ある元自民党衆院議員は、今回の敗因に関してこう語った。
 「市長選挙では、既存の組織型選挙の枠を破ることができなかった。これだけの政党や団体が結集すればいくら橋下さんでも、という甘い考えで、負けた場合の想像力にも欠けていた。今回の市長選は、はっきり言って詐欺師対ペテン師の選挙。自民党はそのどちらでもない、まともな独自候補者を立てて信を問うべきだったんです」

 某自民党府連幹部も言う。
 「今回橋下さんが市長になったのは、反平松票の行き場がなかったから、ああなっただけ。決して橋下さん個人を評価してのものだけではないと思います。2人同時に当選したということは、場合によっては共倒れも十分ありうるということ。思い上がっていたら、そのうち絶対に頭を打ちまっせ」

 言い分には同情できる部分が多々あるものの、今の状況では負け惜しみにしか聞こえないのが辛いところ。なんといっても、W選挙で最も大きな影響を及ぼしたのは、投票率を10%も積み上げた圧倒的な無党派層の存在だ。
 「無党派層は何かが壊れるのを見たかった。とにかく変化が起こることを期待していたのです。極めて無責任な考えですが、今まで我々が有権者を甘く見ていたツケがまわってきたと考えるしかないですね」(前出・元自民党衆院議員)

 W選挙を圧勝した橋下新市長は、これからいよいよ「大阪都構想」の旗を掲げ、大阪市役所に乗り込むことになる。春の統一地方選挙において、維新の会は大阪市議会の最大会派に躍進した。しかし、過半数を制するには至らず、議会運営の主導権は今も握れずじまいだ。それだけに、今後の市政運営には様々な障害が立ちはだかることが予想される。

 その抵抗勢力に対峙する橋下氏の最大の味方は、今回の選挙で示された分厚い民意。橋下新市長は当選直後の会見で、「市役所の体質は変えなければならない。当然、職員の意識改革は必要になってくる」と語り、「今回の選挙は市役所と真っ向から対立し、有権者が我々の主張を選んだ。民意を無視する職員には市役所から去ってもらう」と、強烈なジャブを放ち、絶対多数の民意を背景に真正面から宣戦布告。対し、いきなり真正面からケンカを売られた側の市役所側の受け止め方は、
 「話し合いというものが成立せず、毒を吐いて回るだけの人が乗り込んでくるんですから迷惑な話です。しかし、まずはお手並み拝見といったところです」(労働組合関係者)
 と、戦々恐々と思いきや、今のところ受けて立つ構え十分だ。

 さて、橋下市長が実現した今、市役所の中で職員同士が眉をひそめ囁いていることがある。それは選挙公示直前、橋下氏が当選することを前提に維新の会の市議会議員に指示して作らせたといわれる「反橋下職員のブラックリスト」の存在だ。これが事実なら、当選会見での“追放宣言”、そして平松派の残党狩りが、いよいよ現実味を帯びてくる。これについて前出の組合幹部は、
 「指示はあったということですが、具体的なリストが作られたという話は今のところ聞いていません。職員の間では噂にはなっていますが、動揺するには至っていません。(リストを)作るとしたらこれからでしょうが、もしリストに基づく処分が行われるようなら、断固、戦うだけです」

 一方、維新の会の関係者が言う。
 「指示の有る無しは別にして、今のところリストは作られてないと思います。それに、我々が目指す市政改革は、そんな強権的なものではありません。区役所改革の一環として各区役所に目安箱のようなものを作り、直接市長に届くようなオープンな制度も考えているんですよ。マスコミはどうして市長を独裁のイメージで語ろうとするんですかね」