リーグ・アン第29節を終えた時点で6位と好調のパリ・サンジェルマン(PSG)。2シーズンつづけて降格寸前(結果は15位、16位)という危機的状況にあったことを考えると、快調といってもいい。

 ただし一時は首位に1ポイント差まで詰め寄ったものの、ここ2試合は首位争いがかかった試合で連敗し、4ポイント差の6位に後退した。優勝を意識したとたんに固さが生じた、というのが一般的な見方だが、どうやらそれだけではないらしいクラブの事情を感じさせる発言が選手から出ている。

 4月1日付のレキップ紙に掲載されたリュドビック・ジュリのラジオでのコメント(RMC局)がそれだ。今シーズン、ASローマからPSGに移籍したジュリは「僕はシャルル(・ビルヌーブ前会長)とバザン氏とともに、何かをつくりあげる目的でやって来た。でもシャルルはもういないし、監督も契約の切れる選手たちも残るかどうかわからない。外国では、誰もが2月には何をすべきかわかっている。でもいまここでは、シーズンの残りやその後について疑問符がついたままだ。僕やクロード(・マケレレ)のような選手は、パリとサインすることで責任を引き受けた。今度はクラブがその責任を示すときだろう。このままつづけていくことは不可能だ」と語った。

 ジュリの発言の背景には、2月にビルヌーブ氏が事実上会長を解任された出来事がある。ジュリやマケレレといった現役引退が近づいている大物選手を招聘し、強豪復活という大きなテーマに臨んだのがビルヌーブ前会長だった。そしてその成果は今季の大躍進に表れた。しかし補強にかける巨額の投資を歓迎しない株主は、ビルヌーブ氏を辞任に追い込み、後任には大株主である米投資会社コロニー・キャピタルの欧州代表を務めるセバスチャン・バザン氏がおさまった。

 バザン氏はビジネスのプロではあるが、テレビ局のスポーツ局長を務めたビルヌーブ氏と違い、サッカーにおいては完全な門外漢。本業のビジネスに忙しいことから、資金面以外の取り仕切りはフィリップ・ボワンドリウー代表取締役に任せているが、これも臨時の人事に過ぎない。

 ジュリは、「1ヶ月後にバザン氏に何がしたいのかを聞きに行く。シーズンが終わってからでは遅い」と危機感を募らせている。一方、マケレレは、現役続行かPSGのフロント入り(スポーツ・ディレクター)か、まだ決めかねている。ル・グエン監督は最近バザン氏と話し合った模様だが、契約延長か否かは明らかにしておらず、マルセイユ入りの噂もある。さらにここへ来て、PSG、フランス代表、リバプール、リヨンなどの監督を歴任し、現在フランス・サッカー連盟のテクニカル・ディレクターを務めるジェラール・ウリエ氏をGMとして招聘するという仰天案も浮上している。