうと思ったきっかけは?
「展示のテーマを決める時に、メンバーの子が『色物と言われてもいいから、好きなことをやろうよ』と、キリっとした顔で言っていて、私も美男子は好きだし、誰だって美男子は好きなんじゃないかという話で盛り上がって、それで決めました。ただ、そこで単に美男子の絵を描いてしまうと、『綺麗な男性の絵だね』って言われて終わっちゃうので、去年の学祭では色々な方に描いていただいた理想の美男子の絵の展示と人気投票を行い、(写真参照)今年は美男子についてまとめた『美男子本』(写真参照)の展示販売と、似美男子の絵を描く企画をすることにしたんです。美男子に似せて描くから『似美男子』という名前にしました」

展示には植木さんと太田さんの2人以外にも、井上智香子さん(「美男子本」の冊子の西洋絵担当)、飯塚友里恵さん(冊子の文章・装丁担当)も関わっている。全員、同じ学科の3年生だ。

――それにしても、『似美男子』の早描きは大盛況でしたけど、3日間で何人くらい描きました?
「2人で合計90人です。嬉しいことに、2日目あたりからツイッター等で噂が広まり始めて、3日目にはツイッターで知ったというお客さんもいらっしゃるようになりました。気がついたら、行列ができるほどになっていたので、慌てて整理券を作って配布したんです。1人を15分ほどで描いてましたけど、それでも待たせてしまうし、描ききれない人も出てきちゃうので……」

――お客さんはどういう方が多かったですか?
「ほとんどが女性ですね。どこかに変身願望があるのかもしれません。中には、ツイッターやブログのアイコンに使いたいという方もいらっしゃいました。あとは、カップルで来られた方もいましたね。男性の場合は、美男子が出てくるような漫画に登場する女性風に描きました」

――男性を女性風に描く方も難しそうですねぇ〜。では、女性を美男子風に描く時に心がけたことは?
「相手の女性の、素敵だと思うパーツを全面に出して、美男子風に描くようにしました。絵を描き終わった時に、『額のまわりの形が良いと思ったんで、その良さを全面に出しながら描きました』とか言って渡してましたから(笑)。あと、洋服の部分はできるだけその日に着ていた服を描きました。そっちの方が“当日感”が出ていいですから。ただし、女性の場合で、美男子が着ると不自然な雰囲気になりそうな服だった場合は、私のわずかなファッションセンスを搾りだして、男性が着ても違和感のない服の絵を描きました」

――細かいですね!完成した絵を見た時の、お客さんの反応は?
「『私、カッコいい〜!』って言ってもらったり、グループで来ていた場合は、お互いに似ている点を確かめ合ったりとかしてましたね」

――そもそも、植木さんが早描きをするようになったきっかけは何ですか?
「通っていた予備校が、『時間をかけて綺麗に書くのも大切だけど、パっと見たものをきちんと形にすることも大切だ』という方針だったので、クロッキーで数分で早描きする訓練をよくやってました。それが身についたからかもしれません。あとクロッキー帳に絵を描くのが好きで、美大生のクロッキー帳をテーマにドキュメンタリーを作っている人に私のクロッキー帳を見せたら、『3年生になって、こんなに文章よりも絵を描いている人はいない』って言われました(笑)。それほど、絵を描くのが好きですね。似美男子の企画も、またどこかでできたらいいなと思ってます」

こうなったら全国を巡業してほしいくらいである。

ここまで「似美男子」にまつわる絵の早描きについて語ってくれた植木さんだったが、実は最近、ハマっていることがあるという。

別名「回文女」

――美男子以外に興味のあることは?
「実は最近、回文の性質をどうやったら本で表現できるかということに興味があって、回文を模様にしたら面白いんじゃないかと思って冊子を作ったんです(写真参照)。エディトリアルの授業も好きだから、色々な回文で模様を作ったりしてまして。だから、今は回文のことばかり考えていて、学校の一部の人からは『回文女』って言われてます(笑)」

――なんだか、すごい呼ばれ方ですけど…。今は3年生ですが、将来は何をやりたいですか?
「本が好きだから、本の装丁の仕事に就きたいです。ただ、就職活動はしているけど、どこの会社を希望したらいいかも分かっていない状態なので、マザーがマジギレで(苦笑)。あとは、荒木飛呂彦先生の『ジョジョの奇妙な冒険』が大好きなので、いつかは『ジョジョ』の仕事に何らかの形で関わりたいですね」

自分で色々と企画して、楽しいことをどんどんやっていきたいという植木さん。これからの活動に期待したいところである。ちなみに、植木さんの好きなタイプは阿部寛さん、石膏像ならマルスで、美男子とは真逆なのだそうだ。
(やきそばかおる)