来年放送されるNHK大河ドラマ「江〜姫たちの戦国〜」。
 主人公である江(ごう)役を演じる上野樹里さんとともに注目されているのが、その夫であり江戸幕府第二代将軍・徳川秀忠役を演じる向井理さんである。
 そんな向井さんが役を演じる徳川秀忠とはどんな人物なのだろうか。

 まず、多くの人は秀忠のことを「地味」「凡庸な息子」というイメージが浮かぶだろう。江戸幕府の初代将軍・徳川家康の息子であり、参勤交代や鎖国など江戸時代の基盤を整えた第三代将軍・徳川家光の父であり、そんな父や子に比べれば確かに地味だ。

 また、秀忠の愚かさを象徴するエピソードとしてあげられるのが1600年の関ヶ原の戦いの遅参である。中山道隊3万8000人の総大将であった秀忠は、信濃国上田城に籠城する真田昌幸・信繁(幸村)親子を攻めあぐね、結果的に関ヶ原の戦いに間に合わなかったのだ。戦国武将としてはあるまじき失敗である。

 しかし、実際のところはどうなのだろうか。インターネット掲示板「2ちゃんねる」の戦国時代板では秀忠に対し、こんな意見がのぼっている

 ・徳川将軍の業績を評価すれば五指に必ず入る
 ・政治では大変優秀
 ・幕府をつぶさなかった、或いは衰退させなかったってだけでたいしたもんだ。
 ・天皇家の権威を完全に失墜されたのはある意味恐ろしい


 そう、秀忠の評価すべきところはその政治手腕なのだ。
 家康が1616年に死去してからの16年間、松平忠直や福島正則の改易に代表される大名の統制や、天皇家との関係強化、年寄(後の老中)や老中(後の若年寄)などの機関の設置と、関ヶ原の戦いの戦後処理をほとんど終わらせ、幕府の体制を強化した。

 よく偉大な経営者の二代目は凡庸であり業績が落ちると言われるが、こう見ると秀忠は江戸幕府存続の基礎を固めたという意味では、優秀な政治家だったといえる。秀忠の治世下も実に動いているのだ。

 政治家としての徳川秀忠の実像については、徳間書店から文庫として出版されている歴史小説徳川秀忠(上/下)』(戸部新十郎/著)が詳しい。また、歴史学者の小和田哲男氏による徳川秀忠―「凡庸な二代目」の功績』(PHP研究所/刊)は、通俗のイメージに対し、「守成に対する評価の欠如がある」として、秀忠の功績を振り返っている。

 大河ドラマで秀忠がどのように描かれるのか。願わくば秀忠が凡庸な人物ではなく、鋭い政治家の側面を持つ人間として描かれて欲しいと、筆者は思う。
(新刊JP編集部/金井元貴)


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