10月12日、欧州大陸の平和的結束という歴史的役割を果たしたとして、EU(欧州連合)のノーベル平和賞受賞が決まった。

そもそも、EU統合はフランスとドイツが領有権争いをしてきたアルザス・ロレーヌ地方の石炭と鉄鉱石を平和的に共同管理・利用する「欧州石炭鉄鋼共同体」(ECSC)が母体となってスタートしたもの。それが今、彼らは殺し合いの歴史を乗り越え、債務危機をバネにさらなる統合を深めようとしている。欧州の人々は、国家を超えた地域統合がどれだけ平和と繁栄をもたらすか、知り抜いているのだ。

ここ最近、領土問題を機に韓国との外交的軋轢が強くなっている日本も、橋下徹大阪市長が提言した「竹島の日韓共同管理」を起点にして平和的結束を結ぶことは難しいのだろうか。

実際に竹島の共同管理を実現するまでには、高いハードルがある。元外交官で評論家の孫崎亨氏は言う。

「韓国が竹島を実効支配している以上、いくら日本側が共同管理を呼びかけても応じる可能性はほとんどない。つまり、現時点では共同管理論は絵に描いたモチにすぎないのです」

日韓関係に詳しい木宮正史東京大学大学院教授も、これに同意する。

「韓国にとって竹島問題は単なる領土問題ではなく、歴史問題でもあるのです。朝鮮半島に対する日本の侵略の第一歩が1905年の竹島の島根県編入であり、日本が竹島の領有を主張することは過去の侵略、植民地支配の歴史を反省していない証拠と韓国は考えている。このように領土問題が歴史問題化され、それが正義か不正義か、0か100かということになってしまうと、韓国に妥協の余地はない。共同管理は難しいでしょう」

前出の孫崎氏は「日韓双方が竹島を固有の領土と主張して対立するのでなく、“係争の地”と認めること。それが第一歩となります」と語る。どういうことか?

「日本では竹島が『日本固有の領土』であることは明白な事実とされていますが、実際にはそうとも言い切れないのです。例えば、1945年に日本が受諾したポツダム宣言でも竹島の帰属はあいまいにされたままです。そこには敗戦後の日本の領土は本州、北海道、九州、四国と連合国が定める諸小島とあるだけで、竹島が日本領であるという明確な言及はありません。だからこそ、日韓が竹島を固有の領土と主張して対立するのでなく、領有を争っている地――係争地と互いに認め合うことが求められているのです。そこから、話し合いがスタートするのです」(孫崎氏)

これには、竹島を領有の係争地と日韓が認めることで、双方の国にはびこる不毛な領土ナショナリズムをこれ以上燃え立てさせないようにしようという意図がある。では、次のステップは? 前出の木宮教授が語る。

「領土問題を“脱歴史問題化”させる。韓国にそうしたアプローチが必要だと認識してもらうことが大切になってきます。その上で主権の問題を棚上げすることができれば、竹島の共同管理は可能となります。実際に1998年に締結された新日韓漁業協定では、竹島の領有権を棚上げにして、排他的経済水域のほかに共同で管理、利用する暫定水域を設定する合意に日韓はこぎつけたわけですから」

前出の孫崎氏も別のアイデアを披露する。

「竹島の領有で日本と争うより、協力したほうがずっと大きな利益になると韓国が思えるような状況をつくり出せばいいんです。そうなれば、韓国側の世論にも変化が起きる可能性があります。例えば、日韓で共同の利益を確保しようと働きかけることなども考えてみるべきです」

日韓も、統合とまではいかずとも、互いに協力し合うことを目指すべきではないだろうか。それが両国の国益にかなっていると思われるのだが……。