「本当にお前さんたちはね、強い侍になった」。原辰徳WBC日本代表監督の発声で始まったシャンパンファイトで、苦しい戦いを乗り越えた侍ジャパンのメンバー達は、羽目を外して大はしゃぎ。日本野球界にとっても歴史的一夜となった宴では、いつしか選手達によるチームメイト一人一人の胴上げが行われていた。

だが、次々と選手の名がコールされる中、聞きなれない名前が選手達の口から連呼された。「ヨシオ、ヨシオ」と、“ヨシオ”の大合唱。一体、この“ヨシオ”とは誰だったのだろうか?

その男は、侍ジャパンのブルペン捕手・小山良男だ。現在は中日ドラゴンズのブルペン捕手を務める小山は、2004年にドラフト8位で中日に入団するも、目立った活躍がないまま、2008年オフに戦力外通告を受け、現役を引退。現職についた。

しかし、この小山――。実は、98年に横浜高校のキャプテンとして、また、松坂大輔の捕手として甲子園で春夏連覇。松坂が甲子園で記録したノーヒットノーラン達成時も、そのリードをしたのは小山であった。

今となっては、MVPを獲得した世界一の投手とブルペン捕手という二人だが、その絆が切れることはなかった。心の正捕手=小山に対し、松坂は、テレビ朝日系列『報道ステーション』(2日放送)において、「日本代表でバッテリーを組めたら最高だったろうなと思いながら、試合前のブルペンで投げてましたね」と話し、胸中を明かす。

また、侍ジャパンにおいて、投手陣から高い信頼を得ていた小山が胴上げをされたのは、自然な流れだったという松坂は、「あれ(小山の胴上げは)はなんでですかね(笑)。やっぱり、ピッチャーにそういう気持ちがあったからじゃないですか。ここまで受けてきて貰った感謝の気持ちだと思います」と語り、かつての相方が侍ジャパンのWBC連覇に貢献した実績を誇った。