放送席でヤクルトvs楽天を解説中の高木豊氏

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野球を生で観戦する際の見どころというのは、なにもグランド上で繰り広げられる試合だけではない。球場内を見渡せば、いつもなにか違った発見があるもので、それもまた野球を観る楽しみのひとつだ。
そこで小欄においては、筆者が観戦経験を通じて気づいた、”自分なりの球場の楽しみ方”というものをお伝えしようと思う。

今回ご紹介したいのは、ヒーローインタビューのフレーズでもお馴染みの「放送席」である。
もしあなたがネット裏で観戦する機会に恵まれたら、ぜひ一度後ろを振り返ってみて欲しい。あるいは内野スタンドで観戦する際には、斜め45度横に顔を向けてみて欲しい。
そこにはかつてテレビのブラウン管を通してわれわれを野球の素晴らしさに気づかせてくれた、往年のスター選手たちがいる。あるいは鬢に白いものが混じり、顔の皺も増え、外見はめっきり老け込んでいるかもしれないが、彼らは現役時代と変わらぬ情熱的な眼差しで試合を見つめているのである。

もちろんそこではテレビやラジオ中継の解説という「仕事中」なわけであるから、我々がどんなに興奮しても決して話しかけたり握手を求めたりしてはいけない。チャンスは試合後である。試合終了後しばらくして、放送が終了したのを見計らって忍び足で接近する。タイミングがあえば、差し伸ばした手をそっと握り返してくれることもあるのだ。

ちなみに球場の構造によって放送席を覗ける球場とそうでない球場があり、例えば横浜スタジアムの放送席は客席下の完全に隔離された部屋になっているので、中の様子は窺い知るべくもない。東京ドームは放送席の一帯だけ独立した区画になっており、遠くから眺めることは可能だが近づくことはできない。傍まで接近して感動を味わうことが出来るのは、限られたいくつかの球場だけである。

個人的な話をさせていただけば「プロ野球ニュース」の出演でお馴染み、かの平松政次氏に握手していただいた思い出は忘れられない。4年前の5月、神宮球場でのデーゲーム終了後だった。なんといってもあの長嶋茂雄を最も苦しめたのが大洋・平松投手のカミソリシュート。そのカミソリシュートを投げた右手で、筆者の右手を握り返してくれたのである。
ちなみに同じシュート投手として名を馳せた西本聖氏にも握手を求めたことがあるが、このときはやや鬱陶しげに断られてしまった。重要なのは邪魔にならないタイミングと、なにより本人の御機嫌なのであろう。

繰り返しになるが、決して邪魔にならない範囲でのことである。ぜひ、次回の野球観戦の折には、一度観客席から後ろを振り返ってみてほしい。

(写真:放送席でヤクルトvs楽天を解説中の高木豊氏)

※移動日(試合のない日)更新

■ 筆者紹介
松元 たけし
野球は観るのもプレイするのも大好き。そして飲酒が生きがいの20代後半。
好きな球団はV9巨人と広岡監督時代の西武、そして野村 監督時代のヤクルト。
それでもやっぱりW杯期間中はサッカーを観ます。

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