ベスト10作品のうち、既刊の最も多いのは『カナクのキセキ』で、2012年1月4日現在、第3巻まで発売中。『ストライク・ザ・ブラッド』と『ひまわりさん』は、第2巻まで発売されています。『ストライク・ザ・ブラッド 2 戦王の使者』には新ヒロインが登場。『ひまわりさん 2』では、ひまわりさんの過去が明らかに? 『カナクのキセキ』の2巻以降の展開については何も言いません。自分で確かめるのが、一番楽しいですよ

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本好き人間の大半は、自分の好きな本を人に薦めるのが好きなものですよね。
僕もお気に入り本の布教活動は大好きです! ただ、薦めた作品に興味を持ってもらえても、既刊の巻数が多いと尻込みされることがよくあります。
そこで、2011年の「1巻が面白かった本ベスト10」を選んでみました。これならすぐに追いつけるので、気軽に読んで貰えるはず。
あ、でも1巻と限定したせいで、漫画とラノベしか読んでない人みたいになってるぞ。


第10位
『モノクローム ミスト 1』(椎名 優/電撃コミックス)
周りの人には見えない黒猫が見えるようになった少女アンジェリカは、“人には見えないものが見える”と噂のオカルト小説家シルフレイヴの元を訪ねます。その出会いにより、祖父譲りの古いアパートでのんびりと暮らしていたシルフレイヴの生活は一変。人間の負の感情に忍び寄る“闇の住人”と戦うことに……。
『サクラダリセット』の挿絵などを手がける人気イラストレーター、初のコミックス。あとがきで著者本人が「漫画家1年生。若葉マーク付き」と言っていますが、作品を見る限り、若葉マークなんて必要ないのでは? 凝ったコマ割も多く、第3話でアンジェリカが郵便を受け取りに行く場面からの数ページは緊迫感があって、特にお気に入りです。

第9位
『14歳の恋 1』(水谷フーカ/白泉社)
大人っぽいルックスから、同級生たちの憧れの対象になっている和樹と彼方。教室ではそんな周囲のイメージに合わせて“大人な優等生”を演じていますが、本当は子供っぽい一面もある普通の14歳。そんな二人が、お互いの前でだけ見せる本当の姿が愛らしい作品です。小学生の頃から仲良しだった二人が彼氏彼女となり、自分や相手の感情の変化に戸惑う様子には、読んでいて赤面しそうになりました。
この作品に限らず、水谷フーカさんの漫画はどれもお薦め。『14歳の恋』の1巻が気に入って、2巻が待ちきれない人は、年の差恋愛ものの『GAME OVER』をぜひ。

第8位
『豚は飛んでもただの豚?』(涼木行/MF文庫J)
第7回 MF文庫J ライトノベル新人賞の最優秀賞受賞作。
元不良で今はボクシングでプロを目指している高校生・真宮逢人が、藤室綾、瑞姫、雲雀の美少女三姉妹と出会い、初めての恋に戸惑いながら……という青春ラブストーリー。
いかにも最近のラノベらしいタイトルですが、内容はラノベ成分薄め。奇抜な設定やネタ系の会話も少なく、非常に落ち着いた作品なので、小説は好きだけどあまりラノベは読まないという人も抵抗無く楽しめるはず。
男勝りのポニーテール少女・綾が、逢人との出会いで“女の子”としてどう変わっていくのか? あるいは変わらないままなのか? 2巻以降に期待。

第7位
『ストライク・ザ・ブラッド 1 聖者の右腕』(三雲岳斗/電撃文庫)
アニメ化もされた『アスラクライン』の著者による新シリーズ。非常に奇抜な設定が多い最近のラノベの中では、主人公の高校生・暁古城が“伝説の中にしか存在しないはずの世界最強の吸血鬼・第四真祖”という設定は、少々地味な部類かも。でも、設定にも文章にも強烈なクセがない分、人に薦めやすい王道の学園ファンタジーです。
ヒロインたちの中では、第四真祖の監視役として派遣された“剣巫(武術と魔術の達人)”姫柊雪菜がイチオシ。年下、丁寧口調のクーデレちゃんに「先輩!」と叱られたい人は、必読の書でしょう。
マニャ子さんのイラストも非常に魅力的で、僕は、口絵のギターケースを担いだ雪菜に惹かれ、購入を決めました。表情とポーズが素晴らしく可愛いのですよ。

第6位
『鉄楽レトラ 1』(佐原ミズ/ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル)
得意だったバスケで同級生たちに追い抜かれた腹いせに、悪口を学校の裏サイトへ書き込む。試合出場を賭けた1対1の対決では、反則行為で相手を入院させる。そんな、主人公らしくない過去を持つ少年・鉄宇。残りの中学時代を登校拒否&保健室登校で過ごした鉄宇は、人に関わらず何もしないで生きていこうと決意し、自宅から2時間離れた高校に入学。しかし、通学中、見知らぬお婆さんと出会ったことをきっかけに、もう一度何かを始めようと、少しだけ前を向いて動き出します。
鉄宇が見つけた新しい夢の内容は、読んでのお楽しみということで伏せますが、高校一年の男子とはかなりミスマッチなもの。今後の展開がいろいろな意味で予想できず、楽しみです。
第1巻での個人的クライマックスは、第3話の終盤、鉄宇がしばらく離れて暮らしていた妹への思いを語るモノローグ。その気持ち、分かるな〜。僕にリアル妹はいませんが。

