今回の【ドラマの女王】は、地味ながら高視聴率街道をぶっ走る、大人による大人のための検視官ドラマ『臨場』(テレビ朝日系)。映画『踊る大捜査線』の「事件は会議室で起きてるんじゃない。」とほぼ同じ意味のセリフ「俺達は、お前ら机に向かってるオッサンの為に検視してるんじゃねえ!!」と、時代劇みたいなタンカを切る主演の内野聖陽。いまいち顔が地味で華が無いと思ったら、傍らにちゃんと分かりあいながらも拮抗するライバルのエリート警視役で高嶋政伸を配し、脇もコワモテでがっちり固めている。ヌカリはないわね。


“臨場”の意味は、その場所にのぞむこと。実際その場に身を置いているかのような感じを「臨場感(りんじょうかん)」という。事件が起きて真っ先に現場に駆けつけるのは、主人公・倉石義男(内野聖陽)のような検視官たち。事件を科学的、心理的に解明していく犯罪プロファイリング・ドラマが世界的に流行って、最近注目の検視官だが、要は事件解決に結びつきそうな死体の「細かいイロイロ」を調べる係。警察内では職人的技巧のみが歓迎されて、事件に首をつっこめば上から“やいのやいの”言われる。

“冤罪”をも招きかねないテキトーな上層部の判断に、我慢できなくなった倉石たちは、毎回事件解決のために独自の捜査に突っ走る。野菜づくりが趣味の倉石は、やっぱり独身で仕事帰りに『湯けむりスナイパー』のマドンナ伊藤裕子のバーに通う。あれ?はぐれ刑事?。その部下の検視補助官・小坂留美に松下由樹。しっかりと落ち着いていてる。『アイシテル〜海容〜』の田中美佐子といい、なにかあったらこんな刑事さん(調査員さん)にお世話になりたい。そしてウブな駆け出しの検視官・一ノ瀬和之に渡辺大。この人、渡辺謙の息子。って事はモデルの杏のお兄さん?南果歩の義理の息子?ああ、ややこしい。

頭が固くて、層の厚い”国家権力”の象徴みたいに描かれる、警察上層部たちの俳優が皆シブイ。その頂点の刑事部長・小松に伊武雅刀のはまり過ぎ。コワモテ過ぎて役所公司と明暗を分けた演技派俳優・隆大介が憎たらしい刑事役を好演している。そんな人たちとの間に挟まれているプライドの高い刑事部捜査一課管理官の立原を演じる、ヤマダ電機・高嶋政伸。安定した演技でドラマを盛り上げ存在感が高い。自らの出世が約束された警察幹部のやり方に疑問を抱きながら、自由すぎる倉石たちを許す訳にいかない立原は、過去の事件で倉石に借りがあるようだ。

ムダな人物がたくさん出てくる他局の『BOSS』と違い、適材適所に俳優が配置されスッキリ。だのに事件の真相やストーリー展開に無理が無く、キャストたちに詳細かつ徹底して“検視官らしさ”を意識させる。
第5話「Mの殺人」のラスト、死亡したかつてのアイドルが、疎遠になっていた母と仲直りする為に帰郷しようとしていた事、花屋でカーネーションを見つめていた事などを、死体の様子からが解き明かし、留美(松下)が母に語るシーン。もう、言う事ないっす。横山秀夫の優れた作品を上手に脚色し、上手い俳優たちが淡々とこなす。お見事!

まさにこれぞ、職人ワザの終結みたいな『臨場』。ひとつひとつの事件を丁寧に解決していく検視官たちの仕事ぶりは、一話一話丁寧にドラマをつくる仕事に似ているのではないか。
(編集部:クリスタルたまき)

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