7日のチャンピオンズリーグ準々決勝ファーストレグでビジャレアルがアーセナルと対戦する。3年前のCL準決勝の再現となるカードで、敗れたビジャレアルにとっては雪辱戦となる。さらにビジャレアルの中には、この一戦に特別な思いを抱く選手がいる。アーセナルで6シーズンを過ごし、ビジャレアルに移ったフランス人MF、ロベール・ピレス(35)だ。

 2006年のCLでビジャレアルを下して決勝進出を果たしたアーセナルは、優勝をかけてパルセロナと対戦。そのシーズン、アーセナルで出番が減っていたピレスは先発として起用された。決勝戦が開催されたのは、もはやフランス代表としてピッチに立てなくなったスタッド・ド・フランス。家族が見守る中、最高の晴れ舞台となった。

 しかし前半18分、ピレスに悪夢が訪れる。GKレーマンの退場で“身代わり”として交代させられた。アーセナルのヴェンゲル監督は試合後「彼にはすまなく思っている。攻撃の選手をひとり下げなければならず、ほかに選択がなかった」と弁明したが、ピレスはこの屈辱の3日後、ビジャレアルへの移籍を決めた。

 ピレスは6日付のオジュルデュイ紙に「この出来事はいまも忘れていないし、一生忘れないだろう」と語っているが、ヴェンゲル監督とは良好な師弟関係を保ったままだ。頻繁に電話をし合っている仲で、この試合の前にも連絡をとり合ったという。その恩師に対して、「望みはただひとつ、ヴェンゲルをやっつけること」(5日放映のカナルプリュス局インタビュー)と語ったピレス。ニヤリと冗談めかしたが、本心に違いない。

 ピレスの思いはもうひとつある。それは退団後も熱心に応援してくれたアーセナルのサポーターに対してだ。3年前のCL決勝直後にビジャレアル入りを決めたピレスには、サポーターに別れを告げる時間がなかった。「だからこの2試合は、僕にとってアーセナルのサポーターにさよならを言う機会になる。引退前にアーセナルと対戦してこれを実現させるというのがずっと僕の目標だった。もし仮にゴールをあげたとしても、サポーターに敬意を払う意味で、喜びを表さないつもりだ」と語る。

 自分でも先発で出られるかどうか確信はもてないというが、さまざまな思いを噛みしめるピレスの姿を見たいと思うファンは少なくないだろう。この試合を「天からの贈り物」というピレスにとってベンチでの観戦はあまりに物足りないに違いない。