第5位
『彼女がフラグをおられたら 俺、この転校が終わったら、あの娘と結婚するんだ』(竹井10日/講談社ラノベ文庫)
12月2日に創刊した新レーベル「講談社ラノベ文庫」の創刊ラインナップの一冊。
主人公の旗立颯太は、人生の分岐を左右する「フラグ」を見ることができ、フラグの折り方も“何となく分かる”という謎の能力を持った高校生。ある理由から、出会う人々に立つ友情フラグや恋愛フラグを次々と折り、周囲から距離を取っていた颯太ですが、転校早々、5人の美少女たちと同居生活を始めることに。
フラグを「見て」「折る」という設定だけでなく、小気味良いテンポの会話も魅力。折られてもすぐに復活する友情フラグを持つ天然な同級生や、颯太のフラグ折りも神速で回避する姉弟愛フラグを持った年上幼なじみなど、作品独自の設定を生かしたヒロインの個性の描き方も巧みです。
ただ、地の文に三人称と一人称が混在するなど個性的な文章は、作品の魅力の一つである一方、戸惑う人も少なくないかも。気になる人は公式サイトでの試し読みをお薦めします。無料で読める最初の10数ページを面白いと感じた人なら、最終ページまで楽しめるはず。

第4位
『カナクのキセキ 1』(上総朋大/富士見ファンタジア文庫)
第22回ファンタジア大賞で金賞を受賞した、異世界ファンタジー。
魔法学校を卒業した少年カナクは、伝説の魔女マールが大陸の各地に残した石碑を巡る旅へ出ることに。ところが、学校一の美少女&魔法の天才であるユーリエが、石碑巡りの旅に同行すると言いはじめ……。
実は両思いの少年少女が、その思いを相手に告げないまま、2人だけで大陸を旅するというシチュエーションが萌えるラブストーリー。思いがけない仕掛けや展開もあり、僕は深夜に読了後、しばし呆然としました。「細かい内容は話せないから、とりあえず読んでみてよ」と言いたくなるタイプの作品です。
現在3巻まで刊行されていますが、くれぐれも1巻を読む前に2、3巻の裏表紙のあらすじを見ないように。サラッとネタバレしてますよ。

第3位
『ひまわりさん 1』(菅野マナミ/MFコミックスアライブシリーズ)
主人公は、古くて小さな「ひまわり書房」の店長、ひまわりさん。クールで愛想がないにもかかわらず、不思議な魅力で街の人々に慕われています。この作品のもう一人の主人公である女子高生のまつりも、ひまわりさんの熱狂的ファン。勉強が苦手で本を読むと眠くなるという少々残念な子ですが、毎日「ひまわり書房」へ通っています。
まつりをはじめ、「ひまわり書房」を訪れるさまざまな人々との交流を通じて、知的な眼鏡美女という外見の奥に隠されたひまわりさんの様々な一面が、徐々に見え隠れ。読み進めていくと、まつりたちと同じように、ひまわりさんのことが大好きになっていくでしょう。

第2位
『ひなたフェードイン! 1』(水谷ゆたか/芳文社)
大学入学から約半年、一念発起して結婚式場でのアルバイトを始めた少し気弱な女子大生ひなたが主人公の“萌え4コマ漫画”。新しいことを始めるたびにドキドキしたり、バイト先の上司のさりげない優しさにときめいたりしながら、少しずつ自分の世界を広げていくひなた。その様子を見ていると、父母や兄姉になった感覚で応援したくなります。
アナログならではのタッチを生かした絵は、少しラフにも見える線で描かれていながら、柔らかく温かな印象で非常に魅力的。平凡な女子大生の等身大の日常を、ゆったりまったりと描いていく作風にもマッチしています。特に巻頭のカラー口絵に描かれたひなたの笑顔は必見ですよ。
2巻の発売が非常に楽しみなのですが、現在「まんがタイムファミリー」での連載は休載中。早期の再開を願ってます!

第1位
『四月は君の嘘 1』(新川直司/講談社コミックス月刊マガジン)
サッカー漫画の傑作『さよならフットボール』の著者による新作ということで、連載開始が発表された時から、2011年のNo.1候補と期待していた作品。その期待に余裕で応えてくれました。しかも、クラシック音楽というまったく予想もしていなかった題材で。
幼少期から天才少年ピアニストとして名を馳せながら、3年前の母の死をきっかけにピアノが弾けなくなった中学生・有馬公生。型破りな美少女ヴァイオリニスト宮園かをりとの出会いが、モノトーンのように暗かった公生の世界を輝かせはじめます。
クラシックのセオリーを無視し“作曲家にケンカを売っているよう”な音楽を奏でる、かをり。その演奏シーンは、『さよならフットボール』での試合シーンのような躍動感と疾走感に溢れ、聞こえないはずの音が聞こえてきそう。これ、大げさでなく本当に。
著者の描くキャラクターの特徴でもある強烈な目力も健在で、読み手の心を惹きつけます。
『さよならフットボール』は全2巻で綺麗に完結しましたが、この作品は今月中旬に発売される2巻の後も巻数を伸ばしていくはず。
未読の人は、ぜひ一緒にこの作品を追いかけてみませんか?
(丸本大輔)