今、求められているリーダーの条件とは?

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 8月30日、衆参両院本会議で新首相に野田佳彦氏が選出され、第95代内閣総理大臣に就任しました。震災からの復興や原発問題だけでなく、超円高や外交、小沢一郎氏の処遇など、前政権から引き継いだ問題は積み重なっており、日本のリーダーとしてどのように対処していくのか、その手腕が問われています。

 政治においてもビジネスにおいても、危機的状況のときにはリーダーの強烈なリーダーシップが求められるもの。では、良いリーダーとはどのような人のことをいうのでしょうか。
 アメリカのリーダーシップ研究者であるジェームズ・M・クーゼス氏とバリー・Z・ポズナー氏は著書『リーダーシップの真実―どんな時代でも人々がリーダーに求めていること』(渡辺博/訳、生産性出版/刊)の中で、リーダーの様々な条件をあげており、その中の一つに「将来に目を向ける」というものがあります。

 リーダーは夢を真剣にとらえ、実現させるために行動します。そして、チームメンバーたちに「こうなるんだ」というビジョンを描き、見せるのです。つまり、リーダーは将来の擁護者であり、魅力的な未来に向けて指揮を執らなければいけません。
 また、2人の著者が「称賛されるリーダーの特性」について人々にアンケート調査を行ったところ、最も回答数が多かったのが「誠実である」(85%)という項目で、続いて「先が見える」(70%)という声があがりました。チームメンバーは、リーダーの希望や夢、ビジョンを、そして、自分たちをどこへ連れていこうとしているのかを知りたがっているのです。

 また、この将来のビジョンは、すぐ先の未来ではありません。特に責任のある役職についているリーダーは、自分の「遺産」を見据えてビジョンを示すことが重要です。今自分がやっていることが、自分がいなくなったあとにも組織にどう貢献できるのかを考えるのです。

 例えば、1979年に起きた自由民主党内で起きた派閥抗争「四十日抗争」で当時、衆議院議員だった浜田幸一はこう言いました。
 「いいか、断っとくけどなー。かわいい子供達の時代のために自民党があるってことを忘れるな!お前らのためにだけ自民党があるんじゃないぞ!」
 自分の子どもたちの時代をよくするために今を変えていく。これは日本のリーダーたる政治家たちにとって、重要なことではでしょうか。

 著者たちは将来について想像する時間をもっと持ち、将来を描く能力を養うことが大切だといいます。遠い彼方を見通し、そこに何があるのかを想像するには、時間が必要なのです。

 本書は基本的にビジネスリーダーに向けて書かれていますが、そのリーダーの特性や条件となる部分はどのような組織でも当てはまるはずです。
 将来の長期的なビジョンを具体的に示し、それに向けて進んでいく。1年に1度リーダーが変わるこの日本の状況では難しいのかも知れませんが、今ある問題を対処しながら、腰を据えてしっかりと議論し、その上で国家のグランドデザインを示すことが求められているのではないでしょうか。
(新刊JP編集部/金井元貴)



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