松井証券では、証券業界で初めて導入した「即時決済取引」について、相次いでサービスを拡充している。5月には取引単位を最小「0.1円単位」にまで刻み幅を細分化。さらに、6月にはスマートフォンでも取引が可能になる予定だ。即時決済取引の現状と展望について松井証券の営業推進部副部長、松井亮氏に聞いた。

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 松井証券では、証券業界で初めて導入した「即時決済取引」について、相次いでサービスを拡充している。4月にオークション方式を導入するとともに、取引時間を8:30〜15:00まで(昼休みなし)に拡大。5月には取引単位を最小「0.1円単位」にまで刻み幅を細分化。さらに、6月にはスマートフォンでも取引が可能になる予定だ。即時決済取引の現状と展望について松井証券の営業推進部副部長、松井亮氏に聞いた。

――即時決済取引とは?

 RTGS(即時グロス決済)という仕組みを使い、現物取引でも信用取引でも、一定資金で1日に何度でもデイトレードができる取引です。当社では、大阪証券取引所のJ−NET市場を活用することで即時決済の信用取引を昨年10月に始めました。

――即時決済の信用取引を導入した狙いは?

 以前から即時決済の現物取引を行っていましたが、投資家の方々からは、信用取引でも売買したいという強いニーズがありました。従来の信用取引では、例えば信用で買い建てたものを当日中に売却(決済)しても、買い建てに用いていた保証金は、当日の新たな取引に使うことができないという制約があるからです。

 新規建て余力の限界までポジションを持っている場合、信用の建玉をデイトレードで決済しても、その日は次の行動に移ることができません。ところが、即時決済の信用取引ならば、デイトレードでポジションを解消してできた保証金の枠を、その日のうちに再利用できるのです。場合によっては1日に何回転も売買することができます。

 また、即時決済の信用取引では、取引手数料をゼロにしています。金利は7.3%ですが、たとえば100万円のデイトレードに対する1日分の金利は1回200円です。通常は手数料が数百円かかるので、金利を支払ってもコスト競争力があると考えています。

――今年4月のサービス内容拡充の効果は? 

 これまでは取引所の時価を基準に価格をつけていたのですが、今年4月から、売買方式を取引所立会市場取引と同じようにオークション方式に改めました。オークション方式にしたことで3月と比較すると4月の売買は2倍程度に膨らみました。

 また、取引時間の拡大により、取引所の寄り付き(9:00)前の取引が、即時決済取引全体の売買高のうち20%くらいを占めるほど活発に利用していただいています。東証が開く前から、NYをはじめとした海外の市場動向や前日の大引け後に出たニュースなどをもとに、ご自身の相場観で売り買いをしたいというニーズが強いのだと思います。

――新しく「0.1円単位」の注文ができるようになるということですが?

 5月21日から、最小0.1円単位の価格で売買できるようにします。たとえば、「95円買い、96円売り」など、円単位の取引では見合ってしまって値段が動かない場合がありますが、0.1円単位まで刻みを細かくすることで、95.5円でも売買が成立するなど、約定の可能性が高まります。現在の株式市場は価格変動が小さくなっていますが、投資家にとっては細かな値段の刻みを利用して、利ざやが取れるというメリットもあります。

――スマートフォンは?

 6月上旬に対応する予定です。現在、スマートフォン向けに提供している「株touch」というアプリに、即時決済取引の機能を搭載します。

 「株touch」の特徴は、「スピード注文」という機能に表れています。取引区分、株数、執行条件など、基本的な注文条件を事前に設定しておけば、画面上をタップするだけで注文ができる仕組みです。頻繁に売買される方向けのツールとして評判がいいので、即時決済取引にはピッタリの機能だと考えています。

 モバイルを通じての注文は、昼休み時間に大きく増えるという傾向があります。即時決済取引は昼休み時間も継続して動いているので、これまでにはなかった新しい取引の場として利用していただければと期待しています。

――今後のサービス拡充などの計画は?

 現在の取り扱い銘柄数は100銘柄なのですが、銘柄拡充も検討しています。また、即時決済取引と通常取引の垣根を低くする仕組みの導入にも取り組みます。お客さまにとって有益な取引を提供できるように、サービス内容をブラッシュアップしていきたいと考えています。(編集担当:徳永浩)